風で木々が揺れ、木漏れ日が下草に乱反射する。曇っていた空はやや晴れ、気温は来た時より上がっていた。

「暑いね」

ガクは肩にかけていた水筒を開け、一口水を流し込む。タクトは手首のあたりで数回額を拭った。

 

「今、何匹か覚えてるか」

タクトが聞く。

「うん、分かるよ。ちゃんとカウンターで数えながら入れてるもん」

そう言ってガクはカウンターの数字をタクトに見せる。

「19匹!へへん、すごいでしょ。兄ちゃんよりサクサク探してるもんね」

「くそっ、オレ18匹だ。負けてるな」

得意げなガクをやや睨みながらタクトは呟く。

「何かコツとかなかったっけ」

「コナラとかクヌギとかの木が好きなんだよね。で、樹液が出てる木を探すといいんだよ。このへん、クヌギの実が落ちてるからさ、たくさんいるはずなんだけど」

ガクはきょろきょろと木の根元付近を見つめた。

 

「このへん、いそうなんだけどなあ。おがくずちょっとだけ落ちてる。樹液も出てるし、絶対カミキリが来たことある木だよ」

ガクがそばの木を指さした。木の幹に、一列になった穴が空き、そこから樹液がしみ出している。タクトが近付きまじまじと探したが、そこにシロスジカミキリの姿は見つからなかった。

「うーん。やっぱりちょっと晴れてきたからかなあ。明るくなると、隠れちゃうもんなんだね」

ガクが木々の梢を見上げる。

「そうだな。10分か20分くらい前には、普通に幹のとこいたもんな。明るくなるとこんなに違うのか」

タクトがぶつぶつ言いながら穴の空いた幹を眺めていると、突然ガクがタクトの袖を強く引いた。

 

「おいおい、何するんだよ」

「見てあれ!カミキリっぽくない?」

言われて見上げると、木の梢の方の枝に何かがくっついているのが確認できた。

「確かに。大きさからしてそれっぽいな。しかもあれ、2匹重なってないか?」

「交尾だ!」

ガクが興奮して嬉しそうに飛び跳ねる。

「兄ちゃん、ちょっと水筒だけ持ってて。ボク登ってみるよ」

「大丈夫か?咬まれたら大変だぞ」

「大丈夫、いけるいける!」

言うなり、ガクは木をするすると登り出す。まるでクライミングウォールのトップ選手のように素早く目的の場所まで辿り着くと、大きな声を上げた。

「やっぱりシロスジカミキリだ!捕まえるね」

ガクは交尾中の2匹をおどかさないよう、慎重に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

昆虫の交尾シーンは、結構探すと見つかるものです。トンボの交尾が一番目立ちますかね。交尾をしながら飛んで産卵するという器用なことをやりますので。シオカラトンボの場合、オスとメスで色が違うので、どちらがメスかも一目瞭然ですよ。水色がオスです。

 

甲虫の場合は、結構がっちり合体していることが多く、交尾しているのを捕まえても簡単には離れないことがあります。申し訳ないので、捕まえてもそっと元に戻しますけどね。

 

 

生々しいのは嫌かもしれないので、可愛いナミテントウの交尾画像を貼っておきます。もともと動画で撮影したのを切り取ってみました。動画で見ると、交尾しながらせわしなく動いているんですよ。もっと落ち着きなさいと思いましたね。

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

毎週木曜日に更新予定です!


続きはこちら

 

はじめから読みたい人はこちら

あらすじ