こんにちは。きのひです。
「その日まで」 吉永 南央 著 を読みました。
2012年11月10日 第1刷
北関東の紅雲町(こううんちょう)には素敵な和食器とコーヒー豆の店がある。
名前は「小蔵屋(こくらや)」、店主は七十代の矍鑠(かくしゃく)とした女性、杉浦草(そう)さんです。
店の壁を這っていたカナヘビを火挟みでそっとつまみ上げると、かぼそくチーと鳴いた。
にょろっとした尻尾が当たり、投げ入れの山葡萄の赤い葉が揺れます。
「かべちょろって、鳴くのねえ。生まれて初めて聞いた」
カナヘビのことを、草は幼い頃から「かべちょろ」と呼んでいます。
「ねえ、鳴くって知ってた?」
草は腰を伸ばして、脇にいる常連の主婦に向き直った。
その動きに合わせて火挟みが弧を描き、覗き込んでいた主婦の鼻先を、かべちょろがかすめました。
彼女は、かべちょろを踏みつけそうになった時のように、ひっ、と怯えた声を上げて後退(あとずさ)った。
五十過ぎだろうが、虫すら苦手だとかで、騒ぎが大きい。
「もう、やだっ。お草さんだって初めて聞くのに、知ってるわけないじゃないっ」
草が主婦をからかっている様子がおかしいらしく、他の客たちもくすくすと笑います。
「あら、年寄りだって、わからないことだらけなんだから」 草はぺろっと舌を出し、表に出た。
隣との境にある塀際にかべちょろを放してやりました。
解き放たれたかべちょろは、つつっと板塀の下から向こうへ行きかけて、ふと止まった。
長い尻尾を、名残惜しそうに振ります。
「あら、仲間だと思われたのかねえ」
今日草が着ている紬(つむぎ)と割烹着は、珍客と似た色合いでした。
カナヘビ。名前にヘビとつきますが・・ヘビの種類ではないんですね。
「福岡生きものステーション」さんに「身近な生きもの図鑑」「ニホンカナヘビ」がありました。
「平地から低山地にかけて、人家の庭や公園、草地などでよく見られます」
ニホンカナヘビはニホントカゲに比べて警戒心が低く、日向ぼっこする姿がよく見られる。
身近な環境で「トカゲ」と呼んでいるものは、大抵がこのニホンカナヘビです。
小さな昆虫やクモ、ワラジムシなどを好んで食べる。
ニホンカナヘビはニホントカゲとニホンヤモリに似ています。
ニホンカナヘビとニホントカゲは昼行性のため特に間違われやすい。
ニホンカナヘビは鱗がザラザラしていて光沢がなく、スマートな体つき。
ニホントカゲは鱗がスベスベで光沢があり、ずんぐりむっくりな体形です。
ニホンヤモリは夜行性で、指の先が円く、ガラスなどのツルツルした場所でも止まりやすい形態をしています。
そしてニホンヤモリには身体に目立つ模様はない。
HONDA キャンプさんの記事によればニホンカナヘビの尾は全体の2/3を占めます。
「ニホントカゲより相対的に長い尾を持つ」
「『ヘビ』と付くがトカゲの仲間である」
「カナヘビの語源については詳細不明であるが『可愛いらしい蛇』の意で『愛蛇(かなへび)』に由来するとの説がある」
それにしても、二ホントカゲは「ヘビ」とはつかずちゃんと「トカゲ」なのに・・
シッポが長かったから「ヘビ」とついちゃったのかな。