中国人の「ケンカの作法」が分かったと感じた出来事 | 如月隼人のブログ

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またまた
北京で留学生活を送っていた時の話です

北京市内にはトロリーバスが走っていました
今も
走っています

中国でトロリーバスが導入された最大の理由は
かつては燃料油不足に苦しんでいたからだそうです

トロリーバスならば
石炭火力発電所の電力供給に頼ればよいので
燃料油を消費するよりも
まだよい

ということだったそうです

中国経済は発展して
原油の輸入にも大金を投じられるようになると
今度は
「大気汚染を低減させる」
として注目されるようになったのですけどね

それはさておき
トロリーバスには大きな問題があります
「追い越しができない」です
架線から電力を取り込むので
追い越しができないわけです

私が北京での留学生活を初めてほどないこと
長安街という天安門の前を東西に延びる大きな道路を
自転車で走っていたら
すぐ左側にトロリーバスが延々と連なっていました
何台も何台も立ち往生

それらを追い抜いて先頭部分まで行くと
1台が故障して
後続車が進めなくなったと分かりました

日本で走っていたトロリーバスには
補助エンジンがついていて
ポールを架線からはずしても
低速ならば走行できたそうです

というのは
鉄道路線と交差する踏切部分では
車体の上に架線を張れないので
その部分だけはエンジンで走行したわけです

北京のトロリーバスには
そんな仕組みはありませんでした

ということで1台が動けなくなると
2台目以降は進めなくなる

北京では
別の原因でトロリーバスが延々と停車している情景を
見たことがあります

やはり自転車で進んでいたら
トロリーバスが延々とつながって停車していたので
「また事故かな?」と思って進んでいったら
そうじゃありませんでした

先頭部分で
トロリーバスの運転手及び車掌が
自転車で引っ張るリヤカーのおじさんと
猛烈に口論している

この自転車利用のリヤカーは
近郊の農民が
いわゆる青空市場で売りさばくために
野菜なんかを運んでくるのに使っていました

今じゃ長安街を通ることはできないはずですが
当時はかなりいっぱい通行していました

トロリーバスとリヤカーが接触したみたいで
互いに「悪いのはお前だ」と言い合っていたようです

今じゃよく
なんかの拍子に中国人が「ブッチギレ」して
手も足も出す暴力沙汰になった動画が紹介されますけど
私がいた時には
手も足も出すケンカはほとんどなかったなあ
(1回だけものすごいのに遭遇しましたが)

壮絶な口ゲンカはしょっちゅうありました
でも
手を出すことはほとんどなかった

確認したわけじゃありませんけど
「いかなる理由があっても
最初に手を出した方が全面的に悪いとされて
警察の厳しい処罰の対象になるから」
てな説もありました
(あくまでも説です)

でトロリーバスの運ちゃんらと
リヤカーのおじさんの口ゲンカですけど
双方が引き下がらないわけです

それでもって双方とも
周囲にアピールしながら自己主張をするのですね

中国人ってこういう状況になったら
周囲にアピールして自分を支持してもらおうとする場合が多い

ただ
これを初めてしまうと
なおさらのこと引っ込みがつかなくなります
自分の「メンツ」にかかわることになりますからね

ということで
中国人のケンカの作法を知りたかったこともあり
「この先、どういうことになるのか」と
ワクワク
もとい
はらはらしながら
少し離れた場所で見ていたわけです

しばらくすると
リヤカーおじさんが不利になってきた
とにかくトロリーバスの乗客は待たされているのですからね
「はやくどけっ!」てなことを叫び出す人も増えてきた

リヤカーおじさんも
「このままでは ますます不利になる」

悟ったのでしょうな

こんどはトロリーバスの乗客に向けて
ぶちかましました

舌を盛大にレロレロさせる北京の言葉だったので
とても聞き取りづらかったのですけど
こんなことを言っていました
「ぶつかったのはこいつが悪い(と、運転手を指さす)
私は絶対にきちんと進んでいた
ただ
これ以上ケンカをすると皆さんに迷惑をかける
私はそれを望まない
だから
私の方が正しいのだけど
ここは道を譲る
皆さんは私が正しいことを
皆さんには私が正しいことを
理解していただいたと信じる」
てなことを言って
地面にまだ散らばっていた野菜類を荷車に積んで
移動したのでした

う~む
「私は間違ったことはしていないが
皆さんのためにゆずる」
と主張すれば
自分の面子は失わずに済むよなあ

これが中国流か
なるほどなあ


海より深く納得したのでありました

写真は北京市中心部に近い
宣武門天主堂近くを走る
トロリーバス
1980年代の撮影という