2024年5月チューリッヒ・ミュンヘン旅行3 『ラインの黄金』の感想 |   kinuzabuの日々・・・

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チューリッヒ歌劇場、ワーグナー作曲『ニーベルングの指輪』序夜『ラインの黄金』の感想を。

 

 

当初19:00開始だったが、直前に18:00開始に変更された。間違って19:00に行ったら大ごとである。ホールは開演1時間前に開くが、座席に着けるのは15分前。オケピットが狭いためか、楽器が最小限のようだ。


最初の舞台は、白い壁、白いベッドに白い服の乙女。回転舞台で現れる別の部屋も同じ装置で、部屋を行き来しながら軽やかに歌う。そこに黒い荒れた服のアルベリヒが現れる。黄金は指輪だけで、赤いケースに入っている(カルチェの箱に似ているらしい)。アルベリヒが黄金を奪って地下へもぐる。

ワルハラは絵で示され、ヴォータンはワルハラの絵を見ている。舞台には渋い高級家具が回転舞台で提示され、フローとドンナーはクリケットの格好をしているから、神々はイギリスの上流階級なのだろう。時代は産業革命ぐらいだろうか。

服の色は、ヴォータンは黒いスーツ、フリッカ、フロー、ドンナー、フライアは緑系。

巨人族は巨大なワルハラの絵の上に座って現れる。服は黒。チロリアンハットをかぶっているので≪スイスではない≫山の民を強調しているのかも。ファゾルトは、ワルハラの絵を破って神々の前へ出る。

ローゲの服は赤。荒れた服装。雰囲気は軽薄。ローゲといえばこうなるのか。

ニーベルハイムでは、ミーメがいかにもという隠れ頭巾を作り、アルベリヒがそれをかぶる。小人が黄金を運ぶ。ヴォータンとローゲが現れて、大蛇も、カエルも現れる。実に写実的。

天上に戻ると、黄金が積まれ、窓に立つフライアを実際に黄金で隠す。エルダは真っ白なドレスで別室にいて、ヴォータンにだけ世界の終わりを警告する。そして指輪を巨人族に渡す。

ドンナーのハンマーはクリケットのバットだが、振り上げるとともに、舞台中央の家具が開き極めて明るい光が現れて、新しい世界に変わったように感じた。最後は記憶があいまいなのだが、会議室のような広い舞台で、神々の皆でラインの乙女たちの歌を聴いていたのは覚えている。


ホモキの演出は、舞台を産業革命時代に変えているようだが、大きな読み替えはなく、美しく実に写実的な舞台。服の色で人物の属性を示し、見た目もわかりやすかった。一方で、回転舞台による頻繁な舞台転換や人の動きは、写実的ながら新鮮な雰囲気を与え、とても効果的だった。バックヤードは装置の入れ替えにさぞや大変だったことだろう。


歌手はヴォータン役のトーマス・コニエチュニーが最高。輝かしく、迫力がすごい。演技も上手い。

他には、ミーメ役のWolfgang Ablinger-Sperrhackeが雰囲気がよくて、声も役にぴったり。アルベリヒ役のChtistopher Purvesも力強く、ローゲ役のMatthias Klinkも歌も演技もすばらしい。

勉強不足で、コニエチュニー以外、名前を聞いたことのない人ばかりだが、全体的に悪い人はおらず、歌手のレベルは高い。

ジャナンドレア・ノセダの指揮は全体的に遅めで、爆発するときは迫力があった。ただ、オケの部分では、オケの音を分解してフレーズごとに違う楽器で細かに音を強調するので、全体を見通すことができず、不満が大きかった。あまり鳴らさないし。

オケはこんな指揮を忠実に演奏していた。どんなレベルなのか不安だったが、がんばってくれたと思う。


指揮に多少難はあったが、大変楽しめた公演だった。これからの3作もこのレベルを維持してほしい。