テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナのコンサートに行ってきた。ヴァイオリン独奏はパトリツィア・コパチンスカヤ。会場はフェスティバルホール。2019年2月14日。
今話題のクルレンツィスが主兵を連れて来日公演。どんな演奏をしてくれるか大変楽しみにしていた。
プログラムは、オールチャイコフスキープログラムで、前半はヴァイオリン協奏曲、後半は交響曲第6番「悲愴」。
最初はヴァイオリン協奏曲。
コパチンスカヤのヴァイオリンは、自由奔放で、好き勝手し放題。裸足で跳ね回るし、子供がヴァイオリンというおもちゃで遊んでいるみたい。そんな音楽に、オケがぴったりと合わせる。まるで、コパチンスカヤが指揮者のようだ。そう思わせるようにクルレンツィスが振っているのだろう。
こんな音楽が結構好きだったりする。次は何をやってくるのかわくわくした。でも、第二楽章冒頭で、ヴァイオリンの部品?を床に落としてから、音程の美しさが変わったような気がした。勝手し放題なのは変わらないが。ちょっと残念かな。
藤倉大のKusmetcheという曲のアンコールがあった。
後半の「悲愴」
こちらは、チェロなど一部を除き噂通りの立っての演奏。管には席が準備されていた。
ゆっくりとはじまった。あまり何もせずに淡々と。事前に期待していたものは何もないなあ。というか、前半のコパチンスカヤの大混乱から比べると、おとなしくなったというべきか。ただ、密度というか集中力はすごいものがあった。指揮者が引き出しているのだろう。
特に、弦の大健闘を見せつけられた。それに比べると金管が弱く感じた。もっとも、弦五部が17-15-13-14-9という大所帯なので、弦が強いのは仕方ないか。金管を倍管にすればよかったのに。6人いるホルンも弱いが、席のせいかもしれない。それにしてもなんだよ、チェロ14人て。
第3楽章最後の盛り上がりは凄かった。そこに至るまでの過程を十分に考えて構成し、最後の大爆発にうまくつなげていたと思う。ティンパニがすばらしい。
第4楽章は弦の一人舞台というか、美しかった。最後に音が消えてから、指揮者は姿勢を崩さない。客席も拍手をしない。この状態が1分ぐらい続き、指揮者と聴衆のどっちが先に折れるか、という感じだった。まさに我慢比べ。結局、指揮者が折れてすぐに大拍手。
オケのアンコールはなかった。
なかなか良い演奏を聴けたと思う。特に集中力がすばらしい。曲に臨むテンションの高さは、CDのそれには及ばないが、実演では十分だろう。ただ、曲の流れに浸っていると、突然、そこから引き離されたりもする。これは事前に変な演奏とは聞いていたので、想定内かな。いや、もっと変な演奏を聴きたかった。
変な演奏という面ではコパチンスカヤの大活躍が光る。舞台の出入りには、赤いスリッパをはいていいた。どこぞで借りたのか?
ということでよいコンサートだった。いろいろ話題になるだけはある。ただ、話題先行という感じもする。指揮者もオケも若そうだし、これからも伸びていくのだろう。さらなる成長を見守っていきたいと思った一夜だった。