今年も正倉院展に行ってきました。第65回とのこと。
今年の目玉は『漆金薄絵盤』というあでやかな彩色の絵が描かれた花弁のようなヒレがいっぱい付いた香台のようです。いろんなところにポスターが貼ってありました。
それで、今年の正倉院展で、私のこころを鷲掴みにして、激しく強いときめきをもたらしてくれた宝物はこれ。
63『花喰鳥刺繍裂残片』(鳳凰の刺繍の残片)
たかが残片と言うなかれ。残片でも鳳凰の刺繍の部分はきれいに残っていて、これがまた天上の輝きをもたらしてくれるような神々しさ。刺繍の立体感も見事で色も極めて美しい。いつまでも眺めていたいと思う超のつく宝物でした。
これは二番目ぐらいの目玉だったようで、今年の目録の裏表紙にも写真が載っています。正倉院展では毎年、布の残片が多く出てきますが、大変美しいこころをうばわれるものがあります。今年もこれ以外にいいものがいくつか出てましたが、この刺繍裂残片は別格ですね。すばらしい。
他は、出陳番号ごとに並べると以下。
12『檜和琴』
琴です。螺鈿、玳瑁、など正倉院ではおなじみのものですが、形がいいですね。すっと伸びた胴の両端に螺鈿と玳瑁。玳瑁の下に透かし絵。胴の横には玳瑁絵。玳瑁絵の縁にはおそらく金泥の細かい市松模様。細部までしっかり作られた名品。
22『漆金薄絵盤』
今年の目玉で、たくさんの花弁ごとにそれぞれ異なる柄の絵が描かれて、それがとてもきらびやかで輝いていました。これほど美しい絵はなかなか見られませんが、それが32枚の花弁のすべてに描かれているのですから、その破壊力は計り知れません。なお、この宝物は列に並ばないと間近で見られませんが、その美しさの本質を知るには行列に並ぶ方がいいと思います。並ぶ甲斐はあります。
27『金銅六曲花形杯』
かわいらしい銅板製の杯。鍍金しているらしい。花びらを合わせたような形をしていて、金色の輝きに浮かぶ刻印が美しい。花びらごとに天上人が刻印で描かれている、らしい。でも、わかっていても見えない。見えそうで見えない。私は何とか一人見つけて安堵。
29『漆彩絵花形皿』
方形に花の形をした小皿が並ぶ足つきの皿。縁の漆とそこに書かれた絵が極めて美しい。皿の下側が美しいのだが、下から覗くのが難しくて、ゆっくり見られなかったのが残念。
33『蘇芳地金銀絵箱』
金銀絵のある献物箱。金泥の彩色が輝き、文様の美しさに目を奪われる。特にふた中央部の細かな点描は見ていて夢心地になる。
35『夾纈羅几褥』
とにかく、黒!深い黒の花びらに吸い込まれます。
36『雑帯』
いろんな色の糸で編んだ組みひも。細かな渋い色合いの美しさといったもう。
38『紫檀銀絵小墨斗』
小さな小さなおもちゃのような墨斗。建築で板を切るときに線を書くための道具だけど、iPhone5の1/3ぐらいの大きさしかない。小さくてかわいいものが本当に好きだったんだと思う。
39『斑犀把金銀鞘刀子』
17cmほどの小刀。鞘の文様が極めて美しい。ほれぼれする美品。
60『緑地唐草襷花文錦他』
古裂を整理した屏風。この中のピンク色の帯や赤い布の横糸の緑が素敵だった。