少し前に騒がれたのですが、

配当金などを社会保険料の算定に加えようという報道が出ました。

今更ながらにそれについて書こうと思います。

 

 

今回の記事はかなりの情報量があり、私のファイナンシャルプランナー(以下「FP」)としての知識が活かされるものとなっています。他のFPや介護に関するサイトよりもより突っ込んだ内容となっております。

もしご連絡いただければ、無料で転載を許可したいと思いますが、記事に対する権利を放棄したわけではありません。

 

 

 

そもそもですが、社会保険料とは、

公的な年金保険や医療保険や介護保険が該当します。

給与所得者(お勤めの人)は、給料から天引きされるわけですが、

給料の額を基に計算した標準報酬月額によって社会保険料(厚生年金・医療・介護保険)が決まります。

ここでは、標準報酬月額については説明を省きます。

給料から天引きされた社会保険と同額、雇用主は納める形(労使折半)となり、

給与所得者は支払った金額の2倍の掛け金を納めた形になるのです。

この給与所得者の配当金を社会保険料算定に加えようとすると

おそらく難しく現実的ではありません

雇用主が従業員の配当を把握するか従業員から申告させるかの方法がありますが、

どちらにせよ雇用主が従業員の配当から発生する社会保険を半分受け持たなければならないので、制度としておかしいことになります。そんな制度だったら、配当を受けるような資産形成をしている従業員を雇っていると雇用主が損することになります。

 

自民党が議論しているページを見てみることにしましょう。

社会保険料等に金融所得の適切な反映を~確定申告の有無による保険料の算定等の不公平の解消に向け議論実施~(自民党HPより)

Q.NISAも議論の対象? 

A.違います
少額投資非課税制度(NISA)は、非課税口座内で購入した株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が非課税になる制度で、保険料の賦課の対象外となっています。
このNISAについて、金融所得として保険料賦課の対象に含めるのではないかとの誤解が一部にあり、国会でも取り上げられました。
しかし、今般の議論は確定申告の有無による不公平の是正を目的としており、NISAに関してはそもそも議論の対象外で、PTでも対象に含めないことを確認しています。

「NISAに課税だ!」と騒いでいる人もいましたが、それはありえないことです。

NISAに課税するということはNISA制度の廃止に他ならないからです。

 

さて、次に実際の説明の表を引用します。

(表1)

(自民党HPより)

例えば、70歳単身、収入320万円の世帯で、収入の全額が年金の場合と、年金収入が270万円で残り50万円が上場株式の配当所得の場合の医療保険(後期高齢者医療制度)と介護保険の窓口負担割合・保険料を比較してみます。上場株式の配当所得は本人が確定申告の有無を選択でき、収入の全額が年金の場合と、年金と株式配当があり、かつ確定申告している場合は、共に窓口負担割合も保険料も同じとなります。他方、年金と株式配当があるが確定申告を行っていない場合は、保険料の賦課対象収入が270万円となり、介護の窓口負担割合や医療・介護の保険料額が低くなります。

結構わかりやすい説明ですね。

表1はなぜ確定申告の有無でここまで違うかの説明が抜けています。ここでいう後期高齢者医療保険料と介護保険料をどこが算定するのかというと、市区町村かそれが集まった広域連合です。

つまり、(市区町村の)住民税の算定となる所得がもととなるわけです。住民税を課税するにはいろんな形で所得を情報収集しています。給与所得者は雇用主から源泉徴収票と同じ内容である給与支払報告書が市区町村に提出されますし、また、自営業者・フリーランスなどの個人事業主は確定申告の写しが市区町村に届けられます。実は、それだけではなく、個人の所得税に関する確定申告書はもれなく届けられています。なので、確定申告には1月1日の住所を尋ねる欄(住所が変わらない人は空白でも良い)があり、住所に該当する市区町村に届けられます。つまり、確定申告に含まれる所得はすべてが住民税の算定に使われ、その住民税の所得が算定根拠として後期高齢者医療保険料や介護保険料が決まるのです。なので、株式の繰越損失で所得税が得になっても、後期高齢者医療保険料や介護保険料が高くなってしまったという例は今でも起きています。

しかし、特定口座(源泉徴収あり)の情報は市区町村には届かないのです。源泉徴収には地方税も含まれていますが、誰がいくら払ったのかは市区町村は知りません。

 

 

次に金融所得について下表のように説明があります。

(表2)

(自民党HPより)

言うまでもありませんが、①~③は証券口座の一般口座と特定口座のことを指しています。一番下はNISAで今後も制度が廃止されたりしない限り非課税ということです。NISAが縮小されることもないと私は考えています。(廃止したり縮小したりすると証券市場の暴落が起き、政府に対する国民の信用が一気に下落すると思います)

