最終訓練は3日間続いた。
何度も繰り返していると、いろいろなパターンがあることが分かってくる。
倒すパターン、足止めだけするパターン、攻撃しないパターン、離れて様子見するパターン、逃げるパターン…。
大切なのは、チームで連携することだと学んだ。
どんな任務でも単独で行うものはないのだそうだ。
複数で動き、場合によっては応援を呼ぶこともある。「深入りするな」がカイトの口癖だと知った。
最終訓練が終わると、「必要があればまた連絡するから」とヒナタのもとに戻される。
「長い間お疲れ様。訓練、大変だったでしょう」
穏やかな笑みをたたえるヒナタは、菩薩のように神々しい。
「大変だった!でもボク、頑張ったよお」
ガクはここぞとばかりに甘えようとする。
「ここの社員は、誰もが通る道なのよ」
開いているパソコンには、大量の未読メールがあった。
「こっちも大変そうですね」
覗き込んで、タクトが言う。
「そうね、仕事依頼のメールもあれば、苦情や嫌がらせもあるわ」
デスクの端にはひとかたまりの封書もある。それに目をやってヒナタが言う。
「紙の手紙は無記名のものが多いのよ。身元をたどられたくないのね」
「今時、珍しいですね…」
話している間に、新しいメールの通知が届く。
「あらあら、これは大変そうよ」
「どうしたんですか?」
「新しい仕事が入ったから、待機しろですって」
「社内メールなんですね」
その時、ドアが開いた。
「よしよし、いるな」
「てか早っ!レイラさん、すぐ来るならわざわざメールしなくても」
「メール?ああ誰かが気を利かせて送ったのかな」
「ねえねえ、仕事って?」
「とりあえず準備だ。下に行こう」
薄黄色の服が置いてあった。ハイネックの長袖Tシャツと長いスパッツだ。
「それを服の下に着るんだ」
「こんなの着て暑くないですか?」
「むしろ涼しいぞ。風も通すし、汗をよく吸って逃がしてくれる。触るとひんやりするだろ?シルクやヘンプを混ぜてあるんだ。企業秘密だけどな。あたいは仕事中いつも着てるぞ」
「だけどレイ姉、なんで首の下のところあいてるの?」
レイラは黄色い服の上下に直接鎧のようなものを重ねている。なぜか胸元に切れ込みが入っていた。
「これか」
レイラは切れ込みに人差し指を引っかける。豊かな胸の谷間が露わになった。挑発するような笑みを浮かべる。
「色仕掛けだよ」
タクトはすぐ目線を下げたが、耳まで赤くなっていた。
〈おまけ〉
とりあえず訓練が終わりました。
「ここの社員は、誰もが通る道」とヒナタが言ったように、ターコイズ・プラネットの社員はみな昆虫を駆除するための知識と技術を身に着けています。
内勤メインの社員もいますが、そういった人達も訓練を受けるのだそうです。
外に出る時に着る薄黄色の服は、防護のための標準装備。
普通の服の下に着て、蚊やアブなどから刺されるのを防ぎます。
昆虫が寄り付きにくいように、色やにおいを工夫しているらしいですよ。
レイラの戦闘態勢の時の装備のイメージ。
胸のところの切れ込みは、彼女自身がわけあって入れたものです。
ちょっぴりセクシーでいいですね。
「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。
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