試合分析メモランダム
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[日本代表]ボスニア・ヘルツェゴビナ戦

 W杯に向けて、課題があぶり出された試合といえた。


 この日の日本は、一言でいえば「整理されていない」。例えば、兼ねてからの懸案であるクロスへの対応。特に後半、サイドに張った選手から次々とクロスを入れられ、決定機を作られた。相手のシュートミスに助けられたが、もう2、3点決められてもまったく不思議ではなかった。


 目立ったのは、2列目から飛び込んでくる選手をフリーにするシーン。例えば84分のピンチではこぼれ球を拾われ、最後はFWイブリチッチにフリーでヘディングされた。ペナルティーエリア内に、人は足りていたにも関わらずだ。DFラインはどこまで下げて良いのか、2列目から飛び出す選手を誰が見るのか、ハッキリしなかった。こういったシーンは、随所に見られた。


 だが、これはクロスを簡単に上げさせたことが原因。もっといえば、クロスの手前で相手のスピードを落とせなかったから。ラストパスを何度もフリーで出されれば、マークに付くのも限界がある。


 確かに、DF陣のパフォーマンスは低かった。中澤はバルバレスに完敗し、らしくないミスパスも目立った。三都主は相手に狙い撃ちされ、寄せの甘さからことごとくクロスを許した。DFでまともなパフォーマンスを見せたのは、前半から危険なスペースを献身的に埋めていた加地くらいか。


 中盤の助けを受けられない守備陣を責めることは筋違い。彼らが孤立したのは、前線と中盤、最終ラインが同じ画を描けていなかったから。つまり、守備の連動性に乏しかったからに他ならない。


 ただ、ジーコ日本が目指すスタイルは、ポゼッションサッカーだったはず。守備の約束事を確認すべきなのはもちろんなのだが、もっと重要なのは「いかにして保持率を高めるか」だと思う。


 アメリカ戦の前半は、バタバタと蹴りだして簡単にボールを失った。しかし後半、日本は小野を中心としてじっくりパスを繋ぎ、反撃に転じた。巻のゴールは、ゆっくりとした横パスでの展開から始まっている。相手の疲労を加味しても、日本がアメリカ戦の後半にポゼッションで巻き返したことは注目すべきこと。


 少なくとも、現在の日本が目指すべきは現代的な「堅守速攻」よりも「遅攻」の完成度を高めることだと思う。稲本が「ボールをつなぐことは前半やってできていた。それを徹底すればいい」とコメントしているように。


 ボールを支配すれば、相手は下がる。フィニッシュまで終わればカウンターは受けない。不用意なパスミスをしなければ、ボールを失っても対処できる。「高い位置からの守備」こそ攻撃の第一歩という考えは正しいが、「攻撃し続けること」もまた守備の第一歩である。


 繰り返すが、守備の連携を整える必要はある。だが、ジーコはトルシエではない。ハーフカウンター狙いのプレッシングに期待するより、中盤の人選を整えることをこそ要求すべきではないか。


 ちなみに僕は、前半のような中盤の並びだとポゼッションは難しいと思う。中田英、福西ともに縦への意識が強く、ポゼッションを高めてじっくり攻めるタイプではない。ボールの引き出し方の上手さ、パスの精度、アイデアの豊富さ、ゲーム全体の流れを捕らえる力を考えても、やはり小野がボランチに入らなければ。そういった意味で、69分から投入された小野のパフォーマンスが低調だったことは非常に残念だった。


 5/15のメンバー発表後、W杯までは約1カ月の準備期間がある。コンフェデ杯2005では、2週間の準備期間中にコンビを熟成させ、ブラジル相手に健闘するなどある程度の結果を残した。ジーコが主張するように、準備期間さえ与えられれば日本はかなりまとまったチームになる。


 ただ、守備の連携が劇的に向上するとは考えにくいし、ジーコ監督がそれを重視しているとも思えない。それよりも、中盤の並びをじっくり検討してほしい。小笠原は悪くなかった。だが、中田英と小野、中村を同じピッチに並べることのほうが、相手にとってははるかに脅威となるはずなのだから。

