Catalog Number ?, 65g (Silver), 51mm, mintage ?
フランスの都市Toulouse:トゥールーズで開催された美術産業展示会の記念メダルであり
有冠のナポレオン3世皇帝(在位1852〜1870年)が描かれたメダルでもあります。
有冠ナポレオン3世メダルの中では最重量にして最大径です。
表のデザイン
これまで紹介した有冠ナポレオン3世メダルは4枚。
Engraver:彫刻師(メダル・デザイナーとも言います)は全て異なります。
肖像を見比べるため発行順に並べてみます:左上→右上→左下→右下。
1862 France Agriculture Encouragement Medal・今回のメダル
1869 France Clermont Horticulture Medal・1875 France Agriculture Encouragement Medal
容貌に微妙な違いがあり、それぞれ独特な雰囲気があります。
同一人物の肖像を異なる彫刻師で鑑賞できるのもメダルならではの楽しみです。
なお、顔の向きが異なる4枚目、肖像の下にBarreとありますが、Jean-Auguste Barre。
そして、彼の弟Albert Désiré Barreこそが
ナポレオン3世金貨・銀貨を発行したパリ造幣局の主任彫刻師でした。
ついでですから、メダルと銀貨も比べてみましょう。
非常に似ていますが、やはり、立体感はメダルの方が抜群です。
裏のデザイン
美術産業展示会の開催都市であるトゥールーズの紋章と王冠です。
Artsとartにsがあるのは従来のartと差別化するためです。
職人集団であったギルドに対抗して結成された王立アカデミーがartにsを付けたそうです。
参考:ビジネス戦略から読む美術史(新潮新書)
特に、絵画・彫刻など視覚的な美しさの表現はbeaux (beauty) arts:美術としました。
また、絵画・彫刻はルネサンス(14~16世紀)の頃からキリスト教会より離れ
市民革命(18~19世紀)の頃には王侯貴族・有力市民を相手とする産業となったそうです。
今回のメダルはこうした時代的転換を示す歴史的価値も有しているのです。