苫小牧市アパート外廊下の床崩落事故について | (株)北工房staff blog 虹を追っかけてみる

(株)北工房staff blog 虹を追っかけてみる

北海道発・「建築」と格闘中!!

2020年10月17日の夕方、北海道苫小牧市の2階建てアパートで外廊下の床が抜けて幼児を含む5人が転落するという事故が発生しました。

 

この事故について、「全国賃貸住宅新聞」にて、北工房代表の栃木渡が取材協力させていただきました。

 

記事はこちらからお読みいただけます。

(全国賃貸住宅新聞のページに飛びます)

【クローズアップ】北海道築古アパート外廊下崩落事故

 

 

 

こちらの記事ではオーナーと管理会社との修繕に関するやりとりや、栃木によるインスペクションと定期メンテナンスの必要性について書かれていますが、栃木からもう少し建築的な見解やアドバイスを聞くことができましたので、書かせていただきます。

 

 

■原因の推察■

 

まずは今回のアパートが海岸から2km以内の場所にあり、そもそも塩害が発生しやすい場所に建築されていました。

しかし代表が現地を確認したところ、塩害についての対策(塗装など)を行っている形跡がなかったといいます。

 

溶接部においても、ピンホール(塗膜などの表面に生じる小穴。溶接上の不具合。)から凍害(※)を起こす可能性が十分に考えられる状態だったようです。

 

※凍害とは、寒冷地においてひび割れなどからコンクリート内部へ水が浸入し、それが凍結・融解を繰り返し膨張することによって劣化していく現象です。

進行すると剥離・剥落し、構造材等へ影響を及ぼす、非常に危険で侮れない寒冷地特有の劣化事象です。

 

 

また、錆汁の状況から、相当昔から劣化していたと思われます。

結論としては記事内にも記載があるように建物の管理状態が悪かったことが原因で、きちんと状況把握をして定期的にメンテナンスを行っていれば防げた事故でした。

 

 

■この事故から学ぶこと■

 

東京などの不動産投資家の方から北海道の物件が人気があるようで、北工房(さくら事務所ホームインスペクション北海道)へも多くのお問い合わせをいただきますが、きちんと建物の状況を把握するためにも、購入前のインスペクションは必須です。

 

購入前にご自身で現地確認をしっかり行ったとしても、本州の方では発生しない「凍害」「スガモリ(すが漏れ)」などの不具合や劣化事象もあります。

必ずその地域のことを熟知したインスペクターへ依頼し、見てもらうようにしましょう。

 

管理会社がやってくれるから、とお任せしてしまうオーナーさんもいらっしゃいますが、そういった建物の劣化や、建築的な目線での建物メンテナンスに詳しい担当者はそう多くはないと思います。

 

 

 

建物オーナーさまにはぜひ居住者の命を預かる立場として、購入前インスペクションで建物の状態と修繕時期、修繕費用の目安などをしっかりと確認し、数年に1度の計画的且つ定期的なメンテナンスを実施していただきたいなと思います。