第51集 稲葉剛『住まいと暮らしの「復興」を求めて』発行
国連・憲法問題研究会報告第51集発行
住まいと暮らしの「復興」を求めて
被災地と私たちをつなぐ視点から
稲葉 剛
2012年1月発行
■2万人が犠牲になった3・11東日本大震災。震災・原発事故によって数十万人が避難先での不自由な生活を強いられ、住まい、生活の糧などを失った被災者への生活支援、居住支援は不十分なまま。これらの問題の多くは震災前からの日本の社会保障制度、住宅政策の“貧困”が原因。国が上から「自助努力」を強制するあり様では“被災者主権”の「復興」は遠のくばかりだ。 住宅・居住支援を求めて活動する稲葉剛さん(自立生活サポートセンター・もやい代表理事)が講演。B5版48頁
◎目 次
災害とホームレス状態/被災地の仮設からSOS/貧困の拡大/複線の支援が必要/県外避難者への支援/法制度の問題点/私有財産自己責任の原則/「住まいは人権」の実現へ/生存権概念の再検討へ
○質疑応答
○資料
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※実際の表紙の色はオレンジ色です。
≪報告≫講演会「放射能「安心」報道を読み解く」
≪報告≫講演会「放射能「安心」報道を読み解く」
11月1日、講演会「放射能「安心」報道を読み解く」を行いました。
講師は、『3.11後の放射能安全報道を読み解く―社会情報リテラシー実践講座』(現代企画室)著者の影浦峡さん(東京大学大学院教授)。
講演で影浦さんは、最初に安全と安心の違いについて話し、安全は安心の必要条件。安全についての社会的合意がないと安心できないと指摘。
「直ちに健康に影響がない」と言われたように、低線量被曝の影響は見た目で直ぐにはわからないのがあって、被曝をさせた側が安心だと押し付ける。
事故前、推進派は「原発は安全」と言っていたが、事故後は低線量被曝に論点を移して、多少の被曝をしても大丈夫だ、安心だ。そして、だから、輸出をしよう、再稼働しよう、やらせしようとなっている。
東大の哲学の一ノ瀬正樹は「被害が顕在化していないのに、なぜ人々は不安を抱くのか」と問いを出している(今の新自由主義の経営学では一番のリスクを考慮して経営する。そもそもマネジメントとしても失格だ)。
今の放射能についての議論は、私が司会に水をかけて、服がぬれたままで、風邪をひくことはないから大丈夫、どれくらいで風邪をひくかという議論を始めたようなもの。
あるいはウイスキーを毎日飲むと健康に良いという学説を信じた校長が毎日児童にウイスキーを飲ませるようにしたようなものだ。
ここで必要なのは、学説が正しいかどうかではなく、まず校長の行為が不当不法であるという指摘。違法行為をやめさせた上で飲酒規制が正しいかどうかの学術論争はすべき。
今回の問題では、そもそも汚染物質(放射能)を承諾なしに庭先に放り込まれたことが不法。
何ミリシーベルトなら健康に影響があるかどうかで議論になるのがおかしい。
法令で認められる一般の被曝限度は年間1ミリシーベルト。2万人に1人がガン死する。
1ミリシーベルトというのは安全ではないが我慢しようと決めた基準。
「そもそも日本人の半分はガン死する」という中川恵一(東大)は福島原発からの放射能の放出は収まったと発言している。だが、今でも毎時10億ベクレルが放出されている。
100ミリシーベルト以下の被曝の影響は解ってない。解らないから、自分が解っていることだけが科学的知見だと低線量被爆の影響がないかのように科学者が言うことは科学的知見ではなく、科学の無能を示している。
東電の放射能汚染をCTスキャンと比較する報道があるが、CTスキャンは被曝によるリスクを医学的メリットが上回るとされているから、当事者が承諾し許容されているだけ。東電の放射能汚染には何のメリットもない。
それなのに、放射能汚染を心配する人が「ヒステリー」などとされる。
中川恵一は、「ガンにかかって人生が豊かになったという患者が多い。」「私たち日本人がこの試練をプラスに変えていくことを望む」などと平気で言っている。
ここでの「私たち」には、放射能の影響を受けやすい子ども、低線量被曝をした人、産物が汚染された生産者や小売流通業者が入っていない。
これは、そこそこ裕福な人がワーキングプアに対して、“貧しいことは人生を豊かにする” “君たちが貧しさという人生の試練をプラスに変えること望む”などと言うのに似ている
専門家が自分の主張をするためには、現実と乖離した世界を作り出す。現実と乖離して、論理が逆転するということがある。
事故前、原発専門家は「専門家になればなるほど格納容器が壊れるなんて思えない」と言っていた。想定したシナリオに従って起きるなら、事故ではない。
