びわ子「みなさーん!こんにちわーーー!」
おおつ「みなさん、こんにちは。今日はびわ湖ホールにワーグナーの歌劇『ローエングリン』の公演に来ています」
びわ子「ひさしぶりやね、ワーグナーのオペラ」
おおつ「抜粋は聴きましたけどね。でも全曲となると、昨年の『神々の黄昏』は、感染症の影響で、無観客、ネット配信になってしまいましたから、ホールで実演に接するのは一昨年の『ジークフリート』以来です」
びわ子「で、やっと実演と」
おおつ「でもまだ本格的に舞台上演とはいかなくて、セミ・ステージ形式というオーケストラも歌手、合唱とともに舞台に上がって簡単な装置での上演になるそうです」
びわ子「この前、東京でみた『リナルド』の時みたいなもんかいな?」
おおつ「そうですね、その後ろに合唱が入るという形でしょうか」
びわ子「で、あらすじは?」
おおつ「窮地にあるお姫様を助けに白鳥の騎士がやってきて悪者を退治します。でも名前を聞いてはいけないという条件がありました。何故か残っている悪者にけしかけられてお姫様は騎士に名前を聞いてしまいます。騎士は仕方なく名前を名乗り、懸案を解決してお姫様の元を去るというお話です」
びわ子「なんで退治された悪者が残っとんねん?」
おおつ「うーん、でもそれがないと話が進みませんよね。では会場に行きましょう」
(3月6日、3月7日の公演を観ました)
おおつ「さて、いかがでしたか?」
びわ子「舞台の前にあった黒い布で囲われた大きな箱はなんなん?」
おおつ「あれはプロンプターボックスですよ。幕ごとに人が出入りしてましたし、箱の舞台側に楽譜が置いてありました。ってそういう話じゃなくて」
びわ子「なんかすごかったわ。歌手もみんないいし、オケも迫力が凄いし、合唱もきれいだし、いうことないやん!」
おおつ「そうですね、両日ともすばらしい公演でしたね。私にとってはもう理想に近い『ローエングリン』でした。期待はしてましたが、それを大きく超えるといいましょうか、生きててよかったレベルの公演でした」
びわ子「おお、そこまでいったか、よかったな。で、歌手とかどうやった?あたしは伝令がよかった」
おおつ「まず、ローエングリン役ですが、1日目の福井敬さんは声量がすばらしく、音程も安定。ただ、歌い方が型にはまった感じがして少し違和感がありました。2日目の小原啓楼さんは、輝く美声で、だんだん調子を上げて最後は大変すばらしいグラール語りでした」
びわ子「グラール語りってなんや?」
おおつ「ローエングリンが自分の素性を明かすときに聖杯の騎士と言いますが、聖杯をグラールというのです。来年びわ湖ホールで上演される『パルジファル』はそのあたりの物語です」
びわ子「そりゃ来年が楽しみやな。次はお姫様?いい歌だったよね」
おおつ「エルザは、1日目の森谷真理さんは激しく強い。2日目の木下美穂子さんは柔らかく、優しい。どちらも決して崩れることがない。いい歌でした」
びわ子「確かにタイプは違ったな。ところで、3幕なんだけど1日目はウェディングドレスで出てきたのに、2日目は違ったよね」
おおつ「2日目のエルザ木下さんは、直前の代役でしたから。あくまで私の想像ですが、衣装が間に合わなかったのかもしれません」
びわ子「それはあるかな。次は王様?1日目の王様の声が耳から離れん」
おおつ「ハインリヒ王は、1日目の妻屋秀和さんが大変すばらしかった。高貴な声をあふれんばかりに響かせてくれました。二日目の斉木健詞さんも安定していてよかったです」
びわ子「うんうん、妻屋さんね。次は悪男?」
おおつ「テルラムントは、1日目の小森輝彦さんは、ちょっと弱いかな。悪くはないけど、周りが強すぎ。2日目の黒田博さんは、強い歌で、悪の権化でしたね。すばらしい。
