マーラー作曲交響曲第8番『千人の交響曲』緊急特別公演の感想 びわ湖ホール 2018年9月29日 |   kinuzabuの日々・・・

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大津のびわ湖ホールでマーラー作曲交響曲第8番『千人の交響曲』の【緊急特別公演】を聴いてきた。2018年9月29日。

 

 

指揮は沼尻竜典、オケは京都市交響楽団、ソリストはびわ湖ホールに縁のある人たち、合唱団はこの公演のために集められた人たち。

この公演は、びわ湖ホールの開館20周年を祝うために、9月30日(日)の実施で企画されたものだったのが、当日は台風の影響が避けられないため、急遽、前日29日の16時から緊急特別公演として実施されたもの。

開演前の沼尻さんの挨拶によると、オケや合唱団の練習も進み前日でも公演ができるのではないかと考えて夜にホールにメール、翌午前中にホールで検討して、開催決定したとのこと。そして28日の16時前にはツイッターで告知。短時間にどれだけの調整がされたのかと考えると、ホールの人の大変さは計り知れないものだろう。

その結果、以下のような開催概要が告知された。

1)座席指定券を持っている人は29日,30日ともに鑑賞可
2)29日は自由席を発売し、座席指定券を持っている人が座った後に、空いている席に座る
3)30日の公演の実施は、30日朝10時までに判断する。

通常の主催公演と同様、大津駅とのシャトルバスもあった。

しかし、残念ながら、29日の公演が始まる前に、30日の本公演の中止が発表された。おそらく、JR西日本が琵琶湖線を30日12時までに止めることを発表したからだろう。


さて、緊急特別公演開始。

沼尻さんのテンポは、もう一つ私には遅くてぬるい。これでやるのかと思ったら、だんだん手綱を締めて、気持ちよくドライブしていく。祭典の華やかさがもっとあっていいかなとは思うけど、着実にじっくりと進行していった。

歌手は、横山恵子さんの迫力はいいけれど、高音はどうしても好きになれない。砂川涼子さんはこんなに華奢な容姿だったかと思ったけれど、声は十分で安定。谷口睦美さんもしっかりした歌。竹本節子さんは重心が低い高貴な声。『ジークフリート』のエルダが楽しみ。幸田浩子さんは、3階席に登場。一瞬で会場内を浄化して去って行った。

清水徹太郎さんは、頑張っていたが、オケ、合唱にかき消されること多し。この人が歌う時に限って、バックの音量が大きい気がする。黒田博さんは深い声で大変すばらしかった。伊藤貴之さんもオケ、合唱にかき消され気味か。

オケの京響は、130人規模らしい。エキストラも多いためか、いつもの安定した京響とは違っていたような気がする。随所で音が乱れる。でも全体としては十分に聴きごたえのある演奏だったのではないかと思う。

合唱は大変美しい。天上からの声が聞こえるとすれば、こんな羽のような声かもしれない。合唱230人少年合唱44人だそうだが、これだけの人数をよくまとめたものだと思う。大変すばらしい。

このような音楽が、第一部で快活で迫力ある音楽を、第二部でじっくり始まって、緊張感を保ったまま徐々に盛り上げていき、最後に有終の大爆発で終わった。すばらしい1時間半。最高に痺れた。


今回は緊急特別公演ということで、800人ぐらいの客の入りだったらしい(京都新聞による)。舞台上も、合唱に何人か抜けが見えて、こんな急な公演のむつかしさというものを感じた。でも、前日の告知にもかかわらず、これだけの客が入ったというのもすごいことだろう。

 

私が台風の進路予想を見ていた時、延期も難しいだろうし、これはもう無理だなと思ったその時に、緊急特別公演の案内があって正直びっくりした。前日の16時に前倒しなんて前代未聞。予想だにしなかった。すごいことだと思った。この公演の実現のために多くの方々が走り回ったんだろうなと漠然に思った。

その結果すばらしい公演になった。400名に及ぶ出演者の準備は報われた。知事には来てもらえなかったが、びわ湖ホールの20周年も祝うことができた。大変良かった。

そして、なにより、この公演のために走り回った数々の人たちの苦労も報われた。感謝してもしきれないほど。こんな公演を実現してくれて本当にありがとうございます。音楽もすばらしかったけれど、正直今回の公演で一番感動したのはここかもしれない。