非米側が主導する多極型世界 7 ~BRICSブリッジ~ | きなこのブログ

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中露の仲間入りするトルコ
https://tanakanews.com/240610turkey.htm

 

6月3日、中国訪問中のトルコのフィダン外相が、BRICSに加盟したいと表明した。

 

フィダンは北京で、中国のシンクタンクCCG(全球化智庫)主催の講演後の質疑応答でBRICSに入りたいかと尋ねられ「もちろん入りたい。入りたくないわけがないですよ」と答えた。

 

 

加えて、トルコのBRICS加盟の手始めとして、6月10日にロシアのニジニノブゴロドで開かれるBRICSの外相会談にフィダン自身が参加することを明らかにした。
Turkish FM Fidan expresses desire to join BRICS during his visit to China

 

 

BRICSは、中露主導でドルに替わる国際決済システムを構築している。

 

ドルが唯一の国際基軸通貨であることが米覇権の強さの源泉だっただけに、米国はBRICSを脅威と見なす傾向を強めている。


BRICSは米国を敵視していないが、米国側はBRICSを敵視している。

 

米国に敵視制裁されてドル使用を制限されるので、BRICSはドルに頼らない決済システムを作っているが、それが米国のBRICS敵視を強めている。


米国の同盟国であるサウジアラビアは今年初からBRICSに加盟し、すべての会議に参加しているが、米国から文句を言われ、まだ加盟していないという話を意図的に流布した。

 

米国側のマスコミは、このウソ話を喜んで報じ、米国側ではサウジが未加盟ということになっている。
Saudi Arabia has not yet joined BRICS - Saudi official source
BRICS - The Project Of The Century

 

トルコはNATO加盟国であり、サウジ以上の米同盟国だ。

 

NATOやG7の中でBRICS加盟を希望した国は初めてだ。

 

トルコもサウジ同様、表向き未加盟なままの隠然加盟になるかもしれない。


トルコでは、エルドアン大統領がシリア内戦で劣勢になって反ロシアから親ロシアに転向後、2018年に初のBRICS加盟希望を表明したが、米国に加圧されてその後沈黙していた。


今回エルドアンは、自分でなく格下の外相に、訪問先の中国での質疑に答える形をとらせてBRICS加盟希望を表明させた。

 

米国からの非難を避けた観がある。
In China, Turkey’s Fidan says he plans to attend BRICS meeting in Russia

今年のBRICS議長国でロシアは、フィダンのBRICS加盟希望の表明に対し、すぐに歓迎の意を表明した。

 

エルドアンは、事前にプーチンと話し合ってBRICS加盟を了承されていたのだろう。

 

中国にも面通し、ということでフィダンが訪中したっぽい。
Russia welcomes Turkiye’s reported desire to join BRICS

欧州では、ウクライナの劣勢を挽回するため、ウクライナがNATO諸国から送られた兵器を使ってロシア本土をもっと攻撃して良い話にしようとしている。

 

ロシアは、ウクライナだけでなく、兵器を送ったNATO諸国も反撃対象にすると宣言している。

 

欧州が新たな戦場になりかねない。

 

欧州を安全にするはずのNATOが、欧州を危険にしている。


NATOとEUは、反露国・親露国・中立国に分裂する傾向を強め、決定不能な状態になっている。

 

独仏など欧州のエリート層はEUの議会選挙で惨敗し、欧州は政治面でも決定不能に陥った。


親露国のトルコは、NATOもEUも分裂してあてにならないのでBRICSに頼らざるを得ないと言えるようになり、ここぞとばかりにBRICS加盟への動きを再開している。
Right-Wing Tsunami: France "Stunned" After Macron Announces Snap Elections Following Crushing Defeat In European Parliament Vote
米覇権潰しを宣言した中露

BRICSは今年、ドル代替の決済システムを始動しそうだ。

 

単独のBRICS共通通貨の創設は困難なので先送りし、とりあえず加盟各国が自国通貨をデジタル化したもの(CBDC)を作り、それらのCBDCを束ねて一つのアプリに入れ、送金や両替ができるようにして、各国の政府や大企業が、そのアプリで貿易決済をする新システム「BRICSブリッジ」を開始する。