びわ子「2日目の悪男はよかったな。次は悪女?どちらもすごかったんだけど」
おおつ「オルトルートは、1日目の谷口睦美さんはしっかり声が出ていて不満はなし。2日目の八木寿子さんがすばらしくて、声の強さに圧倒されました。強いのに柔らかく崩れない。2人とも2幕の聴かせどころでしっかりオケを突き抜けた渾身の歌が聴けてうれしかったです」
びわ子「うんうん、3幕もよかったぞ。最後は伝令?すてきやわあ」
おおつ「伝令は、両日とも大西宇宙さん。張りのある美しい声で会場を満たしてくれました。すごいの一言。伝令役って結構歌う場面があるのですね。これを連日歌うのは大変だったと思います」
びわ子「歌もいいし、かっこいいし」
おおつ「声だけでなく、立ち姿もきりっとしていて大変良かったですね」
びわ子「次は合唱?きれいだったよな」
おおつ「合唱は、びわ湖ホール声楽アンサンブルを中心としたメンバー。とても美しかった。マスクして、人数も少なくて、迫力に不満がないわけではないですが、この悪条件でこれだけ頑張ってくれたらもう言うことなしです。演技もあって劇の場面の雰囲気をうまく表現してくれました」
びわ子「舞台の出入りもカッコよかったな。次は指揮?とてもよかった」
おおつ「指揮は沼尻竜典さん。1日目の1幕前半こそ少し平板な印象だったのですが、それ以降はもう感激の嵐。疾風怒濤の音楽が次から次へとかぶさっていきます。もちろん静かな場面も繊細。各幕の最後や3幕の場面転換の音楽ではバンダ含めて混乱することなくしっかり手綱をひきながら圧倒的な音楽を作り出してました。ほんとうにすばらしい」
びわ子「よう体動いとったわ。指揮者って体力いるよな。オケは?すごかったんやけど」
おおつ「管弦楽は京都市交響楽団。このオペラにこれ以上ないほどすばらしい音楽。弱音から強音まで制御され、静けさや迫力もすごい。2日目は特によくて底から湧き出してくるような力強さを感じました。京響の底力を存分に発揮してくれました」
びわ子「やっぱ京響ってすごいね。舞台はどやってん」
おおつ「ステージングは粟國淳さん。背景を色々変えたり、人を少し動かすだけで、私には公演への効果があまり感じられませんでした。ただ、合唱に演技させて雰囲気を出しているのは大変効果的で良かったです」
びわ子「いろんな場面で合唱が動いていたな。でも、舞台は今はね」
おおつ「ソーシャルディスタンスも必要ですし、できることは限られますからね」
びわ子「いやまあ、いい公演を2回も観て、たのしかったね。おなかいっぱい」
おおつ「楽しかったですね。私は一週間前からCDを聴いたりして盛り上げてきたので、楽しさもひとしおです。でもその分、終わってしまって寂しいですね」
びわ子「来年もびわ湖ホールでワーグナーやるって言ってたよね」
おおつ「来年は『パルジファル』です。ワーグナー最後のオペラで、上演時間5時間の大曲です」
びわ子「それも、今回みたいに楽しめそうなん?」
おおつ「『ローエングリン』みたいに波乱万丈ということはないのですが、美しい音楽であふれています。私はこのオペラを初めて聴いたときは大感激して、それからワーグナーを、オペラを観るようになりました。私がオペラを観るきっかけとなったのが『パルジファル』なのです」
びわ子「ふーん、ということは思入れがあるということやね」
おおつ「はい。外国でもとても印象に残る公演を観ましたし、思い出が詰まっているオペラです」
びわ子「それやったら、来年もいい公演になるとええな」
おおつ「そうですね。沼尻さんと京響はもう信じてますので、キャストがどうなるかとても興味があります」
びわ子「じゃあ決まりやな。来年もびわ湖で『パルジファル』を観に行きましょーねー」
おおつ「絶対行く!!!」