Stereo誌付属のUSB-DACを改造して遊ぶ |   kinuzabuの日々・・・

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最近USAB-DACで遊んでいる。

DSB-DACとは、USBの音楽データをデジタル/アナログ変換して、アンプのアナログ端子に出力する信号を生成する機器で、これを用いれば、PC上の音楽データを自宅のオーディオシステムで音楽を楽しむことができる。

私は、Stereo誌の2013年1月号に付録としてい付いてたものを使っている。それだけでもそれなりに楽しめるけれど、部品を変えるとたちどころに音質が変化するので、部品をとっかえひっかえして音がどう変わるかを確認している。これがとても面白くて、仕方がない。

なお、ヘッドフォンアンプを使わないので、ボリュームを取り外している。


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【このUSB-DACについて】
1)IC

このUSB-DACの特徴は、PCM2704というバーブラウンのUSB-DAC専用ICを使っていることだろう。このICはUSBコントローラとDACの機能を持ち、USBに接続してデジタル音声信号を入力すれば、アナログ音声信号を出力するという明快なもの。このICを使えば極めて単純な回路構成でUSB-DACを構築できる。電源はUSBバスパワーの5Vを3.3Vに変換して使用でき、S/PDIFで使用できるデジタル出力もある。

今は、PCM2704ではなく、PCM2704Cが推奨されている。

2)基板
まず、このUSB-DACを見て思ったのは、基板上のパターンの引き方が面白いこと。パターンとは、部品と部品とをつなぐリード線を基板上に生成して回路を構成するものなのだが、これが他の一般的な回路と異なる以下のような特徴を持っている。

・円弧を描くような形状のパターンが多用されている。
・信号線のまわりに細いグランドパターンが配置されている。

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円弧については、私は不勉強ながらこのようなパターンを見たことがない。普通はパターン設計のしやすさもあって直線を組み合わせたものになるのだが、円弧の方がノイズ的にいいのか、想像がつかない。もしかすると、音響の世界では常識なのかもしれない。

グランドパターンについては、確かにこうすればノイズがグランドに抜けるので周りのノイズの影響を減らせるとは思う。でも一般には高密度実装の世の中で、こんなスペースは使わないし、高周波ではかえってノイズ源にもなりそうだ。

パターンを見る限り、音響的な配慮がなされたと思われる基板なので、これにしっかりした部品を配置すればいい音が出そうな気がする。


【部品交換】
部品を交換して音質の変化を調べるときに交換する部品は、オペアンプ、カップリングコンデンサ、水晶発振子だろう。出力段の抵抗を金属皮膜抵抗からカーボン抵抗に変えても音は変化するらしい。

1)オペアンプ
このUSB-DACの出力用オペアンプはソケット付されているので、8ピン2回路のオペアンプなら簡単に取り換え可能になっている。オペアンプを変えると音が変化するといわれており、音響用オペアンプというものがいくつか存在する。

私はこのうち、以下の5つの音響用オペアンプと一般用オペアンプを入手して、いくつか比較してみた。

・OPA2227P → 汎用 、歪率:0.00005%、ノイズ: 3 nV/√Hz
・OPA2134PA → 音響用、歪率:0.00008%、ノイズ: 8 nV/√Hz
・MUSES8920 → 音響用、歪率:0.00004%、ノイズ: 8 nV/√Hz
・LME49860NA → 音響用、歪率:0.00003%、ノイズ: 2.7nV/√Hz
・LME49720NA → 音響用、歪率:0.00003%、ノイズ: 2.7nV/√Hz
・NJM4580DD → 音響用、歪率:0.0005 %、ノイズ:800 nVrms(4580Dの値、4580DDは低ノイズ選別品)

OPA2227P:クリアな音になるが、立体感がまるでなく、平板どころか完全な二次元の音。オーディオとしては全く使えない。スペック的には極めていいが音響用と汎用との違いを思い知った。

MUSES8920:MUSES02の評判がいいのでそのコストダウン版を買ってみたが、立体感はあるものの音に濁りがあり、期待通りにはいかなかった。

OPA2134PA:出力側のカップリングコンデンサをニチコンFine Goldの47μFにしたときは、音がクリアで、立体感にあふれ、押し出しもよく、すばらしいオペアンプだと思った。しかし、カップリングコンデンサをJovialの10μFに変えると、音が濁ってしまい、コンデンサとオペアンプに相性があるのかな?と思った。そんなことを言ったら組み合わせは無数にあるよねえ。

NJM4580DD:Jovial10μFの相性は抜群。音はクリアで、ピアノの質感もすごいし、マーラーのオケの華やかさが光る。立体感は申し分なく、低音もそれなりに出る。素晴らしい。スペックは低くても音はいい、ということは、スペックはあまり関係ないのかもしれない。


2)カップリングコンデンサ―
・一番最初に交換したのがこれ。当初はCapxionという台湾メーカの電解コンデンサ22μFがついていた。なんか濁った音がするので、オペアンプの入力側を音響用のMUSE10μF、出力側をMUSE47μFに変えると、抜けがよくなり濁りがかなり減った。

・低音が弱いので、オペアンプの出力側をJovialの10μFに変えると、さらに抜けがよくなり、少しは低音が出るようになった。でも低音には満足できない。


3)水晶発振子
・USB-DAC用ICであるPCM2704は、12MHzの発振子で動作している。現在基板に接続されている発振子は精度が±50ppmなので、これを±2.5ppmの高精度発振子に入れ替える。使ったのはFOX924シリーズ。

・回路構成については、webで検索するといろいろ出てくるが、Vccに3.3V、GにデジタルG、outをPCM2704のXT1に直付けした。

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・音は大変よくなった。緻密で、金管が輝き、見通しがよくすっきりした音になった。マーラーの弦の唸りやバスチューバの低音の響きが生々しい。


【結論】
・オペアンプの最適化(NJM4580DD)×カップリングコンデンサの音響用への交換(Jovial)×発振子の高精度化(Fox924)によって、USB-DACの音は大きく変化し、オーディオ用として遜色ない音にまで高めることができた。ここまでできたら満足できる。

・音がいろんなところで変化することが分かった。特にオペアンプがでの変化が大きい。でも、NJM4580DDは150円もしない。他のオペアンプも500円以下。それを変えるだけで大きく音が変わる。これまでオーディオの音を変えるには、何万円ものアンプやスピーカを買ったり、市販のDDCやUSB-DACを買い替えたりする必要があった。ところが、今回は1000円も出さずに音を変えることができた。凄い世の中になった。そしてすごく楽しい。

・これからは、オペアンプを増やして比較したり、カップリングコンデンサとオペアンプの組み合わせも考えてみたい。また、出力抵抗や3.3V電源のレギュレータも変えて音の変化を調べてみたい。やることがいっぱいあるが、それで音の変化という結果が出るのであれば、苦にならない。というか、楽しくて仕方がない。しばらく部品屋さん通いが続きそうだ。