ボローニャ歌劇場びわ湖公演《カルメン》9/10 |   kinuzabuの日々・・・

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今日はボローニャ歌劇場来日公演の《カルメン》を観てきた。

配役は以下。
カルメン:ニーノ・スルグラーゼ
ドン・ホセ:マルセロ・アルバレス
ミカエラ:ヴァレンティーナ・コッラデッティ
エスカミーリョ:カイル・ケテルセン

上記のうち、カルメン以外は当初発表から変わった代役。比較的来日不可の表明が早かったカウフマンの代役はアルバレスだったが、それ以外が、直前になって雪崩のように変わった。これも今の日本では仕方ないのだろう。

さて、公演だが、私は大変満足した。歌手の凹凸はあったが、アルバレスの声と何より指揮の素晴らしさとオケの頑張りがこの公演を成功させたのだと思う。

【歌手】
なんといってもドン・ホセのアルバレス。声量があって、情感がこもって、正確な音程。何よりも表現力がすごい。本当にすごいテノールだった。ホセの心情が心に突き刺さる歌。本当にいい歌手を連れてきてくれたものだと思う。

次はカルメンのスルグラーゼか?声量はもう一つだが、カルメンの華と意志の強さがある。見た目も踊りもよい。ハイヒールを履いてよく踊れるものだと思う。相手がアルバレスでなければ、もっと印象は良かったかもしれない。

エスカミーリョのケテルセンは、最初は声がこもってもう一つだったが、そのうち抜けるようになって、よくなった。代役としては十分満足できるレベルだろう。役にあった体型だったこともポイントが上がる。

問題はミカエラのコッラデッティ。見た目が太い。声量があるが一本調子。たくさん拍手をもらっていたが、私にはもう一つだった。


でも、代役ばかりという公演としては歌手もそれなりに良かったと思う。


【指揮】
この指揮者ミケーレ・マリオッティはすごい。序曲からすでにその片りんを見せていた。非常に細やかにドライブする。細かな指示を出し妥協のない音 楽を作り上げていた。4幕のホセとカルメンのやり取りの迫力はすごかった。《カルメン》というといい思い出がないが、やっぱりオペラは指揮者がしっかりしてないとだめだと思った。

【オーケストラ】
素晴らしい指揮者に引っ張られているのか、細部まで美しい音を出していた。弦の官能、木管の美しさ、金管の咆哮どれをとっても、渋く美しかった。こんなオケの音で聴くオペラは最高である。


以下、ネタバレ注意!。



【演出】
舞台の幕はキューバの国旗になっていた。

第一幕はキューバのたばこ工場という設定。この場面はすでに広まっているのでおなじみ。起こることも、キューバという以外は特記することはない。

第二幕はバー「セビリア」で仲間たちが集まっている。そこにエスカミーリョがボクシングチャンピオンとして現れる。虚を突かれて大変驚いた。ここがスペインとキューバの違いか、なるほど。

第三幕は海岸でキューバからアメリカへの密航の準備。密輸はアメリカに密航して行うのか。カルメンがアメリカの国旗風の服を着て現れるのがおもしろかった。

第四幕はキューバの競技場で、ボクシングの試合が行われる。凶器はナイフではなく、売店のビンを割って首に刺す。最後は幕が下りるまで二人だけ。他に誰も来ないだけに、ホセの嘆きが強く印象に残る終わり方だった。

スペインからキューバに場所を変え、闘牛士がプロボクサー、密輸は海からアメリカへ密航。筋は通るし面白い。最後のホセの嘆きには涙が出た。いい演出だったと思う。


ということで、大変いい、公演を味わえた。明日の《清教徒》はどうなるだろうか?