皆さま、夜のピクニックという映画をご覧になったことはありますか?
原作は恩田陸さんの同名小説です。ある高校の伝統行事、全校生徒が24時間かけて
80kmを歩く 「歩行祭」 。 80kmもの道のりを親友たちと夜を徹し歩く、その非日常の中で
浮き彫りとなる青春の光と影を描くストーリーです。
実は私の母校でも同様の行事があります。その名も 「強行遠足」 です。
男子は72km、女子は42kmの道を約12時間かけて歩くものです。
10月初旬の寒い日、朝の3時に起床し登校、男子は朝の4時にスタート。
私は高校時代、運動部に所属していましたので体力には自信がありました。 日の出前
の真っ暗な中スタート。 順調に走り出し、半分の35km地点までは上位で、これは10位
以内行けるかもしれない、そんな軽い気持ちでした。
しかし、ここからの後半が強行遠足の恐ろしい所です。折り返してすぐ 「地獄の坂」 というものが待っています。そこでスタミナを使い果たしてしまった私、そこからの道のりはまさに「修行」でした。
汗は冷え、足も痛く、精神的にも参ってしまいました。 歩道に座りこみ、もうダメだと大の字で横たわります。 本当に72kmゴールできるのだろうか、空を見上げながら不安がよぎった時、足を引きずりながら私を抜いていく人がいました。
「そうか、ゆっくりでも止まらずに、一歩一歩、歩いて行けばいいんだ。」
私も自分を奮い立たせて、一歩、いや半歩づつ歩き始めました。
「止まらずに、歩こう。」
ゴールは遥か先、全く見えません。次の電柱まで、その次の電柱まで、、、目の前の一
歩を必死に歩きました。
どのくらい時間が経ったのかはわかりません。気がつくと、ゴール間近まで来ていまし
た。半ベソをかき、倒れ込みながらゴール。小さな一歩が72km積み重なったのです。
仏教では精進という言葉がありますね。努力を積み重ねながら一生懸命に頑張ること
を精進と言います。
どんなに苦しく辛くても、ゴールが見えなくても、目の前の一歩を大切に一生懸命に積
み重ねていくことが、素晴らしいところへ辿り着く、ただ一つの道なのです。
小さなことを積み重ねること、目の前の一歩を大切に、進んで行きましょう。
南無大師遍照金剛
湧別町 宝珠寺 米本 智泉 僧正