「禁止された場所に行く準備ができました」
●聖職者さえも地獄に落とされる恐怖
久しぶりに映画紹介ですが、先月観た韓国の本格エクソシズム(悪魔祓い)映画『黒い修道女たち(原題:검은 수녀들)』(クォン・ヒョクチェ監督)ですね。以前ご紹介した『プリースト 悪魔を葬る者(原題:黒い司祭たち 검은 사제들)』(チャン・ジェヒョン監督)の10年越しの続編として、とても懐かしくて紹介しようと思いました!ヾ(≧∇≦)〃♪
2015年の前作はキム・ユンソクさん、カン・ドンウォンさん主演で、パク・ソダムさん演じる女の子に憑りついた悪魔を取り払うために2人の男性司祭が悪魔祓いを行うというものでしたが、今回は性別が反転して、ムン・ウジン君演じる少年に憑りついた悪魔を取り払うために、ソン・ヘギョさん、チョン・ヨビンさん演じる2人の修道女が命を懸けた闘いに臨みます。ソン・ヘギョさんはもちろんかわいらしく美しいですが、その美しさの中に堅い芯のように正義がしっかりと根付いている感じでした。あと、チョン・ヨビンさんは本当に素晴らしい演技力なので私は大ファンです。
映像スケールも大きくなり、やはり10年の進歩を感じさせますが、何より変わったのが、前回はあくまでキリスト教映画として、同じく悪霊払いを行う韓国の民俗信仰「巫教」の「ムーダン(霊能者、巫女)」が、対比的に力のない存在に描かれていたのに、今回はその「ムーダン」のほうが、ローマ教皇庁や正式に任命された韓国教区長などの権威よりも、むしろ頼りになる力強い協力者と描かれていたということ。監督が変わったせいか、あるいは時代が変わったせいか。西洋の形骸化したそれより、一見低俗にも見える韓国の民俗信仰のほうに、実質的な力があるという表現が、今の時代の韓国の自信のようにも感じられました。
それにしても、この映画の結末にも関わる話ですが、何よりもこれらの映画で一番恐ろしいのが、神を信じる聖職者さえも悪魔に憑りつかれれば、そのまま永遠の地獄に連れていかれるという話ですよね。彼らが必死で悪魔祓いをして被害者を助けようとする理由は、憑依された人物がもしも悪魔に憑かれたまま死ぬならば、そのかわいそうな魂が永遠の地獄に引き込まれてしまうからであるわけです。今回も本当にそれが恐ろしかったです。(((°`∇´°;)))
●韓国の文化依存症候群「神病」とは?
ちなみに韓国におけるこれらの作品を理解するためには、それこそ韓国において、「火病(Hwa byung)」と共に韓国特有の「文化依存症候群(Culture-bound syndrome)」とされる「神病」についての基礎知識が必要かと思い、ここからはその韓国特有の文化を少し紹介してみます。いわゆる「シャーマン」という言葉がシベリアのツングース系民族の言語に由来しているとおり、韓国民族がそもそも北方系遊牧民の東夷族の後裔であるということから、それが実際に地域文化病とされているわけです。
「神病」とは、辞書によれば、「巫俗社会でムーダンになる人がかかる病。医学で治らず、ムーダンになって初めて治る。民間では『神病』、学会では『巫病(Schamanen-krankheit)』という」とあります。自分の意思とは関係なく霊的能力が発現して「虚主(雑霊)」によって苦しむようになるというものなわけですが、まさにこの作品で、悪魔に体を乗っ取られる少年も、チョン・ヨビンさん演じる修道女も、そして小さい頃に亡くなったというその修道女の友達なども、その韓国特有の病の患者であるわけです。ソン・ヘギョさん演じる主人公の修道女も、自分で「同じ部類」だといっていたので、やはり似たような病を持っていると考えるべきでしょう。
主な病状としては、霊の影響で食断ちをしたり、人を避けるようになり、不眠・衰弱・幻聴・幻視・忘我・精神錯乱に悩まされるということです。辞書にもあるように、それを治療するためには、昔から、「神オモニ」と呼ばれる、助けてくれる「ムーダン」の指導を受けて修行を行い、「入巫祭(내림굿)」を行うことで、自らに「保護霊」を下ろさなければなりません。これを「成巫」というのですが、もしそうしなければ、近しい子供などにその霊的力が移って同じ病気になるといわれたり、必ずしも職業としての「ムーダン」にならなくてもいいからといわれたりして、その苦しみから解放されるために、「成巫」を決意する人が多いです。
その時、「保護霊」として下りてくるのは、代々その家系を守ってきた霊であることも多く、その影響で、やっぱり最後は「ムーダン」になったり、占い師になったり、スピリチュアルな仕事をするようになる人も多いため、韓国には本当にそういう職業人が多いわけです。この映画の中に登場する「ムーダン」(女性)や「パクス」(男性)も、皆そのようにしてその専門の道を行った人々です。その「保護霊」が代々使ってきた「巫具」などもあって、その霊にいわれた場所を掘ると、地面の下から前の成巫者が使っていた「巫具」が出てきて、その使命を受け継ぐなどということもよく聞きます。
ということで、初めて聞くお話かもしれませんが、私はこれは日本においても沖縄のユタの世界に似ているだろうと思います。まさに韓国において大昔から続く「巫教」文化なのですが、時代を経て高等宗教が広がるにつれて、従来の「巫教」を信じる代わりに、仏教やキリスト教などの高等宗教を信じてそれらの病を克服するという道も生まれました。ただ、そのためにはそれらの宗教の本当に熱心な信者とならなければならず、僧侶や修道士のような聖職者となることも、その病の克服が目的であるということがあります。まさにこの映画の2人の修道女がそのような立場にあるというわけですね!♪ヽ(´▽`)/
【あらすじ】 「ユニア」修道女(ソン・ヘギョ扮)は「ヒジュン」(ムン・ウジン扮)の体に憑りついた悪霊が「12形状」の一つだと確信する。すぐに来ることができないエクソシスト(祓魔司祭)を待っているうちに、彼女が犠牲になることが明らかな状況で、結局、「ユニア」は少年を救うため、「叙勲を受けていない修道女は祓魔できない」というタブーを破ることを決心する。しかし、「ヒジュン」の担当医はただ医学だけを信じる「パウロ」神父(イ・ジヌク扮)。偶然、彼の弟子である「ミカエラ」修道女(チョン・ヨビン扮)の秘密に気づいた「ユニア」は「ヒジュン」を病院から引き出すために助けを要請する。「ミカエラ」は躊躇ない「ユニア」に反発心を感じるが、自らの境遇と似た「ヒジュン」のために力を貸すことにする。ついに2人の修道女は手段と方法を選ばず、ただ少年を生かすための危険な儀式を始めるが…。原則はただ一つ、無条件助ける!
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