ロイヤルオペラ モーツァルト歌劇《ドン・ジョヴァンニ》の感想 兵庫芸文2015年9月23日 |   kinuzabuの日々・・・

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みや子「みなさーん!こんにちわーーー」

にしの「こんにちは」

みや子「今日は、西宮のゲーセンにきてます!」

にしの「ゲーセンじゃなくて兵庫県立芸術文化センタね。開館10周年だそうです。今日は、その記念行事の目玉、ロイヤルオペラハウスの引っ越し公演、モーツァルト作曲の歌劇《ドン・ジョヴァンニ》です」

みや子「まだ10年しか経ってへんの?もうずっと前からあるみたいやわ」

にしの「そうですね、今の関西のホールでは公演の質の高さが群を抜いてますから、そんな印象を持つのかもしれません。これで大ホールの音響さえよかったら・・・」

みや子「ところで、今日の話はどんなん?」

にしの「簡単に言うと、女好きで放蕩し放題の騎士ドン・ジョヴァンニがその素行をあたらめないので、地獄に落ちる、という話です」

みや子「簡単すぎるわ。これじゃあ3時間持てへん」

にしの「とても美しいアリアがたくさんちりばめられてますから、それを聴いているだけでうっとりしますよ。それでは行きましょう」




(全幕を観ました)




にしの「いかがでしたか?」

みや子「終わってから会場総立ちやったな」

にしの「そうでしたね!皆さん大変満足したご様子でした」

みや子「関西に、ここんとこ、このレベルの外来オペラが来てなかったからとちゃうんか?」

にしの「そういうこともあるかもしれません・・・でも、いい公演でしたよね」

みや子「うん、よかった。しかしまあ、これだけきれいなアリアが続くもんやな。3時間があっという間やった」

にしの「でしょ?いろいろ名前が付けられているんですよ。カタログの歌、シャンパンの歌、薬屋の歌など。歌手はどうでしたか?」

みや子「みんなうまかったよ。あれだけ人がたくさん出ているのに、もう一つの人っていなかったな」

にしの「そうですね、ドン・ジョヴァンニのダルカンジェロは格調高く、レポレロのエスポージトは明るく、ドンナ・アンナのシャギムラトヴァは深刻に、ドン・オッタ―ヴィオのヴィリャゾンは誠実に、ドンナ・エルヴィラのディドナートは神経質に、ツェルリーナのレージネヴァは愛らしく、マゼットのローズはまあこんなもんか。みなさん声はよく出てました」

みや子「不満はすくなかったな」

にしの「私はいくつかあって、1つめは、皆さん一人一人は声も出て、役としてもあっていたのですが、4重唱とか5重唱とかになるとばらばらになったように思いました。オペラで重唱はとても重要なので惜しい。また、ディドナートは声的には他の人たちから少し浮いているようにも感じました」

みや子「贅沢なやっちゃ。つぎは?」

にしの「2つ目は、ヴィリャゾンは一幕のアリアが苦しかったですね。東京でも不調という話でした。とはいえ、今できる範囲のことを精一杯やるという強い意思が伝わってくるようなギリギリセーフの歌でした。2幕は一転して余裕のある歌でブラボーでしたよ」

みや子「確かに1幕はハラハラしたな。で、つぎは」

にしの「3番目はレージネヴァの1幕『ぶってよマゼット』の歌が不満でした。といっても、期待が高すぎただけで、他の歌手並みには歌っていました。彼女の声からほとばしる圧倒的な輝きが少なかったという印象です。出場のときの合唱も、2幕の薬屋の歌もとてもよかった」

みや子「不満なのか、ほめているのかどっちやねん!」


にしの「演出はいかがでしたか?」

みや子「主役のおっちゃんが、壁の真ん中で歌った時、絵がくるくる回って目が回ったよ」

にしの「あれは迫力ありましたね。シャンパンの歌の背景画像は、音楽のテンポで六角形(八角形だったかも)の柄がドン・ジョバンニの周りを取り巻くようにくるくる回ってました。荒れ狂う聴覚と目が回るような視覚とで体の感覚を別世界に持っていかれた感じです」

みや子「それにしても、背景に絵が写って、いろいろ雰囲気が変わったよ」

にしの「あれはプロジェクション・マッピングと言って、舞台装置に映像を投影して、あたかもそこに物体があるかのように見せる手法です。極めてレベルの高いプロジェクション・マッピングで、さすがと思いました」