 

 

米国側のBIS(国際決済銀行)(隠れ多極主義的にこっそりBRICSのために?)試行している「mブリッジ」という複数CBDC決済システムがあり、BRICSはそれをパクってBRICSブリッジにする。

 

これだけで、今のバラバラな非ドル決済体制がかなり便利になる。
CBDCとBRICS通貨
BRICS currency is coming soon, Iranian ambassador

6月3日、これまで実験(パイロット)段階だったCBDCのデジタル人民元の名称から「実験」を外すと中国当局が表明したと国内報道された。

 

デジタル人民元は、実験段階から本格段階に入ったという意味だ。


デジタル人民元は、間もなく始まるBRICSブリッジの一部になるので、それに先立って中共が実験段階から本格段階に移行させたのでないか。


ドルのライバルになっていくBRICSブリッジやデジタル人民元のことで米国側を大騒ぎさせぬよう、中国当局は自国のマスコミにデジタル人民元の本格段階入りを報道させた後、そんなことは言ってないと訂正する目くらましまでやっている。
China’s digital yuan app drops ‘pilot’ label, but no announcement

デジタル人民元は一般民衆を対象に2020年から実証実験されてきたが、既存のウィチャットペイやアリペイの方が便利だし、素行が悪いと政府からデジタル人民元の残高を凍結されかねないため、人々の間で人気がない。


しかし、BRICSブリッジは民衆用の決済システムでなく、資源類などを外国と貿易する政府や大企業が主な利用者だ。

 

人民の好みと関係ない。(海外旅行する市民もいずれ使うかもしれないが)
A group of emerging nations could soon start knocking down one key pillar of dollar dominance

BRICSブリッジができても、問題は山積している。

 

たとえばイランでは、通貨リヤルの為替が、公定相場民間市場(対ドル、対ユーロなどのブラックマーケット)相場の2種類あり、ブラックマーケットの方が2-3割リヤル安だ。

 

民間市場が実勢の価値であり、公定レートは政府が勝手に強気に決めた政治的産物(粉飾)だ。


従来のドルやユーロでの貿易決済は、受け取った外貨を民間市場に持ち込めば良い相場でリヤルに替えられた。

 

だが今後のBRICSブリッジでは公定相場が使われ、外貨が実勢より2-3割弱く評価されてしまう。


ロシアとイランの貿易量は急増しているが、政府や国有企業間の取引が多く、不利になるロシア側から不満が噴出している。

 

イラン政府は「民間の相場は不正なものだ」と言って頑として応じない。

 

これを放置すると、貿易が先細りかねない。

 

BRICS各国とイランとの間で、双方が納得できる新たな相場を決めねばならない。
De-Dollarization Bombshell - The Coming Of BRICS+ Decentralized Monetary Ecosystem
BRICS共通通貨の遅延

問題山積だが、一つずつ解決していけば、未来は明るくなる。

 

 

対照的に、米国側の問題は債務の過剰発行・金融バブルの膨張であり、解決困難だ。

 

これまで、債務を増やすことで解決を先送りして延命しており、事態は解決からどんどん遠ざかっている。


しかもこう書くと、米国の代弁者(傀儡)たちは「お前は反米親露なだけだ」と頓珍漢に中傷するばかりだ。

 

米国側は、問題解決の意志が全くない。

 

非米側は、すでに世界の資源類の多くを握り、諸問題を解決して豊かになっていく。

 

米国側はそのうち潰れる。

 

トルコ外相が「BRICSに入りたくないわけがないですよ」と言ったのは当然だ。
金融システムの詐欺激化
どっちが妄想なのか?

