ちょいと気になり「赤チン」について調べてみた | 如月隼人のブログ

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というわけで「赤チン」が頭の中に浮かんできて
いろいろと気になってきたので
調べてみたわけです

そうそう

最後の方で「中国語情報」もご紹介しますからね

 

ではでは
まずは「赤チン」という名称ですけど
いわゆる俗称ですよね

商品名としてはたしか
「マーキュロクロム液」だった

で「マーキュロクロム液」とは何か?
ということになるのだけど
これは商品名だそうだ

メルブロミン(Merbromin)という物質の水溶液

一種の有機化合物なんですけど
有機化合物については
IUPAC名という
一定の規則を適用した正式名称があって
この“ Merbromin ”のIUPAC名は
“ dibromohydroxymercurifluorescein ”
日本語版IUPAC名ならば
「2,7-ジブロモ-4-ヒドロキシ水銀フルオレセイン二ナトリウム塩」

これじゃああまりにも長いということで
メルブロミン(Merbromin)と呼ばれるようになった

IUPAC名は
「分子の構造を物質名にきっちり反映させる」
という考えで作られるので
ちょっと複雑な分子だとやたらと長くなる
だから社会で広く使われる物質の場合には
「通称」が登場する

これはよくある話です

でもって
「マーキュロクロム(mercurochrome)」だけどこれは
「マーキュリー(水銀)」と「クロム」の合成語だな
ただし、メルブロミン分子には水銀原子が1個入っているけど
クロム原子はないなあ

クロムっていうのは原子の状態によって
いろんな色になるから
ギリシャ語で「色」をあらわす「クロマ」にちなんでつけられた物質名
つまり英語の“ colour ”と同語源

恐らくは
メルブロミンに水銀が含まれていて
真っ赤な色をしているので
「マーキュロクロム」という名を思いついたのだろう
語感としては
「色つき水銀」てなところですかね

さてさて
「赤チン」という俗称ですけど
これは化学の視点からすると
とってもいいかげん

ヨウ素(ヨード)という物質をエタノールに溶かした薬(消毒薬)を
日本ではヨードチンキと呼ぶ
このヨードチンキの語源は
オランダ語の“ Joodtinctuur ”か
ドイツ語の“ Jodtinktur ”
googleの自動翻訳で音声を出したら
それぞれ
「ヨードチンクジア」
「ヨードチンクトゥア」みたいに聞こえる

この語の中に含まれる
“ tinctuur ”とか“ tinktur ”は
特定成分をエタノールか
エタノールと水の混合物に溶かしたものを言う
日本ではなまって略して「チンキ」と呼ばれるようになった

だからヨードをエタノールに溶かした薬は
ヨードチンキ
略して
ヨーチン

赤チンの場合にはメルブロミンの水溶液なので
本来ならば「チンキ」の語は使えないのだけど
「ヨーチン」と同様の消毒薬で色が赤い
ということで
「赤チン」と呼ばれるようになったわけです

「赤チン」が広まったのは何と言っても
消毒薬として製造原価が激安だったからだそうです

さてさて
子どもはいつの時代でも
すぐに膝をすりむくなんてけがをする
昔はほとんどの場合「赤チン」を塗っていました
でも今は赤チンを使わず
無色の消毒薬を使う場合がほとんど

なぜか?
ざっと調べてみると
こんなところみたいだ
【1】水銀が含まれていたこと
普通の使い方ならば問題はないのだが、1970年代に有機水銀による「公害病」が大問題になったので、赤チンに懸念を持つ人が増えた

【2】他の消毒薬が登場した
子どもが赤チンを喜んだのは痛くない事。ヨーチンはエタノールを使うので傷口にしみて痛かった。しかし、水溶液を使うので痛みのない消毒薬が登場。しかも無色透明だったので大人も安心して使うようなった

【3】原材料が入手不能になった
赤チンそのものに入っている水銀は健康に影響が出るような量ではないが、製造過程で環境に水銀が放出されることが問題になった。2017年8月には、水銀を使用した製品の製造、輸出入を規制する国際条約が発効して、赤チンの原料であるメルブロミンの輸入ができなくなった。日本で最後まで製造を続けていた三栄製薬も2020年に製造を終了した。

ということです

さてさて
「赤チン」を中国語で何というのか?
これも調べておこう

「红汞(hónggǒng ホンゴン)」でありました
「汞」っていうのは水銀のことだから
「红汞」は「赤い水銀」だから
おそらくは
“ mercurochrome ”
をどのように造語したかを調べて
意訳したのだろう

ちなみに「チンキ」だけどこれは
「酊」または「酊剤(dīngjì、ディングヂー)」

中国語をおやりの方なら間違いなくご存じだと思うけど
“ d ”の文字があっても
日本語の「ダ行」とは違う
中国語の発音とローマ字表記の話をすると
またまた長くなるのでやめるけど
日本語の「ダ行」よりずいぶん軽い感じ
私はある考えがあって「ダ行」のカナを当てはめているけど
人によっては「ティンチー」と書く場合がある

つまり
チンキは英語では“ Tincture (ティンクチャ―)”
この言葉の先頭部分の音を取って
「酊」
の文字を使ったのだろう

ただなあ
「酊」というのはもともと
べろんべろんに酔っぱらうこと
「酩酊」なんて言葉に使う文字だ

薬剤を「エタノール割り」した薬に
「べろんべろん」を表す文字を使うなんて
粋だなあ