『パウル・クレー だれにも ないしょ。』@兵庫県立美術館に行ってきた |   kinuzabuの日々・・・

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兵庫県立美術館で開催されている『パウル・クレー だれにも ないしょ。』という美術展に行ってきた。


パウル・クレーは20世紀前半にスイス、ドイツで活躍した画家。ナチスから退廃芸術家の烙印を押され、ドイツからスイスに亡命した。作品は、かわいらしいものも、綺麗なもの、また、深刻なものもあるが、私はどれも大好き。今回結構な数の作品が展示されると聞いて、ワクワクして観に行った。


内容は、圧巻の一言。これだけの規模でクレーの絵だけの展示。下書きや書きかけだけのものは多分一つもなくて、すべて作品として完成された絵画。角を曲がると終わりかな、と思ったら、まだ続く、というのがまた続くという壮大な空間。びっくりした。

日本の美術展に行って、絵に「あたった」感じがして疲れたのは初めてかもしれない。あ、京都のカンディンスキー展であったか?

ただ、個人的にはもっと明るい絵があってもよかったと思う。どちらかというと暗い色調やテーマの絵が多いと思ったので。


こういうすばらしい美術展で、人が少なくゆっくり見ることができて良かった。人が少なかったのは初日の朝に行ったからだろうか?でも、クレーは日本で人気があるそうだから、これから人が増えるのだろう。

もうひとつびっくりしたのが図録。極めて重厚なつくりで、内容も大変充実。これで2500円というのだから、図録だけでも取り寄せる価値があると思う。(取り寄せられるならだけど)




以下、印象に残った絵をいくつか。他にもいっぱいいい絵があった。


・上昇
下の靄から上の靄へむかって不安定な梯子を人が登って行く。でも、目的は上の靄でなく矢印で示された丸いところ。目的にたどり着けるわけがないと不安になるが、黄色い背景はどこか気楽さを感じさせる。


・三人のアラビア人
明るい色彩の、いろんな平面で構成された3人のアラビア人。色彩鮮やかで造形もキュート。


・夢心地
単純なのびやかな線が、イメージを大きく膨らませている。ほわっとする作品。


・赤のフーガ
いくつかの形が明るく描かれているが、それぞれ左に同じ形が暗い色で描かれ段々暗闇に沈んでいく。明と暗のグラデーションと、配置が見事。と思ったけど、暗闇から明るい色が生み出されるという絵らしい。


・悲しみ
点描と線でくらい悲しい顔を描いたもの。でも悲しみはそこまで悲愴なものではないような気がする。


・花開く木をめぐる抽象
四角を組み合わせた花。周りの暗さで花の明るさが際立つ。こういう絵が大好き


・橋の傍らの三軒の家
三角と四角で描かれた橋と家。全体のバランスがすばらしい


・ピラミッド
橙色の三角形のピラミッドを、濃紺の四角いいくつかの枠で囲み、上から逆三角形がピラミッドに重なる。大胆な構成と濃紺から浮き上がる橙色が美しい。


・むしろ鳥
一筆書きのような単純な線による天使シリーズの一つで、羽が大きすぎて、「天使というよりむしろ鳥」という絵。閉じた愛らしいまぶたが、「鳥かなぁ?」って考えているようでとびきりかわいい天使。