3月5日に中国の全人代が始まります
と書いてみたのですけど
中国では「全国人民代表大会」を「全人代」とは略さないのですね
“人大”または“全国人大”と略します
ちなみに
「人民代表大会」は市や省などの地方単位でも開催されて
“××省人大”とか“××市人大”のように呼ばれます
「全国人民代表大会」の場合には
全国の大会を示すことが必要な場合には“全国人大”
全国の大会を示すことが明らかな場合には“人大”
とします
さてさて
中国ではなぜ“人大”と略すのか
そのためにはまず
中国語の“代表”という言葉を理解する必要があります
一般名詞として日本語に訳す場合には「代表」とするしかないのですけど
ニュアンスというか使い方がやや違います
中国語の“代表”には
「責任を持てる立場の」とか「正式の」とかいった
ニュアンスが日本語の「代表」より強いわけです
たとえば日本ではヘマをして顧客に迷惑をかけてしまった場合
ちょいと地位のある社員ならば
「わが社を代表してお詫びします」
なんて言っても
それほどおかしくないと思います
ただ中国だったら
「お前に会社前部を代表できるのか?」なんて言われても
おかしくはありません
かつて何かのイベントで
ある歌舞団の高級幹部があいさつをした際に
「我代表××歌舞団,……」(私は××歌舞団を代表して……)
なんて言ったら
そのあいさつを聞いていた歌舞団の別の幹部が小声で
「他代表不了我们歌舞団!」(アイツはわが歌舞団を代表できない!)
なんて言うのを
聞いたことがあります
まあ中国語の“代表”にはそれだけ
「重み」があるということです
さてさて
「全国人民代表大会」の“代表”は
漫然と使っている言葉ではありません
正規の手続きを経て“代表”の立場を得て
人民代表大会という会議で発言したり投票する権利を持つ人
つまり
日本の議会ならば「議員」に相当する
役職名です
さてさて
日本で「全国人民代表大会」を「全人代」と省略するのは
全体を「全国・人民・代表大会」と区切って
それぞれの頭文字を並べたわけですよね
ところが中国の場合
「全国・人民代表・大会」
と区切る感覚が強いようです
というのは
「人民」と「代表」がまず結合するからです
地方当局なんかが
“人民代表换届选举”といった通知を出すことがあります
これは任期満了にともなう「人民代表」の選挙を行うということです
「人民代表」がワンセットになった言葉なので
「全国人民代表大会」は
「全国の人民代表による大会」ということで
「全国+人民代表+大会」と区切れるので
“全国人大”あるいは“人大”と略すのが自然
という語感であるようです
(写真は2022年の全国人民大会の全体会議)