BLOG開設しました

 備忘録、および人目に晒して自分を鍛える(笑)意味合いもあって、blogを開設しました。しばらくは試合分析メモを公開していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【サッカー】ゼロックス分析:浦和

【浦和】
ポイント:
・1トップの活かし方
・2シャドーの人選
・中盤の人選
・チームとしての戦い方

【雑感】
 圧倒的な戦力を持っている。前線のFWワシントン、FWポンテ、MF小野は言うまでもなく、22日のインド戦で出場した日本代表選手を多く揃える。1対1で勝負できる選手が多く、数的不利な状況でも打開が可能。連携がかみ合えば、優勝候補筆頭であることは間違いないだろう。

 しかし、25日のゼロックス杯で挙げた得点シーンは、いずれも相手を「崩した」ものではない。9分の堀之内の同点ゴールはCKから。18分のワシントンのゴールは、相手のパスミスを拾った小野のスルーパスを、DFシジクレイがカットミスしたもの。そして52分のポンテのゴールは、ロングフィードからワシントンが競ったこぼれ球から生まれた。いずれもセットプレーか、タッチ数の少ないカウンターだ。

 15分の決定機を見ても、G大阪がラインを上げかけたところでボールを奪った堀之内からワシントンへと繋ぎ、最後は中央に絞った三都主が中央でヘディングを放っている。チャンスは、相手のミスを突いたところから生まれている。

 そういった意味で、浦和は昨シーズン同様「カウンターのチーム」といえる。攻撃陣に注目が集まりがちだが、浦和のベースは前線から最終ラインが連動した守備。昨シーズンと変わらず、手数をかけない攻めが最も怖い。G大阪の西野監督は浦和を「日本のチェルシー」と評したが、その言葉は戦い方にも当てはまると見ていい。

 では、彼らは直ちに「チェルシー」となりえるのか。少なくとも、現時点で課題は多いように思う。まずは2シャドーの人選。この試合では、ワシントンが中央で張り、彼が動いたスペースには常にポンテが狙っていた。しかし、小野とポンテという両選手は、比較的足下で受けることを好む。必然的に、両選手ともワシントンの後ろにポジションを取ることが多くなり、ワシントンが孤立するシーンもあった。DFからビルドアップして崩したシーンが少ないのは、両選手の裏でもらう動きの少なさが原因とみる。

 ゼロックスではガンバを圧倒したように見えたが、実際は相手のミスに助けられた部分も大きい。リーグ戦は、あそこまで簡単に得点はできないだろう。

 一方で、小野はカウンターでボールを受けたときは、巧みなボールキープとパス出しで再三基点となった。代表でも、ボランチで起用されたときが最も技術が生きている。長谷部と位置を入れ替える等、何らかの工夫が必要になるだろう。

 チームとしての戦い方は、恐らくこのまま。ラインを上げてリスクを取るよりは、ある程度引いた位置でパスカットしてなだれ込むような攻撃のほうが怖い。達也が復帰した後も同じ戦い方をすれば、優勝する可能性はかなり高いと思う。

【日本代表】フィンランド戦

 やっぱ小野ですなぁ。低い位置で繋いで、ボールを横に動かして、相手DFを一方のサイドに引き付けて逆サイドに振る。


 そのパスの精度と、一連の動作が見事。パスを出すタイミングはもちろん、ボールにきちんとバックスピンがかかっていて、スペースに飛び出した選手が扱いやすいようにコントロールされている。またそのパスを出す前の動作を見ると、逆サイドに体を向けておいて、ボールを受けた瞬間にはパッとどちらでも行ける体勢を作っている。だから味方も信用して走り出せるし、その信用に小野が答え続けることで、ピッチ上に濃密な信頼関係が生まれると。


