終活のいろいろな姿 | ~心のやすらぎ~

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高野山真言宗の僧侶による法話ブログです。
毎月1話掲載してまいります。

 終活をされる方が多くなってきました。残される人たちに迷惑をかけないように身の回りの品々を整理することのようですが、今回はそれ以外の形についてお話させていただきます。

 

 その一、今から三十年前、恩師宮坂宥勝先生に講演をお願いした時に断酒されたと言われました。酒豪だったのにと心配する私たちに、実は読みたい本もあるし、まとめておきたい論文もあるが、残された時間に限りがあるのでと話されました。

 

 その二、或る日、檀家のご婦人がお寺に来られて、疎遠になってしまった女学生時代以来の友人と亡くなる前に仲直りしたいと依頼され、その席を設けてあげると、直ぐに打ち解け、声を上げ肩をたたいて談笑されていました。後日、これで暗くて重い荷物を降ろして旅立てるとよろこんでいました。

 

 他にも身近な方でその心を語らず、八十才を過ぎた今も黙々と歩き遍路を続けています。整理処分するだけでなく、このように仕事をまとめたり、心の安心を得たり、功徳を積み続けることも終活の姿と思います。

 

 その作業の途で何気なく付き合ってきた人の中に大切な人を再発見できたり、自分の中にこれは守ろうということに気づくことがあれば、また嬉しい時間です。

 

 南無大師遍照金剛

 

大空町 弘明寺 月原 宣雄 僧正