西宮北口でサロネン・フィルハーモニア管を聴いてきた |   kinuzabuの日々・・・

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今日は兵庫県立芸術文化センターでエサ・ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団のコンサートに行ってきた。

曲目は、前半がベートーベン《シュテファン王》序曲、ピアノ協奏曲第4番、後半がマーラー交響曲第1番。

席は3階正面。このホールではこのあたりの席が好き。1階は周りからの残響が感じられず、もう一つ。舞台上にピアノがあるのはいいとして、後ろ側の打楽器群とその前のたくさんの席は何なんだ?これ全部マーラーで楽団員が座るんだろうか。

前半のベートーベン。《シュテファン王》序曲は小気味よいテンポとエッジの立たない柔らかい音が心地よい。ベートーベンでもこんな小曲があるんだなと思った。

次はピアノ協奏曲。独奏はレイフ・オフ・アンスネス。ピアノの音が美しく響く。高音が輝いている。タッチが素晴らしいね。指揮はエッジの立たない柔かい音が支配的。これにピアノの柔らかく美しい音が重なって至福のひと時。優しい時間が流れていく。第二楽章では冒頭、オケが強く、ピアノが弱く始まり、だんだん逆になっていくのが面白かった。第三楽章もテンポ良くて気持ちいい。ベートーベンだけど、そんなにしゃちほこばらない柔らかく優しい演奏だと思った。

アンスネスのアンコールあり。


休憩後はマーラー。思った通り、舞台後方の座席にはホルン、金管が座った。ホルン8、トランペット5、トロンボーン4、バスチューバ1。その後ろは打楽器群。ティンパニ2セット、バスドラム、ドラム、シンバル、小太鼓などなど。むっちゃ壮観。

第一楽章はきわめてゆっくりとはじまった。長いトレモロに楽器が重なっていく。ん、なんかブルックナーみたいだ。マーラーだけど、混乱がなく、すっきりと見通しがいい。どんな場面でも音が濁らず明晰。だけど分析的ではなくて一体感でしっかり結びついてる。まるで違う曲を聴いているようだ。

第二楽章は、二部形式でABAとなるが、この雰囲気もブルックナーのスケルツオを彷彿とさせる演奏。マーラーを聴いてブルックナーを感じたことなんて今まで一度もなかったのに。なんだかとても不思議な感覚。

第三楽章は、弦が大変美しかった!5番の第4楽章のアダージョを思い浮かべてしまうような官能的な弦が唸りを上げる。あまりの美しさに涙が出てきた。

第四楽章は第三楽章から続けて始まった。ド迫力の金管、打楽器!圧倒的な迫力はこの曲ならではだけど、いつにもまして迫力を感じるのは、視覚的な影響もあるかもしれない。この激しいうねる曲でも明晰で見通しがきくのは、指揮者の采配によるものだろう。最後も迫力満点で終わった。

アンコールがあったけれど、あんな大迫力の終わり方の後にアンコールは不要だと思った。


総括すると、ベートーベンは優しくてピアノも美しくて、とても気持ちよかった。でもよかったのはマーラー。私は1番の交響曲あまり聴くことがないけれど、混乱することなくすっきりと聴けて気持ちよかった。サロネンだったら、こんな感じになるのかなと予想してはいたけれど、ここまで美しい1番を聴けるとは本当に凄いね。ブルックナーの影響を感じたり、5番のアダージョを思わせるような弦の唸りを聴いたり、新しい発見がいくつかあった。

すっきりして、迫力も十分だけど、なんだか優しくて何より美しい。今まで聴いてきたマーラーとは全く違うマーラー像を見せてもらえたコンサートだった。

(でも、できれば、マーラーでも3、5、6、7、9番のどれかを聴きたかったなあ・・・)