 正直、この日の相手では、W杯で通用するレベルを測るレベルにはない。だけど、日本のサッカーはやはり一度しっかり繋いで、起点を作って、横に動かして、それから。そういった意味で、小野のボランチというのは一つの答えだと思う。相手のプレッシャーに受けに回ると厳しい、という考え方はある。だけど、小野が中盤にいる日本に対して、ブラジルはともかくクロアチアとオーストラリアが上回れるかどうか。僕は、小野が中盤にいれば日本がボール支配する展開になると思います。


 そういうことで、自分の中ではボランチ小野は確定かなと。あとはヒデさんをどこに置くか、4バックか3バックか、というところ。トップは2トップで確定でしょ。巻いいねぇ。久保と巻の2トップも、うまく縦の関係を作れればそれなりに面白いコンビになりそう。寿人はあのチャンスが入っていればなぁ。

《ボツコラム》“新鮮”力の躍動(2)

●佐藤寿人(広島)
アメリカ戦45分より途中出場

 不完全燃焼。本人としては、それ以上でも以下でもないだろう。

 初代表としては、上々のデキだった。後半開始、FW巻(千葉)と2トップを組んでピッチに現われると、積極的なチェイシングで相手DFラインにプレスを掛けた。自らボールを奪うシーンこそなかったが、パスコースを限定することで中盤のパスカットを誘発した。日本が後半にペースを握り返した一つの要因に、佐藤のチェイシングがあったことは間違いない。


 黒子としての役割も無難にこなした。60分、巻のゴールシーンでは、鋭くニアサイドに動いてDFポープら2人を引き付けた。72分には、左サイドで2対1の状況となっていたMF三都主をサポート。密集地帯の中でうまくパスコースを作り、三都主とのワンツーを引き出した。試合後、ジーコ監督は阿部らとともに、名指しで佐藤を評価している。ゴールこそなかったが、恥じることのないデビュー戦といえた。


 しかし、本人が目指していたのはあくまで「初代表初ゴール」。W杯のメンバー入りに繋がる、鮮烈なインパクトだった。佐藤は、初選出にも関わらず「これがラストチャンス」と言い切った。「初出場初ゴール以外にない」とも。


 それには、佐藤のプレースタイルが大きく影響している。目標とするFWインザーギと同じく、佐藤はDFラインとの駆け引きでゴールを陥れるタイプ。中盤に下がってゲームを組み立てるような、器用さはない。ゆえにボールがこなければ、真価を発揮することは難しい。本人がよく引き合いにだす、FW大黒(グルノーブル)と同じタイプのFWといえる。佐藤のコメントは謙遜ではない。冷静に自分の力量を分析し、「明確に“大黒を越える”と思わせない限り、W杯のメンバー入りは不可能だ」という結論を下したゆえのことだった。そう考えると、「悪くないデキ」では不十分ということが分かる。


 本人の言とは裏腹に、ジーコ監督の評価は悪くない。アメリカ戦が「ラストチャンス」とはならないだろう。まずは18日のフィンランド戦に向け、コンディションを整えることが必要となる。

《ボツコラム》“新鮮”力の躍動(1)

●小野伸二(浦和)
アメリカ戦先発出場、66分途中交代


 1月13日、フェイエノールトから古巣浦和に移籍した小野。この移籍は、海外組から国内組への“移籍”でもあった。これまで試合直前に合流するだけだった国内組にとって、海外組から“移籍”してきた小野は新たなライバルとなる。


 アメリカ戦では、昨年5月27日のキリンカップUAE戦以来、約8カ月ぶりの代表戦先発出場。ポジションは、MF小笠原と並んだ攻撃的MFだった。


 立ち上がりは順調。5分、素早いチェックでボールを奪った小笠原からパスを受けると、ダイレクトでFW久保に叩いてチャンスを作った。しかし、前半で決定機に絡んだのはこのシーンだけ。残る時間は、精力的にプレッシングを仕掛けるアメリカの勢いに押され、守備に奔走。久しぶりの実戦ということを差し引いても、物足りなさが残るデキだった。


