昨日はイム・ジュファン君が、軍隊で訓練中に倒れて入院中という心配なニュースをお知らせしましたが、ジュファン君が一番、最近好演した、リュ・スンボム主演の映画『怪しい顧客たち（수상한 고객들）』（2011、チョ・ジンモ監督）をご紹介します。
少し前に公開が終わったばかりですが、人の幸せについて考えさせられる感動的なコメディでした。
個人的な話をすると、これの前に観た、リュ・スンボム主演映画が、たまたま去年の『不当取引』（2010、リュ・スンボムのお兄さんリュ・スンワン監督）だったため、どうしてもその主人公のキャラとかぶって、けっこうなところまで誤解しながら観てしまいました。すなわち、犯罪映画である『不当取引』のほうでは、実績のために残酷な取引をする、優秀だが非情な検事役だったために、『怪しい顧客たち』でも、完全に主人公は、残酷な取引をものともしない、優秀な生命保険営業マンであると思い込んでいたわけです。
でも、私も途中でその錯覚から脱して、ほっとしたと同時に、リュ・スンボムが本来大得意とする、三流だけど心温かいキャラを久しぶりに見ることができて大満足。実際、ここ数年、『房子伝』（2010）にしても、『赦しはない』（2009）にしてもあまりいい性格の役はなかったですからね。
この映画には、リュ・スンボム扮する保険マンの頭を悩ませる、いわゆる「怪しい顧客」が4人出てきます。何が「怪しい」かというと、私も知りませんでしたが、生命保険というのは2年間保険料を入れ続けると、免責期間が終わったということで、たとえ自殺をしても、それで生命保険料がそのまま支払われるのだそうです。つまり、この4人は、家族のために自殺をする可能性が高い境遇にある顧客たち、というわけです。
イム・ジュファン君はまさにその一人として登場。物語冒頭でこの4人の不幸を暗示する交通事故がプロローグとして描かれますが、ジュファン君扮するホームレス青年ヨンタクの場合は、愛するお姉さんがその事故で旦那さんを失います。チック症という、瞬間的なクセを自らの意志に関係なく繰り返してしまうという神経疾患の持ち主で、しかもホームレスという難しい役を、実に上手にこなしています。
そして、もう一人の嬉しいキャスティングは、日本でも人気の歌手のユンナちゃん。日本ではすでにスクリーンデビュー済みですが、韓国ではこれがデビューとなります。彼女も「怪しい顧客」の一人で、歌手を志望する22歳の女性。廃車になったバスの中に住み、生活苦の中、弟を養いながらオーディションに落ち続ける役です。さすが現実に、歌手になる前に20回もオーディションに落ちた経験あるユンナちゃんが好演しています。(^^;)
この映画、一言でいえば、「年俸10億」、「大韓民国上位0.1％」という社会の最上層を目指していた野心家の主人公が、最下層の庶民の人生に接することで、本人の意思とは関係なく、人生にとってもっと大切なことを学ぶという、その過程を描いた作品。主人公と一緒に私たちもまた、大切な学習をすることになります。
ということで、最後に私の記憶に残った名台詞を一つ――「無我夢中で生きていきな。愛することだけをしても人生は短いんだから（정신 앖이 살아가게. 사랑만해도 인생은 짧아）」。(*´▽｀)
【あらすじ】 一時は‘野球王’になることを夢見た、業界最高の傍若無人‘保険王’ペ・ビョンウ（リュ・スンボム扮）。ある日、顧客の自殺ほう助疑惑で人生最大の危機に瀕した彼は、何年か前の顧客たちとの気になる契約を思い出して、彼らを探しに行く。
憂鬱モードの一人暮らしのキロギアッパ（妻子を海外留学に送って自らは一人暮らしをする父親）オー部長。とげとげしい少女家長（両親不在の中で家庭を営む長女）ソヨン（ユンナ扮）。口を開けば悪口が飛び出すというチック症を抱えたホームレス青年ヨンタク（イム・ジュファン扮）。4人の子持ちの不屈の未亡人ポクスン。
油断をすれば一瞬にして漢江に飛び込む勢いの彼らの命を守るため、ビョンウはありとあらゆる甘言と親切を総動員して孤軍奮闘するが、怪しい顧客たちのための彼のアフターサービスは果たして成功するのだろうか。
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