部屋に戻ると、セルウィンが老人の前に立ち睨みをきかせていた。クリスは他の場所に何かないか、最終確認をしている。文子は疲れた様子で、部屋の隅に座り込んでいた。

「終わったか」

セルウィンの言葉に、レイラは頷く。

「完全に燃やしておいた。カイコはほとんど動かないからな。難しくなかったよ」

 

「くそっ!」

老人が低く呻き、床を踏み鳴らした。セルウィンが壁に手をつき動きを塞ぐ。

「諦めが悪いであるぞ、御仁。どの道隠しおおせるものではなかろう。いかにも駆除はまぬかれぬ運命である」

「黙れ優男め。我々がどれほどの苦労と費用をかけて、あの子らを作り出したのか、想像もつくまい。それを、こうもたやすく踏みにじりおって」

 

その時、少し急いだ足音が聞こえてきた。すぐに音が大きくなる。

「あ!ここにいたんですか。遅くなりました。…これは?」

ひと仕事終えて戻って来たナオミが、ひょいと顔を覗かせた。状況を理解できない様子である。

「ああ、大丈夫だよ。ちょっと取り込んでいたけどもう終わったから。今からそっちに行く」

クリスが微笑んで、隣の部屋へと向かった。振り返り目配せするので、他の面々も黙って前にいた部屋に戻る。

 

女性陣を先に行かせてから、ガクとタクトは隣の部屋に足を踏み入れる。セルウィンはその後に続き、背後から老人がよろよろとした足取りでやって来る。

「日が落ちかけていましたよ。そろそろ急がないと」

ナオミが言う。

「もうおやつの時間過ぎちゃったよね。ジュースしか飲んでないからお腹すいちゃった」

ガクが大きな声で言う。
「散々取り散らして面目ない。それでは失礼いたす」
セルウィンが老人に一礼して背を向けた。老人は何も答えず、青ざめた顔で机に寄りかかる。ふと何かを思い出したかのように、右手で机の上を探った。そこには、かごに入れて片付けていた薬の瓶がある。小ぶりの茶色い瓶を手に取ると、顔の高さまで上げて蓋を開けようとする。

 

わずかに蓋が緩むか緩まないか。その瞬間だった。老人の腕に鞭が巻き付く。セルウィンが鞭を投げたのだ。その勢いと重さで老人は体勢を崩した。ほとんど声にならないうめき声を上げながら、床に倒れる。茶色い小瓶は硬い音を鳴らしながら転がった。セルウィンの靴に当たり、そこで止まる。

「ふむ」

セルウィンはかがんで小瓶を拾った。電灯に透かして中を確認する。透明の液体がゆらりと動いた。

 

 

 

 

〈おまけ〉

家族が胃腸炎で倒れた時、私は一応ビオフェルミン飲んでいました。気休めですが、おかげでお通じの調子がいいです。私だけ感染しませんでしたしね。どんなに細菌の接触があったとしても、最終的には腸内環境が勝利するものなのかもしれません。いや、確証は全くないですけど。

 

 

空き容器に水を入れてみました。今回のシーンに出て来る瓶に近いイメージになりましたね。できればもっと色が濃い瓶で形はもう少し細長い方がいいかもです。

 

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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