 ただ、その中でも「ボールを落ち着かせる」ということに掛けては際立った能力を見せた。相手のプレスを、右足アウトサイドを巧みに使って難なくかわす。縦に急ぐ傾向にあった日本において、DFラインに戻してゆっくり作り直そうとした。試合の流れを見極めて「つなぐこと」を判断した小野のプレーは、異質の冷静さを放っていた。


 ハーフタイム、ジーコ監督は小野をボランチに戻す。その効果はてきめん。ボールを大きく横に動かし、サイドからじっくりとつなぐ。前半、不用意な横パスでボールを失い続け、16本ものシュートを浴びた日本。動揺したチームメートは、小野が作るゆるやかなリズムに合わせ、深呼吸するように冷静さを取り戻していった。


 そして60分、小野が丁寧に繋いだボールを受けたDF加地は、相手DFをドリブルでかわしクロス。このボールが、FW巻の追撃弾を導いた。1点をとって落ち着いた日本は、徐々に本来の動きを取り戻す。その布石を打ったのは、紛れもなく小野のパスだった。


 68分、久しぶりの実戦ということを勘案され、小野はベンチへ下がった。だが、小野がチームのハンドルを握った(ボランチとは、ポルトガル語でハンドルの意)わずか22分の間に、チームは完全に立ち直った。
 
 すでに、攻撃的MFにはMF中村(セルティック)、MF中田英(ボルトン)という2枚看板が存在する。彼らと小野が競争をすることは、小野にとってもチームにとっても得策ではない。小野は、チームのハンドルを握るべき存在。つまり、ボランチの位置がベストなのである。そのことを強く印象づけられたアメリカ戦だった。

【サッカー】野洲のサッカー面白かった!

 もういろいろなところで語りつくされているでしょうが、今年度高校選手権優勝チームである滋賀県立野洲高校のサッカーは本当に面白かった。


 なんというか、「ボールに触った回数=サッカーのうまさ」という、ガキが考えるようなテーゼでチーム強化が図られているようで。2時間半の練習時間中、2時間がボールを使った練習だとか。でもDFをやらないとかサポートが薄いとか、そういうことではぜんぜんない。全員ドリブルが上手いことを前提にして戦略が練られている。


 DFに突っかけて、ボールを戻して、ドリブラーのコースを上手くあけるためにスクリーンという動きは全員が徹底して行っている。「パスが出てくる」「あそこは抜けてくる」と信じて走り込むから、パスがつながる。また、ボールを出すほうも、「俺は抜ける」と思っているからルックアップがきちっとできている。ボールを確認するためにいちいち足元を見たりしない。だから精度の高いパスが出るし、そのパスがつながると。


 しかも、パスにしても「ドリブルかパスか」の選択肢の中で選ばれたものだから、「抜けないから頼む」的な責任逃れは皆無。相手に1対1で上回っているという心理的優位性が積極性を生み、1人1人のプレーの選択肢をよりアグレッシブにする。押し込まれても鹿実相手に1-1で同点にされても、決して萎えない。「もう無理だ」と思うことはない。延長後半7分という時間帯に、あのサイドチェンジが出て、最後のクロスに対して3人が飛び込んでいけたのは、何よりも全員の気持ちが切れていなかったことの証明だと思う。


 それは単純な闘争心の強さだけでなく、それを支える「自分たちのウデに対する自信」があったからこそ。鹿実に対して、野洲は一歩も引いていなかった。間違いなく「自分たちのほうが技術は上だ」と思っていた。野洲のサッカーが「革命」だというのは、鹿実という近年の「フィジカルサッカー=高校選手権優勝チーム」という伝統をぶっ壊して見せたところですね。
 
 今後、全国でこの流れが広まったらいい。ボールを使った練習をメチャクチャに増やして、どいつもこいつも「サッカーって楽しい!」って思えるようなサッカー部が増えたらいい。もちろん、それには中学校、小学校からボールに親しめる環境づくりというのが不可欠なんでしょうけど。


 いや、久しぶりに胸のすく決勝戦でした。