「ん?いろ…なんとかって?」

ガクはきょとんとしている。タクトは思い切りガクの頭を引っぱたいた。

「いったあ!何すんだよ兄ちゃん」

「うるさい、変なこと聞くな!」

 

「さて、武器も渡そうか」

レイラは騒ぐ2人の様子を気にも留めず、話を続ける。

「えっ、武器!」

ガクがぱっと顔を上げた。

「ガク、お前の銃だ」

レイラが箱から銃を取り出す。

「あれ、少し小さくない?」

「体格を考慮して、ひと回り小さくしてもらったんだ。威力はやや下がるけど、使い方は同じだから安心しな」

 

「タクト、お前のはこれだ」

レイラは黒い手袋を手渡す。訓練の時にはめたグローブよりはコンパクトな見た目だ。よく見ると、指の第二関節より先は出せるつくりになっている。

受け取ると、思った以上にずしりときた。触るとわかるが、手の甲の部分に何やら金属らしきものがある。

 

「これ、何ですか?」

「金属板が仕込んであるんだ。合金だが、鉄と同じくらい硬いからな。小さめの甲虫ならこれでいける」

早速はめてみると、手に持つよりは重くない。これなら使えそうな気がした。

 

「さて行くか」

レイラがウエストポーチからスマートフォンを取り出し、地図を起動させた。

「どこへ?何のために?」タクトが聞く。

「アリの巣が見つかったらしい。駆除依頼が入った」

「それって、人工変異種ってやつ?」ガクが聞いた。

「その通りだ。そうそう、これを渡すの忘れるところだったよ。ゴーグルだ。蟻酸出すかもしれないから、念のためな」

レイラがタクトにゴーグルを渡す。ガクにはメガネを手渡した。

「あれ?」ガクは不思議そうな顔をする。

「ガクのは特別仕様だよ。銃の照準を合わせやすくしてある。度数も合わせてあるから安心しな」

 

車のエンジンをかけながら、レイラが言う。

「いいか、タクト。お前はあくまでも補助担当だ。接近戦は危険が多い。距離を取れるガクの方が有利なんだ」

「分かりました」

「この会社では、未成年に2人以上の成人がつくことになっている。安全のためだ。タクトは成人の扱いだからな。ガクを守ることが第一の任務だと思ってくれよ」

「もちろんです。弟を守らない兄なんていませんよ」

「そういえば、カイ兄どうしたの?前の仕事では一緒だったでしょ。同じチームじゃないの?」

「ああ、あいつか」

レイラが眩しそうに目を細めた。フロントガラスには、真夏の太陽の光が当たっていた。

 

 

 

 

〈おまけ〉

ターコイズ・プラネットの会社において、未成年の社員はさほど珍しくありません。

子どもならではの身軽さ、体の小ささが有利に働くこともあるので必要なのです。

人工変異種や外来種の駆除より、調査や研究の補助をすることが多いそうですよ。

 

 

ガクの装備や服装のイメージ。

だいぶ前に描いた絵なんですよね、これ。

今見るとかなり雑だなあと思いますが、描きなおすのも大変なのでいいことにしておきます。

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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