『迫りくる大暴落と戦争〝刺激〟経済』(副島隆彦著、徳間書店、2018年5月)をご紹介します
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アメリカの北朝鮮爆撃、攻撃が終わって「戦争によって経済を刺激して好景気を作り出す」、戦争刺激経済(war economy、war boosts economy)が創出されますが、それも続かずに、大暴落がやってくるということがこの本の最も重要な点になります。
これは第一次世界大戦の後の動きと同じだということです。
この事実を踏まえて、直近の動きを考えてみると、戦争刺激経済が発動されそうです。
5月15日に北朝鮮は突然態度を硬化させて、南北閣僚級会談を中止し、米朝首脳会談についても「再考せざるを得ない」と発表しました。
融和ムードだったのは周囲だけで、北朝鮮自身は追い詰められています。
戦争で経済を刺激して、景気をよくする(株価を吊り上げる)という戦争経済(ウォー・エコノミー)、もっと正確には戦争“刺激”経済(ウォー・ブースト・エコノミー)を、アメリカのドナルド・トランプ大統領とジェローム・パウエルFRB議長は考えているようです。
具体的にはアメリカが北朝鮮を空爆し、その不安感から株価を下げておいて、その後の「勝利の安ど感」から株価が上がる、そして、その後は株価が下がるというシナリオを立てているそうです。
これと同じ動きが第一次世界大戦(1914-1918年)の時期と第二次イラク戦争(2003年)が既にあったということです。
株式市場では、ヴォラティリティ(volatility)と呼ばれる、株価の変動の大きさが重要で、これが大きいほど、金融バクチを張る人々には大きな利益を得るチャンスになるということです。
これから戦争経済で、株価の乱高下が起きると、ヴォラティリティが大きくなるということになります。
第3章では、金融の第一線で活躍している大谷慎一氏と副島先生の対談が収録されています。
この中には、最新の金融情報や、アメリカや日本における中国の動きなどが紹介されています。
株式取引をしていない私は読んでいて、「株価の上下というのは市場の持つ機能で決まるものではなくて、その他の要素で決まるものではないか、習ったこととは違うし、公正ではないようだ」という感想を持ちました。
経済学をはじめとする社会科学(心理学、政治学、経済学、社会学、人類学)は、「人間社会を貫く法則(law、ラー)」を発見することを使命としてきましたが、いまだに理論(theory、セオリー)は作れても、法則の発見には至っていません。
法則とはどの場所でもどの人間の社会でも起きる因果関係(Aが起きれば・あれば、Bが必ず起きる)ということですが、このような法則は見つかっていません。
それでも経済学は統計学や難しい数式を使うので、「科学」らしいものとして、社会科学の中では先頭を走っているはずでした。
しかし、副島先生が第5章で詳しく書いているように、経済学では、「人間は合理的(rational、ラショナル)に行動する」「市場が機能する」という前提が崩れてしまっているということが、経済学界隈からも明らかにされているということです。
経済学が「人間の合理性」「市場」という本当はないものをみんなで信じて拝んでいるだけの「宗教」になってしまっていることまで副島先生は書いています。
現在、日米欧の当局者たちは、「景気が良くなる→市中に出回るお金が増える」という現象を捻じ曲げた「とりあえずお金を刷る→景気が良くなるはず」理論に基づいて通貨創造(マネー・クリエイション)をやっています。
そのために中央銀行(日本で言えば日本銀行)が各国政府の発行する国債を引き受けるということをやっています。
そうやって、通貨を政府に渡しているということになります。
このような政策は最後には失敗してしまうということは当局者たちも分かっていますが、失敗するまで続けるしかないという状況のようです。
失敗すれば世界規模の大恐慌ということになります。
この時期についても、本の中で副島先生は予測されています。
短い文章ではなかなか全容をお伝えすることは難しいですが、今回ご紹介したこと以外にも、読者の皆さんの資産防衛や資産形成において参考となる、副島先生の鋭い予測がまだまだ収録されています。
是非手に取ってお読みください。
