サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル西宮公演の感想(2013/11/16兵庫芸文) |   kinuzabuの日々・・・

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みや子「みなさんー、こんにちわー!今日は西宮北口の兵庫県立芸術文化センターに来ていまーす」

にしの「しくしく」

みや子「あれ、なんで泣いてんの?」

にしの「しくしく。ベルリンフィルのチケットがすっごく高かったんですよ。買うかどうか迷っているうちに大阪のフェスティバルホールの公演が売切れたっていうから、思わず買ってしまいました。これで金返せっていう演奏だったらどうしようかと思って・・・」

みや子「今頃何を言ってん
のこのおやじ。1988年だって27000円だったじゃん(証拠↓)」

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にしの「そうですね、25年前でもこの価格なんですから、しかたないですかね。しくしく」

みや子「もうすぐ公演で
じゃない。くよくよしないで、さっさと席に行く!」

にしの「はい。では3階へ」

みや子「え、3階でこの値段なの?」

にしの「そうです。でも、このホールは3階とか4階の方が音がいいと思っています。個人的な感想ですが」

みや子「ふーん、うわっ、舞台の上がとんでもないことになってる!」


にしの「壮観ですね。舞台が椅子と楽器で埋め尽くされてます。打楽器の数が半端ないですね」

みやこ「団員が出てきた、むっちゃ窮屈そう」

にしの「人数は、弦が18-16-14-12-10、木管が4-5-5-5-5、金管が4-4-1、打楽器9、ピアノ1、チェレスタ1ですか?記憶があいまいですが、110人ぐらい。打楽器だらけだから、舞台いっぱい。ここのホールの舞台がこんなに楽器で埋め尽くされているのを初めて見ました。」

みや子「指揮者が出てきましたね。頭もじゃもじゃ」

にしの「ラトルも年相応の顔になりましたね。一曲目はブーレーズの《ノタシオン》です」

(演奏)

みや子「どうだったんですかぁ?」

にしの「しくしく」

みや子「あれ、また泣いてる」

にしの「しくしく。これがチケット価格の1/5だと思うと泣けてきます」

みや子「チケット価格で評価するのは止めてくれない?」

にしの「初めて聴く曲だから、こんなものかもしれませんが、緊張感も光もあまり感じられなくて。後半はそこそこよかったですが、ベルリンフィルのレベルとは思えなかったです」

みや子「はぁ。でも、打楽器がいろんな音を立てて見てて面白かったですよ」

にしの「そうですね。とにかく次に期待しましょう。ブルックナーの交響曲第7番です。私の大好きな曲です」

(演奏)

みや子「・・・」

にしの「・・・」

(沈黙)

みや子「うぉー!!!」

にしの「うぉーっっっっっ!!!!!」

みや子「うわー、すごかった―、何この演奏、鳥肌立ちまくりじゃん」

にしの「ほんと、もうたまらんです。しくしく、こんな正統的なブルックナーをベルリンフィルで聴けるなんて。ブルックナーって、こんなドイツのオケを前提に、曲を書いたのかもしれないと思いました。ずるずる」

みや子「泣いているだけじゃなくて、はな汁まで出している。でも、そうなるのもわかるよ」

にしの「最初の、弦のさざ波から尋常じゃなかったです。最初の音から喜びでこころがあふれてしまいました。そして、ゆっくりしたテンポ。大きな大きな世界をゆっくりと積みあげていくように、深く長い息使い。全編通してそんなテンポで、緊張感が途切れることが全くない。この長大な曲で、息をするのももったいないように感じました」

みや子「ハナかんでたじゃん」

にしの「ハンカチで拭いていたんですよ。涙があふれたら仕方ないじゃないですか。

 それにしても、弦の迫力はすごかった。暗く重量感のある弦が吠えまくるってましたね。で、ラトルは音を抑えようとしてたように見えました。音量の大小の幅がすっごく大きくて、小さい音は小さな光を灯し、大きな音は重量級というか巨大なブルドーザーのように破壊力を持って迫ってくる。コントラバスの音なんて尋常じゃなかった。しかも流れがしなやかで美しい。ブルックナーの交響曲は、こんなすごい弦の能力を最大限に発揮できる、ベルリンフィルにぴったりの曲なんだと思いました」

みや子「木管、金管はどうでしたか?」

にしの「木管はどれも美しかったですね。弱音では淡い光のような、強音では2管でもオケを突き抜ける力強さ。ホルンも深い。ホルン独奏は賛否あるかもしれませんが。金管はさすがの迫力。ワグネルチューバも渋くてかっこよかった。クライマックスはここまで辛抱していたのを一気に吐き出す大音量、大迫力でしたね」

みや子「全体としてはどうだったんですか?」

にしの「すでに言いましたが、ゆっくりとしたテンポでラトルがオケが先走るのを抑えていたような印象が強かったです。このテンポがすごくよかった。曲の特徴をしっかりと前面に出して、ものすごい弦のうねり、金管の咆哮は最高でしたし、弱音では音をしっかり押さえて、オケをうまく制御してました。おかげでブルックナーの醍醐味を最大限に味わえました。一生のうちでこんなすごい体験はほとんどできないでしょう。生きててよかったと思いました」

みや子「曲が終わって、ホールがシーンと静かになって、綺麗に音がスーっと消えていくの。あんなの初めて!」

にしの「関西ではすぐ拍手が出ることが多いですからね。今回は指揮者が腕を下すまで拍手が出ませんでした。これもよかった」

みや子「ところで、行く前は『ラトルのブルックナーってどうだろう?』とか言ってませんでしたか?」

にしの「確かに、どんなものになるか少し不安だったんですよ。でも、ベルリンフィルが演奏するブルックナーってこんなすごいことになるんだと思いました。さすが伝統といいましょうか」

みや子「ホントいい演奏会でした。私、ブルックナー・デビューだったんですが、とっても楽しめましたー」

にしの「しくしく」

みや子「あれ、また泣いてる。演奏がよかったからって、まだ泣いていんの?」

にしの「違うんですよ。今日の演奏会って一生もののすごい体験だったじゃないですか。じゃあ、またベルリンフィルを聴きたくなりますよね。ということは次の来日でもバカ高いチケットを買う羽目になります。抜けられないループに紛れ込んじゃって、お金がいくらあっても足りなくなると思うと、なんか罠にはまった気がして泣けてくるんですよ」

みや子「はぁ?そんなこと言うなら、アジアツアー記念Tシャツなんて買うなよ!」

にしの「だって面白そうじゃないですか。思わず買ってしまいました。ちなみにこんなのです↓」

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にしの「しくしく」

みや子「まだないてんの?いい加減にしてくれない?」

にしの「だって、ホールの音響がもう一つだったんですよ。こんなすごい演奏を聴いたのに、なんか音が届かないと思えたんですよね。それをオケが十分カバーしていたとは思いますが、例えばザ・シンフォニーホールとかならもっともっと音の洪水に浸れたのではないかと思って」

みや子「もう、関西に来ただけでもありがたいと思いなさい!」

にしの「はい。次の来日も楽しみにしています。どうか関西にも来てください」

みや子「その時はまたコンサートに行きましょーねー」

にしの「行きましょうね、しくしく」

みや子「いつまでも泣いてろ!」