(それにしても遅いな…。もしかして、食後に一度俺がトイレに行っていた数分間に、女の子たちが部屋に来て、”お客さんがいないから、ここは後にしよう”と帰っていってしまったものか…?いや、そんなはずはない。俺の部屋は廊下をはさんでトイレの真向かいと言ってよい距離だから、多人数の女の子がやって来れば、俺は足音ですぐ気づくはずだ…)
などと、私はやや神経質に考えたりした。
私のいる部屋は、廊下をはさんだ向かいに風呂とトイレがあった。風呂とトイレは宿泊客の共同となっているため、他の客の気配を把握しやすかった。どうも今夜は、水曜であるにもかかわらず、私以外に男性客の二人づれ、あるいは三人づれが一組だけ、この旅館に泊まっているようだ。
その男性客たちに先に女の子を選ばれ、残った女の子の中から私が選ばなくてはならなくなる、という展開だけは避けたかった。今夜の明暗は、ここで良い女の子を選べるかどうかにかかっているのである。
もし選択を誤ってしまった場合、それこそネットの体験談にあったような、ひと晩中相手の大きなイビキに苦しませられる、なんていうこともあるのだ。ただ、夜のイビキだけは、女の子の顔や容姿を見ただけでは分からないから、もうそこは自分の直感を信じるしかないのだが…。