あまりのことに、席を立つのを忘れそうになった。
これは奇跡ですか。
こんなテーマをぶち込んでくるんですか。
人間の浮き沈みや葛藤や、もがきや悲嘆や喜びや決心。
そういうものが詰まっている。
…って、車だけど!
アニメでこれをやるのか。
ぃや、アニメにしかできないけども!という、お決まりのくだりで失礼します。
夏休み、子供向けと思うじゃないですか。
そのお膳立てで、この深さ!
邦題の上手さもあって、ああ、中年にズガンと来る。
もちろん、光速カーレースやら。
車たちの可愛らしさやらで、子供たちも楽しいはずだけれど。
このカーズ新作を本気で味わい尽くせるのは、35歳を超えた大人だけだ。
異論は認めます。
日本語吹き替え版のクオリティ!高っ!
土田大、山口智充、戸田恵子のレギュラー陣は、もちろん。
新顔の松岡茉優が素晴らしい。
オリエンタルラジオ藤森慎吾が、プロ声優並みの発声。
ブライアン・フィー監督は初監督作だ。←ここ大事。
シリーズ1・2のジョン・ラセター監督が総指揮に回った。
ピクサー渾身のバックアップを受けての大作。大成功である。
アニメは最高品質、殊に太陽の翳り具合が!
朝昼晩、それだけじゃない。
黄昏時や、夕闇や。
繊細な陽の光を表現して、意味を膨らませる。なんという技術!センス!
車たちの表情、車体、全てがファビュラスだ。
このシーン、ライティングが凄いなあと思ってから、あ、これアニメじゃん!と我に返る始末。
リアルである。
海も空も、砂利も。
なぜならば。
映像はさることながら、音響がとんでもないからだ。
爆音は大迫力。
タイヤが砂を噛む、アスファルトを滑る。
微細な音が、触れてしまえるような質感を生んでいる。
ランディ・ニューマンの音楽もよく、私事ながら愛する奥田民生のエンディングもかっけえ…!
漲る疾走感。
人生の陰日向(かげひなた)。
希望のライトをどう見つけるか。
幾つになっても惑う我々に、道を示してくれる。
車による、車だけの人生模様。
日頃、新作をほとんど褒めない映画のお仲間が、もう一度観たいと朝まで語っていた時に、そんなにもか、と思っていた。
そんなにも、だった。
ピクサーというアニメーション会社は、チーム戦術だ。
一人の天才を作るのではなく、達人を何人も生み出そうというシステム。
常に挑戦、トライする心が第一。
カーレース界に通じるところもあるだろう。そんな理念・信念も描かれる。
人間の決意には痛みが、紆余曲折が伴う。
その先に見える道の、なんと広大なことか。
…って、車だけど!
6分間の校庭で、あんなことが出来るなんて!
日本の妖怪話にも通じる楽しさ。
『インサイド・ヘッド』や『ファインディング・ドリー』の子供たちもいたらしい。
デイブ・マリンズ監督、羽ばたく予感。最の高。
スクリーン(日本語吹替版)
Cars 3 2017年・アメリカ 監督: ブライアン・フィー 脚本: ボブ・ピーターソン 製作総指揮: ジョン・ラセター 音楽: ランディ・ニューマン 製作: ディズニー/ピクサー 声の出演: 土田大、松岡茉優、藤森慎吾、戸田恵子、パンツェッタ・ジローラモ、赤坂泰彦、福澤朗、山口智充 『LOU』 LOU 2017年・アメリカ 監督: デイブ・マリンズ |
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。