ある学校で、標語が校門の前に貼ってありました。
「行きたくて行きたくて、たまらない学校づくり」
イジメなどをしないようにしようとか、仲良くしようとか、ケンカをしないとか、自発的に思うのでは無いでしょうか。
子供達が行きたくなる学校、それは、やさしさに満ち溢れた学校ではないでしょうか。
現代は、学校によっては、子供の相合い傘を禁止しているところが有るそうです。 その理由は、傘の持っていない子供を傘に入れてあげると、入れてあげた子供がビショビショになり、それを見た親が、学校に苦情を言うからだそうです。
これが、俗に云う、モンスターペアレントなのです。 一昔前迄は考えられなかった発想です。 人が困っていれば、助けるのは当たり前だし、それがお互い様でした。助け合いの精神を教えるのが学校でしたが、随分変わりました。
作家で、もう亡くなりましたが、遠藤周作さんは、数学が全くダメで、授業中は机の上に教科書を立てて小説を読んでいたそうです。 これを知った母親は、
「文章を書くのが上手だから、あなたは作家を目指したらいい。」と勧めました。本人はその時の事をこう語っていました。
「あの時、普通の母親のようにちゃんと数学も勉強しなさいと言われていたら、今の私は無かった」と。
短所を伸ばすには、相当の時間がかかる。それよりその時間を、長所を伸ばす時間にあてる。そうするとその長所はますます伸び、それが社会に出た時に役に立つ。 学校の全ての教科の勉強は、大事ですが、長所を伸ばす為に、こういう生き方も良いのではないでしょうか。
スポーツをしていれば、必ず壁にぶち当たり、そのスポーツを辞めたい時が有ります。 普通であれば辞めたい理由を聞き、もう一度頑張る様に説得しますが、子供の心がかえって頑なになり、本当に辞めてしまいかねません。 壁にぶち当たった時は、ただ聞いてあげるだけで、良い結果が生まれる場合が有ります。
仏像には、優しそうなお顔の観音さん、ちょっと強面のお不動さんと色々な仏様がいますが、色んな悩みに対応する為です。
人には、色々な性格の方、色々な立場の方が居ますし、同じ人間でも時と場所、環境によって悩みが異なります。
優しく包み込んで欲しい時は観音さん、叱咤激励をして欲しい時はお不動さん、子供に関する悩みはお地蔵さん等と、その時々の気持ちに応じられるように多くの仏様が居ます。それらの仏様は、真言宗の本尊である仏様、大日如来が化身した姿であり、大日如来の働きを象徴したものです。
困った時は、黙って仏様と向かい合い、心の中で話かけて見て下さい。そうするだけで、解決策が見つかるかも知れません。
「こうしなさい」「それはダメ」と言うばかりでは無く、黙って話を聞いてあげる事が大切な場合も有ります。
南無大師遍照金剛
留辺蘂町 金毘羅霊院 髙田 有修 僧正