トルコは歴史的・地政学的に、欧州とアジアの両方向にむく国家戦略を採ってきた。

 

この点はロシアと同じだ。

 

欧州が豊かで強く、アジアが弱くて混乱していた以前は、トルコもロシアも、アジアよりも欧州に向いていた。

 

だが、トルコは1999年からEUに加盟申請してきたのに、イスラム系なので入れてもらえない。

 

ロシアも以前は欧米の仲間になりたかったのに、入れてもらえなかった。
トルコの選挙と中東非米化

ウクライナ開戦後、ロシアが先に大転換した。

 

ロシアは欧米から猛烈に敵視制裁されたので、欧米と縁を切り、中国印度イランなどアジアとの関係を強化せざるを得なくなった。

 

プーチンの露政府は、この事態を逆手に取り、欧米と関係を断絶しても自立してやっていける非米的な世界経済システムを作ることを習近平に持ちかけ、中露が結束してBRICSが持つ非米世界システム機関の機能を加速した。


米国から何十年も強烈に制裁されてきたイランは、喜んでこのシステム創設に入ってきた。

 

最初は様子見して、石油ガスを安く買って高く売ることだけに参加していた印度やサウジも、米国側と非米側の断絶がウクライナ戦争とともに長期化し、非米側に未来があると判断すると、米国側と距離を置くようになり、非米システム創設に積極関与するようになった。

 

そこに今回トルコも参加する流れになっている。
2つの世界秩序
多極側に寝返るサウジやインド

トルコの諜報機関は、かつてシリア内戦の時に米国に頼まれてISカイダ系のシリアの反アサドな民兵団を支援していた。

 

アサド側が内戦に勝った後、トルコは北シリアのトルコ国境沿いに不法占領地を残し、負け組になったISカイダの残党・失業者群をそこに住まわせてきた(一部は、欧州を混乱させるために難民として送り込まれ、リベラル欧州エリートに歓迎された後、犯罪やテロを繰り返し、欧州の自滅に貢献している)
シリア内戦終結でISアルカイダの捨て場に困る

トルコ当局は最近、このISカイダの残党を民兵団として再組織し、アフリカ(ブルキナファソやニジェール、ナイジェリア)の金鉱山などの警備に当たらせ始めた。

 

この業務はかつて、昨年殺されたプリコジンがやっていたロシアの民兵団ワグネルが請け負っていたものだ。

 

ワグネルはその後、正規のロシア軍に組み入れられ、ドンバスやウクライナなどの戦場や復興現場で戦闘や防衛をしている。
ロシアでワグネル反乱の意味
Syrian rebels sent to Africa to guard mines and businesses

ロシアの軍勢が多忙なので、プーチンから頼まれたエルドアンのトルコが、諜報界に元ISカイダの民兵団を組織させて、アフリカに警備員などとして派遣している。

 

ロシアは、モスクワから東方に伸びるシベリア・中央アジア・中国へのルートや、南東方向に伸びるイランやアフガニスタンから印度へのルートのほかに、コーカサスからトルコ、シリア、エジプト、スーダン、リビア、アフリカに伸びる南方のルートも、自国の影響圏拡大の戦略対象にしている。
Pro-Turkey Syria mercenaries head to Niger to earn cash

トルコは、ロシアの南方ルート戦略に参加するかたちで、民兵団をアフリカに送っている。

 

トルコは、ロシアに協力しているのでなく押しのけて・ライバルとしてアフリカに進出している(露トルコが対立して両方が自滅して米仏支配が戻ると良いな)と米国側分析者は思いたがるだろう。

 

だが、極どうしがライバルでもあり仲間でもある多重な関係のまま発展していくのが多極型世界だ。


米国側のように「仲間なら米傀儡になれ、それ以外は敵」という白黒二元論の強圧的な関係ではない。(日本は本来、多極型思考を好む社会風土なのだが・・)
アフリカの非米化とロシア

トルコは以前から、ISカイダ系の民兵団を内戦のリビアに派遣して仕切ろうとする策略などを展開してきた。

 

テロリストのISカイダを民兵団として派遣するとテロをやるのでないか、という疑問もあり得るが、そもそもトルコの与党AKPはムスリム同胞団であり、同胞団が武装するとアルカイダになり、そこに米諜報界の入り込みが増えるとISになる。

 

ISカイダにテロをやらせていたのは米諜報界であり、これから米覇権が低下するほど彼らはテロをしなくなる。


トルコはBRICSに入ることにより、米国側と無関係に、ロシアなど非米側と直接やり取りしながら国際謀略をやれるようになる。

 

