吉野敏明氏の提唱する4毒抜きとやらを8日間実践した私。こうなったら著作も読んでその理論を検証しようと、本屋で吉野氏の本を買ってみました。
その名も、『四毒抜きのすすめ』。ちなみにアフィリエイトやっていないので、ここから買わなくていいです。
ベストセラー本なので、本屋に行けば普通に目立つところに平積みされていて、簡単に買えるはずですから。
さて、内容を一読。文章としてはさほど長くもなく、私にとってはたやすく読める本でした。そのかわり、具体的な数値やデータにはとぼしい気がしましたね。動物実験の話とかものせてほしかったです。あるはずなんですから。
「これにはこういう物質が入っている、それにはこんな作用がある、だからこれは食べてはいけない」という理論がメインでしたね。あとは、「日本人は昔からこれは食べていなかった、そのためこれは日本人の体に合わない、だからこれは日本人なら食べてはいけない」という理論もちょくちょく出てきます。どうやらこの2つが両輪となって話を進める構造のよう。
でも、この2つの理論を共存させようとして無理が出てきているような気もします。どちらかだけにすればいいのに。おそらく、前者だけだと情緒が感じられず、後者だけだと医学的根拠に欠ける感じがするのでしょうね。多分。
そして、現代の食生活は全てGHQの政策によるものだとする陰謀論的な話にまで飛躍します。まあ、そういった側面もあるんでしょうけどね。日本がアメリカの余剰生産された作物のマーケットになっていることは否めません。農薬をたくさん使った作物を輸出しているのも確かのようです。
でも、日本人を洗脳し操ろうという陰謀はないと思います。多分。アメリカは自由の国ですし。確かな根拠のないことを書くのはどうかなあと思っています。
さて、「これにはこういう物質が入っている、それにはこんな作用がある、だからこれは食べてはいけない」という理論はひとまずわきに置きましょう。グラフなどの具体的なデータに乏しく、巻末に引用・参考文献の一覧もないのです、この本。素人には検証のしようがありません。
でも私は国語科教員免許を持ち、古典文学には詳しいのです。「日本人は昔からこれは食べていなかった、そのためこれは日本人の体に合わない、だからこれは日本人なら食べてはいけない」という理論に関しては、少し考察できそうなのでしてみようと思います。
まずは、小麦。麦は昔から栽培されていて、『宇治拾遺物語』には桜が散るのを見て泣き「私の父が育てる麦の花が散って実がならないかと思うとつらい」と言って泣く子どもの話があります。庶民が普通に麦を作っていたとわかります。
植物油に関しては確かに灯火のために使われることがほとんどだったはずですが、輸入された食べ物に関してはそうとも言い切れません。代表的なものが唐菓子。小麦粉を練って成型し油で揚げたものです。平安貴族はこれを「くだもの」と呼んで嗜好品としていました。「くだもの」の記述は『源氏物語』をはじめとしていろいろな作品に出てきます。
乳製品はあまり食べていなかったと思います。でも一応、奈良時代からあったらしいです。どちらかというと薬みたいな認識だったよう。蘇(チーズ)、酪(練乳)などに加工されることも。ちなみに醍醐天皇の醍醐はヨーグルトのことです。
甘いものは、人工のものも自然のものもありました。今より貴重だったのは確かですが、やはり嗜好品として食べられていました。先にあげた「くだもの」には現在でいうところの果物も含まれます。『徒然草』の中に「大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたり」などという記述があり、庶民でもみかんなどの果物を食べられていたらしいとわかります。
甘葛(あまづら)という甘味料があり、『枕草子』には「削り氷にあまづらをかけたもの」という記述も。蜂蜜も存在し、こちらは香木を調合して丸めるのにも使ったらしいです。米や麦芽から糖を作ることもできたので、飴は上代から存在しました。甘いものはやはり、自然と欲するものなのではないかと思います。
さらに時代が下って南蛮貿易を始め、天ぷらやら南蛮菓子やらが知られるようになり、明治期の文明開化で洋食も広まったのではないかというのが私の認識です。このあたりは詳しくないのですが、日本史でならったような記憶が。
なので、GHQのせいで4毒が広まり日本人が中毒にされたというのはちょっと言い過ぎなのではないかと勝手に思っています。ほかにも、甘いものはダメだと言いながらアイスクリームはたまにならいいと言ったり、4毒のせいで病気になった例が1日に板チョコ3枚食べていて慢性頭痛になったというような極端なものだったりして矛盾や違和感があります。
ほんの少しでも食べてはいけないと言いつつ、ほんの少し食べただけで命を落とした事例が紹介されていないのだから信じていいものかどうかわかりません。
以上、いろいろ書きたいけれどこれ以上長くなるのも嫌なので筆を置きます。つっこみどころが満載でそれなりに面白く読めるので、暇があったら読んでみるのもいいのではないでしょうか。読書の秋ですから。
