チューリッヒ歌劇場の『ニーベルングの指輪』第一夜『ワルキューレ』の感想を書く。
まずは演出。
回転舞台は『ラインの黄金』と同じで、舞台が適宜回転しながら物語が進む。
第一幕。
回転舞台の背景は白、中央に大きなトネリコの木。そこに焦げ茶色の服を着たジークムントが上手のドアから登場、ジークリンデは下手ドアから。ジークリンデが昔語りをしていると、ヴォータンが現れて木にノートングの剣を刺して出ていく。最後に背景中央に森が現れて兄妹はそこに逃げていく。
第二幕
ラインの黄金でも出てきた会議室のような舞台で、白服に甲冑をつけたブリュンヒルデとスーツ姿のヴォータンがいる。甲冑の兜は馬の形をしているので、これがグラーネ?
フリッカの登場、ブリュンヒルデの再登場も同じ舞台だが、そこから舞台が回転して今度は舞台いっぱいに太い木の深い森が現れ、物語が進む。
最後は、ヴォータンが自身の槍でジークムントを正面から突き刺して殺す。
第三幕。
ワルキューレ達は皆ブリュンヒルデと同じ姿。舞台が曲に合わせて回転し、おびえる白い服を着た英雄たちを追い回している。
ブリュンヒルデは他のワルキューレ達とは別室にいて、そこでヴォータンと対面。舞台が回転して大きな岩石が現れ、ブリュンヒルデが寝かされる。岩山が赤く光り、燃えていることを示すが、溶岩みたいで、ブリュンヒルデは溶けるんじゃないかと思ってしまった。
最後は、舞台が回転して、会議室のような舞台にもどり、ヴォータンは槍を壁に立てかけて、とぼとぼと上手に歩きながら幕。
ヴォータンの最後の悲しみはとても強く、失意のどん底にあることがわかり、思わず涙した。舞台も美しくて、大変良かった。
ただ岩山は舞台の大きさからして予想通りのものが出てきたが、ちょっとしょぼいなと思った。溶岩のように赤く光るのもちょっと。
歌手は、ジークリンデ役のダニエラ・ケーラーはよかった。フンディング役のChristof Fischesserはあまり記憶にない。ジークムント役のEric Cutlerが音程が不安定で残念だった。
ヴォータン役のコニエチュニーは快調。輝かしい声が響きわたる。ブリュンヒルデ役のカミラ・ニールンドは極めて美しい声で迫力も十分。こんなブリュンヒルデを聴けて感激。フリッカ役のClaudia Mahnkeも凛としてよかった。
なお、第三幕が始まる前に、黒服さんが出てきて、言っていることは分からないのだが、どうもワルキューレの一人にキャストチェンジが出た模様。舞台は元の人で、上手袖から代役が歌うような雰囲気。
ノセダの指揮は第一幕こそもっとオケをドライブしてほしいと思ったが、第二幕から快調になって、音も鳴らすようになり、ワルキューレの騎行はすばらしかった。これを待っていたんだよ。
オケもよく鳴らし、頑張っていた。大変良かった。
岩山の違和感はあったが、大変美しい舞台で、ヴォターンの悲しみの深さに涙した。いい演奏、いい舞台を存分に楽しんだ。
それにしても舞台転換はどうやっていたんだろう。会議室から深い森とか、岩山から会議室まであんまり時間がないよなあ。裏方さんはさぞや大変だったんだったことだろう。
それはさておき、次はいよいよフォークトのジークフリートの登場だ。