高野山に来た若い僧侶は、たまには羽を伸ばしたくなる。お金のある元気な僧侶は、大阪に繰り出して行ける。
寺生は、年間の休みは片手くらいの日数なので、大学に行っているふりをして大阪に行ったりする。
といっても、南海電鉄高野線で片道約2時間。往復4時間。朝8時過ぎに高野山を出て、16時迄に帰ってくるとすると、大阪の滞在時間は4時間しかない。
映画を一本見て、ごはんを食べたら帰る心配をしなければならい。それでも行きたいときは必死だ。
寺生の場合は、昼のお客さんが来ないことを確認した上で行かなければならない。私もそんな綱渡りを何度かした。
ところが、悪いことはできないもので、大阪でバッタリ師僧の奧さんと出会ってしまい、しどろもどろで言い訳をしたことがあった。すると、奧さんがおもむろに小遣いをくれたこともあった。