山名元・京大教授は、500年に1回過酷事故に起きるという実績に基づく事故確率に対して、全国に54基の原発があるから、そうすると10年に1回に福島のような事故が起きることになると反対した。科学よりシナリオが優先している。
100ミリシーベルト基準に反対するとヒステリック、心情的に不安だと言うとパニックと言われる。しかも、心配する人に立証責任が負わされる。
水俣病でも同じことが起きている。
風評被害をめぐっても、行政は安全安全ですと言って、なし崩し的に生産者と消費者の対立・分断が促される。行政は、放射能汚染ではなく、「不安」が一番問題だとなる。
横浜市で放射能暫定基準を超えた牛肉が給食に出されたことについて、林市長は「対策は後手に回っていない、不安、風評被害をかきたてないことが大事だ」と言っている。
対策が後手に回ったことは明らかだし、子どもの健康より、風評被害対策が大事なのか。
「過度の不安が健康を害する」と言う人は、「安全・安心」と言う人と重なっている。
「過度の不安」というのは、当然の不安の原因を解消する代わりに、「安全だ、問題ない」と責任者や周囲が叫んだり、被害が出ていないのに人々はどうして不安を抱くのかとしたり顔で哲学者が言うことが大きい。
私への相談でも、爆発直後は直接の不安だったが、報道の圧力へのストレスなど社会的不安が圧倒的。「過度の不安が健康を害する」ということそれ自体が人々の不安を掻き立てている。
講演の後の質疑応答で最初に質問した人は、この問題でのエリートの話は面白くないが、影浦さんの講演はよかったと絶賛していました。
また、千葉県柏市で首都圏では高い放射線量が測定されている件では
柏キャンパスがある東大の本部が高い放射線量を許容する見解を出した。
影浦さんは、学内にいると、本部と各学部は並列という意識が強いので、東大本部がそういう見解を出しても「本部が変なことを言ってる」という程度の捉え方だが、外から見ると、本部の見解というのは、重く見えてしまう。
東大には2千人教員がいるが、この問題で最初発言したのは4人だけだったとか。
普段進歩的な発言をしている教員も、当初この問題への反応は鈍かったようだ。
他にも、会場から自治体職員の人がこの問題で住民と協力しようとすると上が反対するという話が出ていました。
≪講演会≫放射能「安心」報道を読み解く
講演会
放射能「安心」報道を読み解く
講師
影浦 峡さん
(東京大学大学院教授、『3.11後の放射能安全報道を読み解く―社会情報リテラシー実践講座』著者)
日時
11月1日(火)午後6時半~9時
会場
文京シビックセンター地下1階学習室
(後楽園駅・春日駅・水道橋駅)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html
http://www.b-civichall.com/access/main.html
参加費 800円
放射能「安心」報道を読み解く
■3・11原発震災から半年以上。福島第一原発からはいまだ莫大な放射性物質の放出が続いています。高濃度放射能によって、深刻な土壌、海洋、農水産物の汚染が続き、被害が深刻化しています。
3・11の前まで「日本の原発は安全」「地震があっても事故は起きない」「事故が起きても放射能は漏れない」という報道・言説が幅をきかせていました。そして、3・11の直後、放射能汚染に関する情報隠しのために多くの住民が被曝させられ、放射能対策は後手に回り続けています。原発安全神話が、事故後も「放射能は安全」という報道・言説の横行につながりました。
こうして、事故が収束してないにも関わらず、「除染」「風評被害」対策をとれば事態は収拾され放射能も“安心”であるかのような主張がいまだに言われています。
原発安全神話の横行が福島原発震災につながった教訓を踏まえるならば、市民は危険な放射能「安心」報道を読み解く力を身につけていかなければなりません。『3.11後の放射能安全報道を読み解く―社会情報リテラシー実践講座』の著者である影浦峡さんに講演していただきます。
影浦峡
かげうらきょう。東京大学大学院教授。札幌市出身。東京大学教育学部・マンチェスター大学科学技術研究所卒。専門は言語とメディア。
著書に『3.11後の放射能安全報道を読み解く―社会情報リテラシー実践講座』(現代企画室)、『子どもと話す 言葉ってなに?』(現代企画室)
国連・憲法問題研究会
連絡先 東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210工人社気付
℡03-3264-4195fax03-3239-4409
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