9月18日と言えば
日本で言う柳条湖事件(中国では九一八事変)が勃発した日
中国では
日本が1945年8月まで続いた中国侵略戦争を始めた日
とされています
この日には中国各地でサイレンが鳴らされ
多くの人が屋外にいても足を止めて
犠牲者を悼みます
自動車を運転していても停車して車外に立ち
犠牲者を悼みます
ということで当然ながら
「軍国主義日本」を弾劾する記事が溢れます
ただ今年だけの現象かどうかは調べているのですけど
チョッと気になった記事がありました
「日本には『日本政府による歴史改ざんは許されない』と主張する国会議員がいる」
「日本には旧日本軍による犯罪行為を暴露しつづける研究者や、旧日本軍の犯罪行為を示す史料を刊行しつづけている出版社が存在する」
です
日本の過去と現在についての中国の公式見解は
「対中侵略戦争を引き起こしたのは日本の軍国主義者
一般民衆は戦争の被害者だった」
「今の日本は軍国主義の体制ではない」
です
そういうことで
「今の日本や日本政府に戦争責任はない」
というのが中国の公式見解ですけど
9月18日前後にはどうしても
反日感情が高まります
だからよく
中国にいる日本人は
9月18日には言動に注意しろ
などと言われるわけです
ただ中国当局としても
日本人を殴打する事件があると
困るわけです
「中国当局が扇動した」
なんて言われかねないですからね
特に今年の場合には
福島第一原発での「処理水」の海洋放出がありましたから
反日感情は悪化しています
だから先ほどの記事2本には
「日本にも歴史の正しい認識を広めようとしている人がいる」
ということを強調することで
反日感情を緩和しようという意図があるのではないか
と思うわけです
それから中国外交の特徴
というか中国人の渉外術には
「敵の中に味方を作れ」
という発想が強い特徴があります
自らと敵対する勢力も一枚岩ではない
という考え方で
「主敵」と「主敵以外の敵」を分けて
「主敵以外の敵」は可能か限り味方にする
それが無理でも「中立的」にする
という手法です
例えば国共が争っていた時代です
当時の国民党では蒋介石が絶大な権力者でした
しかし国民党内にも「反蒋介石」の勢力がありました
中国共産党は国民党内の反蒋介石派を味方にしました
中国共産党は国民党との争いの過程で
非共産党だが反蒋介石
という勢力を味方にすることに努めました
中国では現在
民主党派と呼ばれる8つの政党があります
共産党政権を批判することは許されないので
いわゆる野党とは言えませんが
政策提言をすることは認められています
たしか胡錦濤政権時でしたが
非共産党の民主党派党員が閣僚になったことがあります
(習近平政権になってからは絶えてないなあ)
さてさて
現在の国際情勢を見れば
中国にとっての「主敵」は米国です
さらに細かく見れば
中国には「敵の中の味方である米国人を大切にする」
という方針がありますけど
国単位で言えば「主敵」は米国です
では
中国は日本をどのように位置づけているのか
ですけど
「主敵にかなり近いけど主敵とは言えない」
と見なしているみたいですね
だから中国当局としても
中国人の反日感情が過剰になることは
このましくないわけです
これからの外交の経緯で
日本となんらかの合意が成立するかもしれな
個別の分野に限定されると言っても
中国外交にとって
「日本をできるだけ味方にする」
は望ましい状況です
ただ
そう言う場合
民衆の反日感情が強まりすぎていたら
「日本に屈服した」「土下座外交だ」
てな具合に政権批判が生じる恐れがあります
事実
胡錦濤時代にはそういうことがよくありました
習近平政権になりネットの監視がかなり厳しくなったので
政権を批判するネット世論が高まる可能性はずいぶん低くなりましたけど
厳しいコロナ対策をしていた時期に
習近平批判が発生したことでも分かるように
政権批判が発生する可能性が皆無であることはありません
ということで
中国当局にとって
国民の間の反日感情が過剰に高まることは
決して好ましいことでは
ないわけです
本文中でご紹介した記事は【こちら】と【こちら】です