証券口座についてほとんどの人は特定口座で(源泉徴収あり)を選択しています。その場合確定申告しない限り、特定口座内の株式などの譲渡所得や配当所得は市区町村にはバレません。バレないのは悪いことではなく、そういう制度なのです。

今後金融所得を反映させるとなると特定口座(源泉徴収あり)内の配当や分配金が市区町村に情報提供されるということになります。そのことにより保険料算定は今までの所得情報+配当所得となるので配当所得がある世帯は保険料や窓口負担割合が増えます。後期高齢者医療保険料も低所得者には保険料が安くなる軽減措置があり同じ世帯の所得が影響してくるので、本人以外(配偶者や同居の子ども)の配当所得が含まれるのか不明です。また介護保険料は世帯の所得や住民税の課税状況も反映されるのでこちらも本人以外の配当所得が含まれているか不明です。またそれだけではなく、表1には書かれていませんが、介護保険制度には低所得者には特別養護老人ホームなどの食費や居住費が軽減されるのですが、それが配当所得によって恩恵が受けられなくなる場合も出てきます。介護保険については高額介護サービス費制度があります。これも所得によって月額負担上限額が変わってくるので、影響がでるでしょう。例えば、特別養護老人ホームに入居している年金額が低い年金生活者が特定口座(源泉徴収あり)からのそれなりの配当所得があるばかりに、介護にかかる料金が跳ね上がることになるでしょう。また、医療保険で手術をしたなど医療費が高額になった場合、高額療養費制度がありますが、こちらも同じように影響があり跳ね上がる場合があります。

次に国民健康保険についてです。表1を見る限り、国民健康保険税(料)は表の例には含まれていません。給与所得者が社会保険料に配当所得を算定に入れないものとすると公平性を保つ意味では国民健康保険も配当所得を算定に入れないかと思われました。しかしながら表2には国民健康保険の記載があります。給与所得者の社会保険は給与の額のみで計算されるのに、国民健康保険は事業だけではなく確定申告内に含まれる他の所得が計算対象となっているので、申告不要の特定口座の配当所得も算定に含まれるのか今後の動向に注意が必要です。

あと気になるのが、

表2の③→賦課方式を選択可能→特定口座→「・特定口座(源泉徴収あり)内の所得」

となっている点です。この表現だと配当や分配金の所得(インカムゲイン)だけではなく、譲渡益(キャピタルゲイン)も含むようにも読み取れます。これは重要なので情報提供はしっかりして欲しい所です。

 

 

最後に、もし特定口座(源泉徴収あり)の配当所得が社会保険料算定の対象になったら、金融機関や証券会社や保険会社がいろいろ対策をしてくるので、その情報のとおり動けばいいと思います。

 

○金融機関の対応策は、表2④源泉徴収あり【確定申告不可】→一般口座では主に普通預金や定期預金が有利であることです。NISAではみ出した額は、銀行(普通・定期)口座に預けると、元本保証でかつ社会保険料に影響を及ぼしません。しかも、現金として引き出せるところがメリットでしょうか。欠点としてはインフレに弱いというところぐらいでしょう。

○証券会社の対応策は、配当や分配金がでない商品を勧めてくるでしょう。個別株は配当を避けることは難しいのですが、投資信託なら分配金なしで積み立てていく商品がたくさん出てくると思います。高齢者は毎月分配が好きなのですがそれが社会保険料に影響を及ぼすとなると移行していくでしょう。無配当の投資信託なら実際にお金が必要な時に投資信託を一部解約すればキャピタルゲインに対しての課税となり配当や分配金についての所得は発生しません。また、日本企業は配当とは別に株主優待を拡充してくる可能性があります。株主優待は課税されていないのが実情ですから。

○保険会社の対応策は、貯蓄型保険の拡充です。私は保険会社勤務未経験のFPなので、あまり貯蓄型保険はお勧めしません。仕組みがとても複雑なので理解がしにくいためです。貯蓄型保険と民間の生命保険・医療保険・介護保険をごちゃまぜにして税金や社会保険料に影響を及ぼさないような商品をつくるでしょう。信頼のおける保険の外交員がいれば説明をじっくり聞いてからお任せするのもいいかもしれません。

 

 

 

まだまだかけるのですが、蛇足になりそうなのでここでやめにします。

機会があれば、書くかもしれません。

根拠法令なども書きたかったのですが、そこまで時間が取れません。

 

 TODAY'S
 
8月28日の取引

 

日経平均株価は+83.14円の38,371.76円で終えました。

グロース250指数は▼15.66の664.64です。

ドル円は144円前後です。

 

今日は日経平均は前日比からマイナスで推移しましたが、

午後から大引け前に向け徐々にプラスになってきました。

含み損がなくなったのは気が楽になります。一喜一憂してはいけないのはそうなのですが。

 

今日の取引ありませんでした

 

 

         

        


情報は自分で精査確認、投資は自己責任