「いらないなら逃がそうか?」
驚いた顔のまま固まっているヒナタを前に、レイラが言う。
「いえ、いいわ、そのままで。多いぶんには困らないでしょう。何かあった時の予備ってことで」
ヒナタは微笑む。なぜか、少し悔しそうにも見えた。
「20匹ずつありました。あ、最後のカゴだけ21です。全部で101ですね」
紅茶がすっかり冷めた頃、ハルがぽつりと言う。
「OK。しっかり蓋閉めとけよ」
カイトがそっけなく言うと、ハルはわずかに頷く。口の中でわずかに「疲れた」と呟いたのを、タクトは聞き逃さなかった。
「じゃあ、俺達は帰る。お前達もさっさと帰れよ」
カイトは勝利の喜びも見せることなく、淡々と荷物をまとめ始めた。
紅茶を飲み終えたヒナタは、部屋の隅でスマートフォンを操作していた。画面にはリオールの公式ホームページ。「購入しました」の文字が浮かんだのを見つめ、満足気に微笑む。
「ほらお前も荷物を持て」
カイトがハルの脇腹を肘でつつき、ハルはしぶしぶ渡された荷物の1つを受け取った。
「アヤコ、お前は直帰でいい。送っていく。あと明日から訓練開始だ。指導は俺が担当する。家に帰ったらさっさと寝ろ」
「え、ほんまに?はやない?もう少し先や聞いてたんけど」
文子は困惑した表情を浮かべる。早く帰りたいのだろう、話しながらも手早く自分の荷物をまとめて肩にかけ、カイトとハルの後について行く。
「またな」
カイトは事務所から出る直前振り返り、ハルと文子もそれにならって軽く会釈をした。ドアが閉まり、足音がだんだん遠ざかっていく。
「あーあ、結局2万ウィングもらえないんだね。残念。ま、楽しかったからいいか」
ガクが手を頭の後ろで組み、のんきに呟く。
「カイ兄、お金何に使うのかなあ」
「さあ、キムチか何かじゃないかしら。あの人物欲があまりないらしいし」
ヒナタが答える。
「カイ兄って面白いよね。苦いのは嫌いなのに、辛いの大好きって」
ガクが嬉しそうに言うのを聞き、ヒナタもふふっと笑った。
「ヒナタさんは、負けたのに何だか楽しそうですね」
タクトが疑念の目を向けてくるのをヒナタはさらりとかわす。
「さ、私達も急いで帰るわよ。シロスジカミキリを会社に届けなくちゃ。直帰は無理ね残念ながら」
一行は外に出る。現場の作業員が遠くから手を振っていた。―ここにいる人は悪くないもんな―タクトはそう思って手を振り返す。
低い空で、白い三日月が少し光り始めていた。
〈おまけ〉
どうやらヒナタは無事に新しいアイシャドウをゲットしたようです。お金が入ってくるのはもう少し先でしょうが、待ちきれなかったようですね。
私もスマートフォンで買い物をすることはありますが、スマホで買う場合はほとんどメルカリ経由。こちらのアイシャドウもメルカリで買いました。中古品です。
色は濃いブラウンで気に入っているのですが、チップはすぐにボロボロになってしまい捨てました。おまけに、1回落として割れましたからね。そう見えないって?アイシャドウは、上から思い切り圧力かけると固まることがあるんですよ。
さて、「シロスジカミキリ収集編」はこれにて終了。次回から新編が始まります。
「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。
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あらすじ
