今年も皆さま、お世話になりまして心よりありがとうございました。
大晦日の今日、少しだけ。
と言いつつの長文で恐縮です。
実は初見以来、考えてきまして、論文が書ける勢い。
年末年始のTVの合間にでも、お付き合いいただけましたら―
当方の今年Best1映画で、人生の邦画Best1になった『シン・ゴジラ』について。
未見の方がいらしたら、ご覧いただくしかなく。
ご覧になった方々とは、ただただ、うなずき合いたい。
第二次大戦を経て生まれた『ゴジラ』という映画が、
東日本大震災を経て『シン・ゴジラ』という映画に昇華したさまを。
2016年、この映画に出会えたことは事件であり、記念碑であり。
これまでのゴジラ・シリーズは無関係という作り。
得体の知れない怪物が出現するところから、始まる。
現代の日本に唐突に外敵が現れたら、政府はどう動くのか。
フォーカスされているのは、その一点。
日頃、我々庶民が目に出来ない場所でのパニックだ。
これが、壮絶にリアルだからここまでの人気を呼んだのだろう。
庶民側のパニックは想像がつく。
少なくとも、2011年を経験した我々は、その様子を知っている。
だから、その描写は不要。
それよりも、今この時に、日本政府にどこまでの能力があるか。
『シン・ゴジラ』は災害時、または有事の際の危機管理対策の現場を描くシミュレーションだ。
ここでは主に、有事の際の、としたい。
なぜなら、ゴジラは災害とは違うからだ。
キャストは総勢、328人。ベテランから新進まで、幅広い。
その隅々まで、役割が明確。
キャラクターがクッキリとしているから、見紛うことがない。
矢口蘭堂(長谷川博己)の決断力。
森文哉(津田寛治)の責任感。
志村祐介(高良健吾)のヤング感。
尾頭ヒロミ(市川実日子)はミス2.5次元。
安田龍彦(高橋一生)に萌えまくる女性観客。(当方含む)
袖原泰司(谷口翔太)の良い声in迷彩服。
根岸達也(黒田大輔)のゴジラへのトキメキを隠せないワクワク感。
間邦夫准教授(塚本晋也)は正しいことしか言っていない。
赤坂秀樹(竹野内豊)の覚悟。
カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)は虚構と現実の橋渡し役である!←ココ重要
ああ、しまった。
個別に触れていたら本当に長文になってしまう!けれど言わせて下さい、お願い。
大河内清次(大杉漣)は秋田県初の総理だから触れたいし、
花森大臣(余貴美子)が金井大臣(中村育二)を見る時の目が冷たすぎて笑うし、
里見大臣(平泉成)の醸し出す愛嬌、
泉政調会長(松尾諭)のザ・若手政治家、
財前統合幕僚長(國村隼)の目が輝きすぎており、
西郷隊長(ピエール滝)が良いセリフを言いすぎる。
丹波一佐(鳥山昌克)に至っては、出番<印象だ。劇団唐組出身と知って動揺。
監督は樋口真嗣。
特撮が専門ながら、これまで、監督としては悪評を生んできた気の毒な方だ。
ここでは、樋口監督の鬱憤が晴らされたかのよう!
統括する特撮シーンが出色。
CGとミニチュアと、あらゆる手段で現実の風景を一から作り上げていく。
あの空撮の、何から何まで作り物だなんて、思いもしなかった!
総監督は庵野秀明。
『エヴァンゲリオン』シリーズの映像を生み、『シン・ゴジラ』を生んだ。
もはや、生きる伝説。庵野監督自身が、使徒だと思う。
シン・ゴジラにはエヴァンゲリオン的な演出が随所に。
胸が切なく痛くなるのは、その悲劇性を高めた描写によるだろう。
劇中に登場する、とあるセリフは、両監督が自らに言っている。
そう思うと、また泣けてくる。
樋口監督は庵野総監督と東宝の間に入り、製作側からの要求を跳ねのけてくれた。
この覚悟が、今作を傑作たらしめている。
例えば、製作側が要求したという色恋の描写。
この設定において、そんなものは雑音でしかない。
音楽が至高で!
故・伊福部昭が紡いだスコアが高らかに劇場に鳴り響く。
ゴジラのテーマだ。歴代のゴジラ映画を彩った演奏の数々に、脳が燃える。
鷲巣詩郎による楽曲はエヴァンゲリオンの色、そう、秀曲ばかり!
あらゆる場で、すでに絶賛され、考察し尽くされている映画だ。
その魅力は、日本人であれば肌で感じるのではないか。
冒頭から、謎がバラ撒かれ、一度観ただけでは全てを把握することが出来ない。
撮影方法も多岐に渡り、目くらましが仕掛けられている。
ラストカットの意味に当初は混乱。
だが、全ての答えは本編中に描かれていた。
その謎解きをしたくて、複数回鑑賞する人が山のように。
私事ながら、10回観たから言える。
毎回、違う所で泣くのです。
会議と書類で進む日本の政治に、皮肉たっぷり。
が、愛情も山盛り。
これが日本だ。現代の日本の姿だ。嬉しくなるではないか。
国を守るということ。
身を投げ出せるのは、家族を守るのと同義だからである。
対策システムや意思決定ルートなど、日頃、ぼんやりとしか分からなかったことが、ここでは明示された。
丹念な取材と、ゴジラ愛、特撮愛が生み出した新しいゴジラ。
その造形は終始、異形だ。
モーションキャプチャを導入、野村萬斎に中の人を演じさせることで表現が膨らんだ。
ゴジラ出現から、一気呵成に至るまで。
徹頭徹尾、一分の隙も無い。
ゴジラが放つ光の咆哮。
ああ、また観たくなる!
どうして上映が終わってしまったのか!
サントラを買い、劇場に足を運び、セリフを真似し。
この半年、当方の心はこの映画と共にあり、出来上がったのがシンゴジ脳。
ついに先日届いた、ゴジラ本『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を開いたら、尻尾についての自分の考察が正しかったと分かり、感無量。
映画ファンとして、こういう体験が出来るとは。
悪魔のように無謀で、神のように強靭なゴジラを出現させてくれたこと。
『シン・ゴジラ』という怪物を作ってくれて、平伏して感謝です。
ここまで読んでいただき、今年もご訪問いただいて、感謝感謝です。
これにて2016年鑑賞映画を書き終えました。(爆睡作は除く
今年も皆さまからパワーをいただくばかりで恐縮でした。
ますますババアですが、来年もお付き合いいただけましたら嬉しいです。
どうぞ皆さま、良い年をお迎えくださいませ。
2017年も、傑作秀作珍作に出会えますように―
スクリーン
2016年・日本
総監督・脚本・編集: 庵野秀明
監督: 樋口真嗣
音楽: 鷲巣詩郎、伊福部昭
出演: 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、大杉漣、柄本明、渡辺哲、余貴美子、平泉成、中村育二、矢島健一、手塚とおる、横光克彦、松尾諭、嶋田久作、高良健吾、津田寛治、塚本晋也、市川実日子、高橋一生、谷口翔太、三輪江一、野間口徹、黒田大輔、吉田ウーロン太、小松利昌、國村隼、松尾スズキ、ピエール瀧、鳥山昌克、犬童一心、原一男、片桐はいり、そして、野村萬斎・・・書ききれません
[関連作品]
庵野秀明監督⇒ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q/風立ちぬ(声の出演)
樋口真嗣監督⇒巨神兵東京に現わる(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q同時上映)/のぼうの城
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。