若さゆえの過ち | Perfumeとグルメの日記

Perfumeとグルメの日記

Perfumeと食べ歩き(主にラーメン)が好きです。
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ある晴れた冬の昼下がりの電車内。
大きめの車窓からは柔らかな陽射しが入り、程よく人で埋まった車両に座る人々は、眠る者、読書する者、スマホを弄る者など、皆、思い思いの時の過ごし方をしていた。


そこへ、ある駅から中学生くらいと思しき男女の二人組が乗ってきた。
空いてる座席には座らずにドアの近くに位置を取ったその二人は学校であったであろう話をしていた。
その車両で会話をしていたのは彼らだけだったので、思い思いの時を過ごしていた者の耳にもなんとなくその会話は入って来るのだった。


やがて、それまでやや大きな声で話をしていた男の子のほうが少しだけ声のトーンを落として次の話題に移った。
どうやら前の晩に母親と喧嘩をしたらしい。


不思議なもので、それまでさほど気にしていなかった会話も、中身がシリアスになり、しかも聞き取り辛くなると、そちらに集中してしまう。


男の子は、さも気まずそうに向かいの女の子に何かを打ち明けたと、 その瞬間、女の子の大きな非難の声が響いた。


「お母さんに手を出すなんて、サイテー!」


それまで小春日和に緩慢としていた車両の雰囲気は、一瞬のうちに緊張が走り、もう皆の思い思いの時間はどこかに吹き飛び、今度は、皆が思い思いに、この男の子に対して掛けるべき言葉を頭に巡らせていた。



その逡巡を止めるように、女の子の次の非難の矢が車両に響いた。



「自分のやった事がどれだけ酷いことか、分かってる?」

「お母さんを殴るなんて・・・ 」

「それって、近親相姦じゃん!!」



緊張のピークに達しようとしていた車両にあっという間に次の衝動が襲い、ある者は俯き眉を押さえ、ある者は大きく呼吸をし、またある者は、無意味にスマホの画面を直視するのだった。



電車は速度を落とすことなく、次の駅に向かうのだった。