「南無大師遍照金剛」
我々真言宗の開祖であります、弘法大師空海さまのご宝号でございます。
遍照とは、お大師様は1200年経った今も、高野山奥之院で人々の幸せを願い禅定に入られ、どんなに遠い場所でもお救い下さるという言葉です。
このような意味が一般的ですが、大学の時に師事していた先生はこのようにもおっしゃいました。
「遍照とは遍くみるということである」と。
例えば「気が弱い人」という言葉がありますが、あまり良い意味では用いられません。しかしながら、違う角度からみてみると良い言葉に変わります。
「気が弱い人」が川を渡るときにはしっかりとした船を用意するなどして、危険を排除して安全に渡ります。では反対に「気が強い人」だったらどうでしょう?こんなもの大丈夫だ!と泳いで渡るなどして流されてしまう可能性があります。
このような状態であればどちらが優れているかお分かりいただけると思います。
見方を変えると「気が弱い人」というのは「慎重な人」であるということが分かります。
このように一つの言葉や出来事に対し、決めつけることなく様々な角度から見る事で本質を知ることができるという意味です。
未だに終息しない新型コロナウイルスや、国同士の争いなど、暗いニュースが多い今だからこそ「遍くみる」ということが大切ではないでしょうか。物事の本質を知り、ポジティブにとらえる力が必要だと思います。
お大師様の 「遍く照らす」 力と、ご自身の 「遍くみる」 力で、どうぞご一緒に前向きにご精進いただけましたら幸いに存じます。
南無大師遍照金剛
新ひだか町 龍徳寺 郷司 真澄 僧正