いるそうです。
今朝は劇団四季の元主演俳優で、現在はその経験を活かして企業研修などを行っている、佐藤政樹さんのお話です。
劇団四季には幼少時からクラシックバレエの英才教育を受けたり、声楽を専門的に習ったりしてきた人たちが数多く入団する。
しかし、佐藤さんさんが演劇の専門的なトレーニングを始めたのは23歳を過ぎてからだった。
当時の佐藤さんはフリーターだった。
大学時代、周りに流されるまま、なんとなく就職活動を始めた。
縁故で内定が決まった旅行会社も、「こんなの自分の人生じゃない」と、
紹介者の顔に泥を塗って断り、逃げるようにフリーターになった。
無目的にアルバイト先とアパートを往復する日々が続いた。
23歳の誕生日に、ふと自分の表情を鏡で見ると、すっかり目が死んで生気がなくなっていることに気づいた。
それが、ダメな自分から脱却するきっかけだった。
不思議とそんなタイミングで、新聞の「俳優養成所オーディション」の広告を見つけた。
すぐに入所を決意した。
養成所の仲間二人に連れられていった劇団四季の舞台を見て思った。
「自分の目指す場所は、あの舞台の上だ!!!」
ところが、23歳で理工学部出身、バレエ経験ゼロの佐藤さんが劇団四季を目指すのは、誰が考えても無謀だった。
劇団四季でバレエ指導をする先生の下でバレエを学び始めた。
必死な佐藤さんの姿を見た周りの人たちからは冷たい言葉を何度も聞かされた。
「無謀すぎる」
「今から始めるなんて...もう遅い」
「絶対に無理」
「あなたを見ていると情けなくなる」
「君は進む道を間違えている」
聞いても聴かないふりをしながら修業を積み重ねていた。
でも、劇団四季はおろか、様々なオーディションを受ける度に不合格を言い渡された。
生計を立てるために、色んなアルバイトをしながらの生活だった。
そんな時にまたしても、佐藤さんに素晴らしい出逢いが訪れた。
吐く息が白くなる厳しい寒さの朝のこと。
とある大学の前で、地方からの受験生を対象にした不動産屋のチラシ配りをしていた。
佐藤さんはけだるそうに受験生たちにチラシを渡していた。
切れ長の目をし、髪の毛が金髪の同年代の青年も一緒に働いていた。
ところが彼は、見た目とは裏腹に、目の前の受験生一人ひとりに「お願いします!!」と心をこめて配っていた。
そんな彼とアルバイト後の移動の時に、話しをする機会があった。
「君、ずいぶん一生懸命だね」と佐藤さんが聞いた。
すると、その金髪の青年は、
「だってお金をもらうんだから、それに少しでも上乗せして返すくらいの気持ちでやらなきゃダメでしょ!!」と言った。
佐藤さんは頭をガツンと殴られるほどの衝撃を受けた。
「自分のやりたいことに関係あること以外にはエネルギーを使う必要はない」
と考えていた佐藤さんにとって、カミナリが落ちるほどのショックが全身を駆け抜けた。
そして、オーディションにも落ち、お先真っ暗な状態の原因の一つが、
そうした考え方にあったんだ、と言われている気がした。
その日からレッスンを始め、あらゆる行動に対する心構えが変わっていった佐藤さん。
すると周りの人間関係や出逢う人が変わっていった。
そして...人生でさえも変わっていった。
23歳のあの時から5年後だった。
佐藤さんは28歳のときについに、劇団四季への合格という夢を実現させた。
佐藤政樹さんの講演録。
みやざき中央新聞より。
あなたにすべての善きことが雪崩のごとく起きます