ハーディング指揮パリ管弦楽団大阪公演の感想 ザ・シンフォニーホール 2018年12月19日 |   kinuzabuの日々・・・

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パリ管弦楽団の大阪公演に行ってきた。会場はザ・シンフォニーホール。2018年12月19日。

 

 

指揮はダニエル・ハーディング、ヴァイオリン独奏はイザベル・ファウスト。
曲目は、ベルクのバイオリン協奏曲とマーラーの交響曲第1番。

ハーディングは、札幌で氷道に滑って足を骨折したということで、車いすで登場。指揮台に上るのも一苦労だった。もちろん椅子に座っての指揮。


早速、ベルクのバイオリン協奏曲。

なんといっていいか、つかみどころがない曲という印象。もう一つかなと思っていたら、最後にとっておきの場面が。バイオリンの単音を延ばすのに合わせて、オケがどんどん音を紡ぎだし、はじけるように終わった。ここを聴けただけで十分だったかもしれない。

バイオリンのアンコールがあって、クルタークのサイン・ゲーム・メッセージより。これもつかみどころのない曲だった。頭に?マークがいっぱい浮かんだ。


休憩後は、マーラー。

これがむっちゃすごい演奏。曲にあまたある特徴あるフレーズをそれぞれ取り出し、自在なテンポと楽器ごとの考え抜かれた音量で、そのフレーズと奏でる楽器を浮かび上がらせる。この曲にこんな音があったのかと驚きの連続。管弦楽の協奏曲といった感じか。マーラーなのにこのストイックさはなんなのだろう。

これだけだと、ぶつ切りで分析的な演奏になりそうだが、曲はしなやかに連続し、マーラーのカタルシスも十分。でも、何度も聴いたマーラーとは全く違う、異次元の世界がそこに出現した。すごい体験!


最後にアンコール、エルガーのエニグマ変奏曲より第9変奏ニムロッド。

重厚で、オーケストラの合奏力に目を見張る演奏。マーラーと全く違って、壮大で、管弦楽を大いにドライブし、大変楽しめた。

マーラーで大変刺激的な演奏を味わったけれど、こちらは大変正統的な管弦楽。マーラーで見た夢が、アンコールで覚めて、異次元の世界から自分の元の世界に引き戻されたような感じがした。


それにしてすごいマーラーを聴いた。今まで聴いてきたものとは何だったのか?世界は決して固定ではない。オペラ、特に演出ではよくある話だけれど、交響曲の演奏で、そういう事実を目の当たりにするとは思わなかった。ハーディングは視覚ではなく、聴覚で実現するとは、もう人間業とは思えない。

もちろん、パリ管のすばらしい管弦楽があってこその恐るべき演奏だろう。木管のうまさは舌を巻いた。弦もすばらしかった。異次元の指揮に応える管弦楽。まさに理想的だろう。

こんな演奏会にはなかなか出会えないと思う。ハーディングとパリ管に大阪に来てくれて感謝せずにはいられない。またこの組み合わせで来日してくれることを願っている。