東京交響楽団 R・シュトラウス作曲歌劇『サロメ』の感想 サントリーホール |   kinuzabuの日々・・・

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東京交響楽団のR・シュトラウス作曲歌劇『サロメ』演奏会形式公演に行ってきた。会場はサントリホール。2022年11月20日。



配役表


なんといっても題名役にアスミク・グリゴリアンを連れてきてくれたことに大感謝。この人の実演を是非とも聴きたかったので、東京まで遠征した。他の人はトマス・トマソンをこの5月に『エレクトラ』のオレストで聴いたぐらい。

直前に3人もの配役変更があって、うち2人はPCR陽性だという。こんな公演に接したのは初めてで、いまだコロナが席巻していることを実感した。公演が無事に実施されてよかった。


さて、舞台上はオケでいっぱい。歌手のための椅子を置くのも最低限。『サロメ』を聴く期待が膨らむ。

最初はオケだけで始まったので、あれ?と思ったらすぐナラボートが上手から現れた。代役だが、雰囲気はいい。

そしてサロメ登場。グリゴリアンの美しい体形(それを強調する衣装)に驚かされるが、歌うと美しい声が会場にびんびんに響きわたって、その迫力にさらに驚かされる。どうやったらあの体からこの声が出せるのか?声もいいけど表情も役になりきっている。それがまたすごく美しい。まるで、ギリシャ彫刻!

ヨカナーン役のトマス・トマソンもすごかった。極めて強いよどみのない声。そして高貴。こんなヨカナーンを聴きたかった。後半少し息切れした印象だけれど、問題なし。

ヘロデ役のミカエル・ヴェイニウスもすばらしい。声もよく出ていたし、ヘロデらしいいやらしい部分がしっかりと現れていた。

ヘロディアス役のターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーもよく声が出ていたけれど、もっとヒステリックでもいい。

これだけの外国人歌手が出てくると、申し訳ないけれど日本人歌手の弱さが目立つ。ナラボートの岸浪さんはよかったけれど。その差が歴然と表出した印象。

指揮、オケはすばらしい。咆哮もすごいし、繊細な部分もよい。7つのベールの踊りの迫力もよかった。複雑な管弦楽をしっかり演奏し、R・シュトラウスの世界を作り上げていた。

さて、グリゴリアン、時間が過ぎるとともに、その迫力を増し、7つのベールの踊り以降はさらに存在感を増していた。最初から存在感抜群だったんだけれど、それがずんずん増していく。ヒステリックにならず、声も乱れず、美しい声を轟かせ、心を掴んで思いっきり揺さぶってくる。すごいわほんまに。

最後の音が鳴って、会場は真っ暗に。でもすぐに拍手が出た。まあ、しかたないか。


それにしても、今回の『サロメ』、すごかったわ。ほんま聴きに来てよかった。なんといってもグリゴリアン。評判にたがわずすばらしいというか恐ろしい歌手だね。ぜひまた聴きたい。他の歌手もよかった。いい歌手をそろえてくれたもんだ。管弦楽もすごくよかった。聴きごたえのある演奏会だった。


それと、サントリーホール。今まで音響が外れの席ばかりだったけれど、今回1階席前方に座って、やっとあたりの席を引いたようだ。残響がすっきりして音がこもらず、まっすぐに音が聴こえる。これならいい。ということはこのホールは高い席にしないといけないわけか。まあ、あまり来ることないからいいけどね。