これはトルコを強くする。

 

その手始めが、ワグネル代替のアフリカ警備策なのだろう。
眠れるトルコ帝国を起こす
中東を反米親露に引っ張るトルコ

トルコは冷戦後、独自の東方戦略として、中国新疆から中央アジア、アゼルバイジャンまでのトルコ系諸民族を統合していく策を進めようとしていた。

 

ソ連崩壊で、ソ連南部のトルコ系諸民族が分離独立して新しい国々になったので、トルコはそれを束ねようとした。

 

当時はまだ米覇権が強く、中露は弱かった。

 

トルコは米国のユーラシア戦略の片棒担ぎを装いつつ、中央アジア進出を試みた。


トルコ当局は、新疆ウイグルの活動家たちをトルコに住まわせ、半ば公然とウイグルの中国からの分離独立を支援していた。

 

エルドアンは2009年にウイグルに対する中共の人権侵害を非難し、2012年の訪中時には新疆ウイグル自治区を訪問して中国批判を展開した。

 

その後、近年は中国が台頭し、エルドアンはウイグル支持を言わなくなった。

 

トルコのウイグル人たちは冷遇されている。
FM Fidan pays highest-level Turkish visit to Xinjiang since 2012

今回のフィダン外相の訪中は、2012年のエルドアン以来、トルコ高官の12年ぶりの訪中だった。

 

フィダンは12年前のエルドアン同様、新疆ウイグルを訪問し、ウイグル人がトルコ系であることを強調しつつ「中国はウイグル人の文化を尊重するよう、姿勢を変えるべきだ」と中共批判を表明した。


これからトルコがBRICSに入るには中国の了承が必要なのに、トルコが再びウイグル人をトルコの傘下に入れて中国批判を展開したら、中国を怒らせてBRICS加盟を阻止されのでないか。

 

そんな懸念が出てくるが、フィダンの発言は事前に中共の了解をとったものらしく、中共は何も反応していない。
China should take steps to reverse negative image on Uyghurs: Fidan

フィダンの発言は、プライド高いエルドアンの戦略を体現したものだろう。

 

BRICSに入っても、中国の軍門に下るわけでないぞと。

 

むしろ、中露と伍して中央アジアや中東アフリカコーカサスで独自戦略を展開して影響力を拡大していくつもりだぞ、ウイグル人はトルコ系なんだからトルコにも発言権があるんだぞ、という主張だろう。


多極型世界では、極どうしが果たし合いの覇権争奪をするのでなく、極どうしが共存して均衡的な世界を作る。

 

極どうしはライバルだが、協力や交渉の相手でもある。
多極化の本質を考える

極は、文明圏ともいえる。

 

米国はかつて、中露イランなど他の文明圏を次々に潰す「文明の衝突」を企図してイラク戦争などで自滅的に失敗したが、その後にできつつある中露イランの多極型世界は米覇権と対照的な「文明の共存」である。


トルコは、極の一つを自称しており、だからBRICSに入りたい。

 

中国に住むトルコ系であるウイグル人は、トルコから見ると「となりの極に住む自極の人」であり、中国から見ると「自国民だがとなりの極の関係者」になる。
世界のデザインをめぐる200年の暗闘

シルクロードは、中国文明の一部であり、シルクロードの文化を育んできたウイグル人は、古来中国の文明形成に寄与してきた。

 

だから(イスラム教を含む)ウイグル人の文化を大事にしてあげてください、とフィダンは中共に進言した。

 

分離独立の扇動は良くないことだと言って、以前のトルコからの退却も示唆している。


ウイグル人はトルコ系だから、トルコは中国のウイグル問題に口をはさむ権利を持っている。

 

米欧は、ウイグルにも中国にも無関係なのに、ウイグル問題を中国敵視の道具に使っている。

 

米欧は自分たちが世界に対してやっている支配行為(=人権侵害)を棚に上げ、人権問題で中国を制裁することが必要だなどと言っている。

 

そういう不正はやめろと言ってフィダンは中国の肩を持ち、中共が満足する範囲内に話をおさめている。
Senior Xinjiang officials meet visiting Turkish FM in Urumqi

 

 

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