みや子「レベルが高いってどの辺?」

にしの「最初、カタログが壁に投影されるじゃないですか、徐々に名前が増えていくんですが、その増える数が尋常じゃなかったんです」

みや子「数が多いと大変そうやな」

にしの「全体の雰囲気、文字のバランス、書いていく順序など考えていくと、相当な試行錯誤をしたはずで、完成までどれだけ時間がかかったかを考えるとめまいがします」

みや子「たしかにかっこよかったよね」

にしの「また、舞台の装置は直方体の館だったですよね。その壁に模様が投影されるわけですが、直方体は回り舞台で回転してます。その回転している直方体の平面(壁)に同じ柄を映し続けていたのですよ」

みや子「何のこっちゃさっぱりわからん」

にしの「装置は回転していますから、投影される壁も時々刻々と動いているわけです。そこにぴったり壁に収まっているように柄を映していたんですね。壁の動きに合わせて投影する柄も移動させているんです。それも簡単にわからないくらいに」

みや子「アラ探しが好きなあんたがわからへんのやったら、相当なもんやな」

にしの「まあ、投射側と投影側の位置関係が決まればプログラムで何とかなります。といっても微調整が大変でしょうね」

みや子「で、演出の話はどこ行ったんや?」

にしの「最初は一面壁かと思った舞台は真ん中部分が直方体の屋敷で、それが場面に合わせて回転していきます。屋敷の中には階段やいくつかの部屋があって、それをうまく使って物語を展開していました。そこにプロジェクション・マッピングで雰囲気を変えていく。いろんな趣向が凝らされていました」

みや子「ドンナ・アンナが騎士長の首像を持ってきたりとか?」

にしの「ドン・ジョヴァンニがその首像を破壊し、そのかけらをドンナ・アンナが持ってアリアを歌います。しかし、あれだけドン・オッタ―ヴィオに言い寄られても、振り向く素振りすら見せないドンナ・アンナというのも新鮮でした」

みや子「ドン・オッタ―ヴィオがかわいそうやったなあ・・・」

にしの「演出とは違いますが、ツェルリーナのとマゼットの身長差もすごかったです。2人の演技はもう一つでしたけどね」

みや子「ちいちゃい女の子が奇声をあげて出てきたときには、何が起こったんかいなと思たわ。」

にしの「また、私は、ドンナ・エルヴィラの侍女が実際に出てくる舞台を初めてみました。魔力のような力を持った騎士でしたね。侍女が裸にまでなって強烈でした。」

みや子「そこだけえらく集中してみてたな。ところで白い亡霊みたいなのがいっぱい出てきたけど、あれは何?」

にしの「よくわからなかったです。ドン・ジョヴァンニは一人孤独になって、周りにいるのは亡霊だけになってしまったのかもしれません。最後はレポレロも亡霊のようでした」

みや子「地獄に落ちた後もよくわからへん。舞台に残ってたやん」

にしの「そうですね、多分、地獄に落ちたところで物語が終わったように思います。そして、ドン・ジョヴァンニは終演後の客席に向かって、手を向け、『貴方も私と同じですよね?』と同類を探す。でもいないので、いじけて舞台に一人残って丸くなって幕となったという話かな、と思いました」

みや子「ふーん、あと、地獄落ちのあとに一人一人歌を歌うと思ってたんやけど、あれはなかったな」

にしの「あの落ちだと、ドン・ジョヴァンニ以外の後生には興味がないということでしょうかね?公演の質の高さに比べると平凡な結末のように思いました」

みや子「お!辛口やな。でも歌も舞台もよかったんだからいいじゃん」

にしの「そうですね。指揮はテンポよくオケもちゃんと仕事をしてましたから、とても満足しましたよ」

みや子「今でもアリアが頭の中で次から次へと鳴ってる~幸せだわ~~」

にしの「そうなりますよね、私も同じです。やっぱりモーツァルトのオペラっていいですね」

みや子「それにしても、客席の平均年齢が高かったな」

にしの「まあ、西宮北口のあたりは古くからの住宅街ですから高齢の方が多いのでしょう。オペラを観る年齢層も高いようですし」

みや子「こんなおもろいもん若い人も行かないともったいないわ。でもチケット高いのよね。次はおごってくれへん」

にしの「ええっと、それはまた次回検討するということで・・・」

みや子「よっしゃ、次はよろしく!またオペラを観に行きましょうねー」

にしの「観に行きましょうね・・・ごほん」