演奏会第三陣は、パリ・オペラ座のヘンデルの歌劇『アリオダンテ』。会場はガルニエ宮。2023年5月7日。
題名役にエミリー・ダンジェロという若いメゾが配役され、ポリネッソ役にクリストフ・デュモー。他は知らない歌手だなあ。
物語は、スコットランドの王位と王の娘ジネーブラを授けられるアリオダンテを陥れようとポリネッソが、ジネーブラが不貞を働いているようにだます。それを見たアリオダンテは絶望するが、弟ルルカーニオが助け、ジネーブラの無実を晴らす。アリオダンテが王位とジネーブラを授けられて幕。
今回の演出は、男性がスカートを履いていて、バグパイプも出てきて、もろスコットランド。その緑色に塗られた王宮の部屋の中で事件が起こる。なぜ緑色なのかは知らない。
第一幕は、皆さん声が出てないように聴こえたが、第二幕からは普通に聴こえたので、こっちの耳が慣れてなかったのだろう。第二幕以降はすばらしかった。
声で一番よかったのは、ダリンダ役のTamara Banjesevic。美しく通る声で、声量もばっちり。題名役のエミリー・ダンジェロは声量はまずまずで、男性らしい声。上背があって体形もいいので、英雄役にぴったり。女性客にもてそう。3幕の聴かせどころドポ・ノッテもよかった。
個々の歌手の特徴はあまり覚えてないが、みんな音程が正確で声も通って歌手のレベルが高い公演だった。指揮のハリー・ビケットもテンポがよくて、ピットに入っていたThe English Concertも美しかった。気持ちのいい音楽だった。
ロバート・カーセンの演出は、緑一色の壁の装置を、奥行きを変えたり、ジネーブラの寝室や王の執務室を作ったりしていた。幕の最後に出てくるバレエは緑の広間を奥くまでいっぱいに広げた広間で、スコットランドのスカート姿のダンサーとドレス姿のダンサーが踊るものだった。
演出の最後は、主要人物が、舞台上でアリアを歌い、観客に見られながら、スカートやドレスを脱ぎ捨て、Tシャツなどラフな姿に着替えるもので、さらに最後の合唱は、緑の広間が歴史博物館に代わり、今までの出来事とは場違いな観光客の集団が現れて歌った。一気に現代になり、アリオダンテはスコットランドの歴史上のできごとということなんだろうか?
また、暑苦しい王位など地位や敵味方を捨てて、楽しく生きようということもあるかもしれない。
やっぱり演出があるっていいなあ。いろいろ考えさせてくれるし、特にパリは華やかなものが多い。日本の演出付きオペラとはレベルが違うから、渡欧しないといけないんだよね。