2024年1月パリ・ウィーン旅行8『キャンディード』の感想 |   kinuzabuの日々・・・

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アン・デア・ウィーン劇場でバーンスタイン作曲オペレッタ『キャンディード』を観た。2024年2月3日。






アン・デア・ウィーン劇場といっても、本体は修理でお休み中、ミュージアムスクエアにあるホールEでの公演だった。後方の最安席を買ったがよく見えてよく聴こえて大変良かった。



今回の旅行は知らない、あまり演奏機会のないオペラが多く、予習が大変だったが、いちば大変だったのがこの『キャンディード』

もともとはブロードウェイミュージカルで、1956年の初演後何度も改定して、その中の管弦楽版。聴いたCDとは違う曲が何度か出てきて、予習した筋とも違った部分もあったが、今回の旅行で一番楽しかった公演だった。

 

この舞台、当初は客の入りはよくなかったようだが、評判がよくて私が観た最終日は大入り満員だった。



筋は大変複雑なのだが、おおざっぱに言うと、

キャンディードは楽観主義を教わっている。戦争に巻き込まれても、罪人として罰を受けても、パリで落ちぶれた愛する人に会っても、アメリカに渡って総督を殺害しても、エルドラドにたどり着き金をもらっても、沈没するとわかっている舟に乗って沈没しながらも、最後にヴェニスにたどり着き娼婦になった愛する人やその他の知人に再会する。でもこれらの出来事は人生に必要だっと思い、最後はヴェニスの近くに農場を買ってそこで暮らす決意をする、というもの。

パリで落ちぶれた愛する人が、超絶アリア「Glitter and be gay」を歌うクネゴンデである。

この複雑な筋をナレーターが話して説明しながら進行し、派手な場面を作り上げて、歌になり、踊りになり、舞台になる。そんなオペレッタ。


Lydia Steierの演出は、大騒ぎを楽しく明るく、歌と踊りと合唱と衣装と装置と照明で気分を高揚させて、思いっきり楽しませてくれる。舞台の枠に電球をいっぱい並べ、光でも舞台を盛り上げる。罪人になって処刑される人を見ても群衆が楽しむし、沈没するとわかっている舟で出航するキャンディードを見送る場面も楽しい。

まあ、音楽がそうなっているわけだが、それを視覚的にも徹底して楽しく表現し暗い場面はほとんどない。

しっかりした管弦楽の付いたオペレッタを、迷うことなくミュージカルのナンバーに仕立て上げた感じか?ミュージカルってみたことないけど。


でも、パリのワルツは涙が出るほど美しかった。


歌手は、凹凸なく皆すばらしいが、クネゴンデ役のNikola Hillebrand の「Glitter and be gay」が最高だった。激しい高音は性的な絶頂という演出。これも面白おかしく提示する。全然悲壮感がない。

 

老婦人役のHelene schneidermanの身の上話のアリアもいいし、オランダ人役他のMark Milhoferの「Bon Voyage」も耳に残る。

アーノルド・シェーンベルグ合唱団の合唱も大変すばらしい。歌はもちろん、踊りも頑張る。ダンサーの踊りも舞台を締める。

ナレーターの声もすばらしく、よく通っていたが、すみません、ワタシエイゴワカリマセン。やっぱり周りの人が笑っている中で一人わからず下を向いているのはつらい。

マリン・アルソップの指揮は大変すばらしく、思いっきり鳴らして、楽しくも美しい音楽を存分に味合わせてくれた。ORFオーストリア放送交響楽団のオケもしっかりついてきて、バーンスタインの醍醐味を十分に味わえた。


とっても楽しく、見た後も頭の中で音楽が止まらずニヤニヤする、そんな楽しく明るい舞台を楽しめた。こんな舞台に接したのはあまり記憶にないが、ある意味衝撃的だった。ほんとに楽しかった。