ヴァレア・サバドゥス&コンチェルトケルンのコンサートの感想 京都コンサートホール・ムラタ |   kinuzabuの日々・・・

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ヴァレア・サバドゥス&コンチェルトケルンのコンサートに行ってきた。会場は京都コンサートホールのアンサンブルホール・ムラタ。2019年2月9日。



注目のカウンターテナーということで聴きに行った。会場は8割ぐらいの入りか?曲目は以下。




20人ぐらいのオケが出てきて、コンマスが東洋人女性。あれ、コンマスは急病で代わったけれど、西洋人のはずじゃなかったかな。

それはともかく、まず合奏。ガサガサした音で、古き良きバロックオケという感じ。テンポは快調。


『セルセ』のオンブラ・マイ・フでサバドゥス登場。背の高いお兄ちゃんでにこにこ笑って何度もお辞儀をしている。

そんな口から出てきた声は、繊細で優しく極めて美しい。空を切る鋭さより、真綿に心地よく包まれる感じか。小さい声から同じ音程で大きな声へ伸ばすところは美しさに呆然。体全体からあふれるような美声を振りまいていた。

一曲目からこれかよ!

ジャコメッリはあまり覚えてないが、ヘンデルの『リナルド』からの二曲も美しかった。よく知っている曲だけに、感激もひとしお。「愛しい妻、愛しい人よ」は、しみじみしっとりと、「風よ、暴風よ、貸したまえ」は、ほとばしる熱情が存分に表出されて、もうメロメロ。


休憩後は、オケの合奏が全く変わった。キレが良く、鋭く切れ込む。前半はチューニングの問題だったのかもしれないが、この変わり様にはびっくりした。

カルダーラ、ポルポラも快調で、どうすればこんな美しい声を繊細かつ大胆に出せるのかと思った。一曲ごとに芸の深さにうなった。

管弦楽は、ヴィヴァルディの2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲が秀逸。特にヴァイオリン独奏の平崎真弓さんのコンミスとしてオケを掌握しつつ、独奏のキレの良さに感服した。小さな(というより周りが大きい)体を目いっぱい使って、激しい曲を一点の曇りもなく演奏しきった。


アンコールは3曲。

一曲目は「ファリネリ」と紹介していた。知らない曲で穏やかに終わった。

二曲目はヘンデル『セルセ』から三幕のアリア「Crude furie degl'orridi abissi」。すばらしい!迫力満点で力強いのに繊細。前半に比べて声が良く出てのびやかに歌っていた。めくるめく嵐の世界。ヘンデルの極致。もうたまりません。

三曲目は「初恋」と紹介していた。日本語で歌っているようだが、あまりわからない。でも美しい。しっとりとした曲を優しく歌ってくれると、ほんとにこころが洗われる思いだ。


いいカウンターテナーの歌を聴けた。昨年聴いたファジョーリの迫力とは違って、繊細で柔らかい歌を聴かせてくれた。といって、迫力も十分。きめの箇所の声量はすごいものがあった。収容人員500人という小さなホールで聴けたことも大変良かった。

サバドゥスは、アンコールを日本語で紹介するし、ずっとにこにこ笑って、曲の始まり、終わりにはなんども礼をしてとても腰が低い。ステージマナーも好感度大。

オケも後半は大変よかった。コンミスの踏ん張りが演奏のすばらしさに大きく貢献したと思う。

ということで、とてもよい歌を聴け、管弦楽を聴けた。こういうコンサートを聴けて幸せ。思い返すと、カウンターテナーのコンサートで、外れを引いたことがない。また、よいカウンターテナーを聴きたいと思ったコンサートだった。