奈半利の宿の温泉が最高だった。とてもこじんまりとした内湯と露天風呂で内湯には12ほどの洗い場があり、入ったときは2人の先客がいたがぼくが体を洗い終えるころになると貸し切り状態となった。

内湯と露天風呂ともにオレンジ色のランプ灯りをイメージした電気の明かりだけで明るさを最小限に抑えている。とくに露天風呂には明かりがひとつしかなく、露天風呂のまわりはよく手入れの行き届いた日本庭園になっていた。小さな松のような木がお湯の上までせり出していてとても趣がある。露天風呂のお湯に肩まで浸かりふと空を見上げると空一面にぎっしりと星がきらきらと瞬いている。星が空から零れ落ちそうでいてこちらに迫ってくる迫力も感じられる。まわりが田んぼだけという宿の立地と最小限の明かりのおかげで、星がとてもよく見える。天の川とはよく言ったもので、連なる星々の輝きが確かに川のように見える。しばらく空を見上げていると目の端でなんだか星が動いた気がした。さらに見上げていると今度ははっきりと流れ星が見えた。実際、自分の目で見たのは初めてだったので驚くとともに感嘆の溜息がもれた。流れ星が流れている間に願い事を3回となえると願いが叶うというけれど、それは至難の業のように思えたが、もし3回となえることができたならきっと願いが叶うだろうとも思えた。

温泉に出たり入ったりしながら1時間ほどねばり4つの流れ星を見ることができた。流れ星が見られたのはめずらしいことなのか高知では普通のことなのかわからないがこれほどきれいな夜空を眺めてお風呂に入れる環境にあるなんて高知のひとがうらやましい。 大学の同期が卒業後に高知に帰った訳がなんとなくわかった気がした。

東京にいると空を見上げても冬ならオリオン座がかろうじて見えるくらいだが、高知ではオリオン座がどこにあるのかわからなくなるほどの星が夜空に輝いていた。これほど多くの星が地球以外にあることにびっくりもした。
高知県四万十~奈半利(なはり)


高知県は、南国高知といわれるだけあってヤシの木が多く見られさすがに暖かった。Tシャツにセーターだけでコートは必要なかった。高知県は坂本龍馬の出身地で、景勝地の桂浜の銅像の前では多くの観光客が記念写真をとり、坂本龍馬記念館はたいへんな混みようで満足に見学できないほどだった。坂本龍馬が好きだと言うひとをたくさん知っているが、あらためてその人気に驚いた。

高知県では安芸市と室戸岬の間にある奈半利というところに泊まった。泊まった宿はお遍路さんが歩く国道近くにあったので、白い服に杖をもったお遍路さんをよく見かけた。

夕食は宿にある和食レストランでマグロ丼を食べた。ごはんの上にとろろと細切りになった海苔、その上にマグロのお刺身がのっていた。味付けがすでにされているので何も付けずに食べてみるとこれまた今まで食べたマグロ丼のなかで一番おいしいのではと思えるほどおいしいマグロ丼だった。マグロは言うに及ばずごはんもとてもおいしい。

愛媛でもそうでしたが口にするものほぼ全てが”今まで食べた中ランキング”のナンバーワンになってしまうので、今まで余程ろくなものを食べてきてないのでは?と思われるのが悔しいですが、ほんとうに食べ物がおいしい。

5日ほど愛媛と高知に滞在し色々なものを食べてきてなんとなく気づいたことがある。おいしさの秘訣はおいしい水ではないかと。どこのお店でも食事のはじめに必ずお水が出ますが、その水のおいしいこと。思えば、多くのコンビニではミネラルウォーターが値引きされて売れられていた。おそらくおいしいお水のある愛媛や高知でミネラルウォーターはあまり売れないから値引きされて売られているのではないだろうか。

テレビ番組で見たのだが、東京から地方にお店を移した料理人にその訳を訪ねると「東京の水ではおしいい料理を提供することは難しい」と答えていたことを思い出した。海の新鮮な食材に加え、おいしい水のためどこで食べても料理がおいしいかったのだろう。コーヒーがおいしい理由もお水がおいしいからではないだろうか。

愛媛出身の知り合いがたまに「瀬戸内海の海の幸の味を知っているから東京の人がおいしいというものでもあまりおいしいと思わない」と言っていた。ほんとにそうかなと思っていたが、実際に愛媛と高知で食べてみると確かに彼がそう感じるのも頷ける。
松山~佐多岬灯台

佐多岬は四国の地図でいうと左上はしにある半島で、日本一長い半島でその長さは50キロある。きれいな景色が見られると期待して、半島の先端にある佐多岬灯台へ車を走らせた。その日は天気もよく右手に瀬戸内海、左手には宇和海を見ながらのドライブはとても気持ちのよいものだった。

風の強い佐多岬半島は風力発電で有名らしく多くの風車を見ることができた。遠くから見るとそれほど大きく見えない風車も近くでみると巨大でその高さは50メートルもあるそうだ。風車の真下に行って回転している風車を見上げると風車が落ちてきそうでこわくて足がすくむほど巨大だった。地球環境には良さそうだがとても巨大なのでおいそれと設置できるようなものではないように思えた。

昼食はログハウス風のちょっとおしゃれな感じのレストランでとった。おそらく地元の名物であろうイノシシの焼き肉というメニューがあったので思い切って注文してみた。イノシシの肉を食べるのは生まれてはじめてだ。見た目は豚肉生姜焼きそっくりで、味もまた豚肉に近い感じだったが、豚肉よりも歯ごたえがあり結構おししかった。 

佐多岬灯台へは近くの駐車場から歩いて行かなければならなかった。駐車場の入り口で頭に頭巾のようなものをかぶった年配の女性に声をかけられた。彼女は袋に入ったみかんと海藻を手に持ち、日に焼けた顔に満面の笑みで「お土産におひとついかがですか?」とみかんと海藻を差し出した。すこし躊躇していると「これはおばちゃんがつくったものなのよ。味見してみて」とみかんをくれた。道の駅で何度が袋詰めされたみかんが売れられているのを見てきたがなんとなく買わずにいたが、愛媛に来たからにはみかんを食べずには帰れないと思っていたから、いつかは買うつもりだった。「ひと袋いくらですか?」と手渡されたみかんを味見をせずに聞くと「みかんを買うときは、まずは試食!おばちゃんがいくら口でおいしいと言ってもひとには好みがあるから食べてみてから決めないとダメよ」ととても親切だった。みかんの皮をむいて、一房口に入れてみるとはじめに酸味がきてそのあと甘みが口の中に広がった。関東のスーパーで買うみかんのほとんどは酸味が強すぎたり、逆に甘いだけだったりするが、このみかんは酸味と甘みのバランスが絶妙だった。一袋10個入りで500円とのことでひと袋買った。

灯台までの道のりは思ったよりも険しくアップダウンがあり結構キツく、汗がじんわりにじむほどだった。途中に海岸がありそこには何層にも重なる石の地層があった。その岩の高さが50メートルくらいあったので、一体何層の地層が重なっていたのだろうか。ガイドブックには紹介されていないが、月日を重ねる地球の姿を感じることができる穴場で海を眺めならしばし休憩をとった。
やっとのことで灯台に着くとそこからの眺めは壮大で、太陽の光に輝く広大な海が目の前に広がり、かすかに九州が遠くにかすんで見えた。