地面には切られた羽と脚が散らばり、体から離れた腹部は力なく横たわっている。脚の先がかすかに痙攣し、まだ完全に命が尽きていないことを教えていた。とどめとばかりに、レイラが頭部の根元に刀を突き立てる。
「終わったか?」
クリスが軽めの速足で近付いてくる。
「ああ、問題ない」
レイラの言葉を聞いて、クリスはサーヤを停止させる。鐙の上に立ち上がり、少し離れた場所から眺めた。
「また随分と派手にやったな」
クリスが呆れたように言う。
「手加減してる余裕なんてないからな」
レイラの言葉に、タクトは頷く。そのやりとりを、文子は困惑した表情で睨んでいた。
「気に入りませんか」
タクトが文子の表情を見て呟く。
「何なんや、あんたら」
文子は無表情のまま答えた。
「ターコイズ・プラネットという会社の者です。人工変異種の駆除も、我々の仕事で」
「何やて?」
文子は一瞬自分のバッグに目をやり、タクトの顔を見る。
「そういうあなたは、何者なんですか。どうしてこんな所に」
「うわああああ!」
ガクの声だ。見ると、まだ木の上にいる。というより、木から降りようとした体勢のまま固まっていた。下の枝に、またあのカマキリがいる。うっかり目が合ってしまったらしい。
「ガク、降りるな登れ!てっぺんまで登れ!」
「うう、うん!」
ガクは急いで幹にかじりつき、目にも止まらぬ速さでよじ登る。しかしながらカマキリは、その動きをしっかり目で追っていた。幹に前脚をかけ、ゆっくりと確実に近付こうとする。
「くそっ、まだいたのか!」
クリスが胸元から小銃を取り出し、カマキリ目がけて撃つ。追いついたナオミも加勢した。だが、幾重にも重なる小枝が邪魔をする。枝葉がバラバラと落ちるだけで、なかなかカマキリには当たらない。
ガクは木の頂上で揺られていた。若い枝はよくしなる。折しも梢では強めの風が吹いていた。
「どうしよう、落ちそう。降りたいけど無理!うわあああ」
見かねたセルウィンが意を決して木の根元に駆け寄る。
「落ちても構わぬ、それがしとフィアンセが受け止めようぞ」
「ダメだよセル兄、離れて!フーちゃんがあああ」
そうしている間に、なぜかレイラは黙ってタクトの近くに来ていた。
「レイラさん、オレ行きます。オレも木に登れるんで」
レイラは首を振った。
「いや必要ない」
そう言うと、刀身をせせらぎの水に浸した。
〈おまけ〉
カマキリの中には、木登りが得意なのもいるらしいです。
ハラビロカマキリがそれで、木に登って獲物をとらえるのだとか。樹上性のカマキリ、なんて言い方もしますね。
ただ、最近あまりハラビロカマキリ見ないかもです。
どうやら外来種のやたらでかいハラビロカマキリの1種が増えてきているらしくて、在来種の生息数が脅かされるのだとか。やっぱりい外来種の駆除は必要なんじゃないかと思います。可哀想ですけど。
以前、木に登っているところを目撃したカマキリ。ハラビロカマキリではなさそうでしたが、さほど大きくもなく。コカマキリあたりだったんでしょうか。見分けがつけづらいですねえ。
「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。
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