よろしくお願い申し上げます。
(貼り付けはじめ)
まえがき
これからの3年、さらに3年の6年間を予測する
この本では、これからの3年、さらにそのあと3年、計6年を予測(予言)する。
これからの日本及び世界の経済はどうなるか。
私の予測、先見(せんけん)は、大きくP7の図のとおりだ。
この本が出て近いうちに株式市場で2回ぐらい大きな山が来るだろう。
なぜなら、株式の次の暴落に対してアメリカは戦争〝刺激(しげき)〟経済(War boosts Economy. ウォー・ブースト・エコノミー)でなんとかエンジンをブオブオと吹かして景気を上げようとするからだ。
トランプは「北朝鮮の金正恩に会う」と言ったが、この米朝の話し合いは、短時間でだめになるだろう。
世の中に不安感が広がる。
それで投資家も心配して、NYダウと日経平均はだーっと1回落ちる。
1000ドル、2000ドル落ちる。
日経平均も1000円、2000円ぐらい平気で落ちる。
トランプは、ここで戦争(せんそう)によって経済を刺激する、押し上げるまさしくWar boosts economy.(ウォー・ブースト・エコノミー)を仕掛ける。
戦争“刺激”経済とは、まさしく、「米軍による北朝鮮への爆撃」のことだ。
戦争で経済を刺激する、のである。
景気の落ち込みから脱出するためのアメリカの手口だ。
これで、北朝鮮爆撃のあと、「アメリカは勝った!」で安心感が広がり急激に株価がハネ上がる。
それに連れて日経平均も、どーんとハネ上がる。
ところが、少しすると、また、ドドドと下がってゆく。
こういう動きを2回、3回金融市場は繰り返すだろう。
私はこのように予言する。
この「ウォー・ブースト・エコノミー」、すなわち、
戦争で経済を押し上げる。
経済を政治(=軍事)の力でブーストboostする、押し上げる。
この“War boosts economy.”という言葉の意味を、私がここまで易(やさ)しく説明しても、それでもまだ分からない人は、それは私、副島隆彦の本のこれまでの熱心な読者では無い。
欧米では、これを簡単に「ウォー・エコノミー」と言う。
このコトバの意味を頭のいい高校生でも知っている。
ところが、日本(人)では相当の高学歴の金融専門家や、英語ペラペラのトレイダー(ファンド・マネージャー)たちでも、知らない。分からない。
日本人は「ウォー(ブースト)エコノミー」と「ウォー・タイム・エコノミー」(戦時(じ)経済。戦争中(ちゅう)の経済)の区別がつかない。
その違いが分からない。
私は、この10年、自分の本で、ずっとこの「ウォー・エコノミー」、戦争経済のことをあちこちで書いてきた。
だが、ほとんど誰も理解してくれなかった。
それでわざと間(あいだ)に「ブースト」を入れてより正確な英文にすることで戦争〝刺激〟経済と表記することにした。
これで何とか日本人に分かる。
分かってもらえるだろう。
ヤレヤレだ。
戦争を煽ることで景気、経済を押し上げる。
それが「戦争(刺激)経済(ウォー・エコノミー)」だ。
ダメ押しをする。
欧米白人社会では、頭のいい高校生でも知っている、この war economy 「戦争経済」を、日本では、経済学部を出た市場関係者や、経済学者でも知らない。
それどころか、実は政治学の学者や政治評論家たちも知らない。
即ち日本ではまだ誰も知らない。
どうしても「2兆円(200億ドル)分ぐらいミサイルや爆弾を使ってくれ」と、アメリカの軍需産業界が要求している。
「政府がそうしてくれないと、兵器が売れなくて在庫が溜(た)まって仕方がない」と軍需(=国防)産業の親分たちが言う。
レイセオンとロッキード・マーチン・マリエッタとボーイング社などである。
日本で言えば三菱重工や川崎重工である。
そうやって国防産業が政府に泣きつくのである。
トランプ大統領は、このことを重々分かっている。
トランプという人はビジネスマン(商売人)であるから、企業経営者たちの苦労が死ぬほど分かっている人だ。
だから北朝鮮はウォー・エコノミーの問題なのだ。
北朝鮮問題とは独裁者の国からの核ミサイルの取り除き、廃棄のことだけではない。
アメリカの軍需産業(ミリタリー・インダストリー)のために兵器の消費がどうしても必要なのだ。
これが戦争経済だ。
第2章でさらに説明する。
●北朝鮮爆撃で株価の大変動が起きる
株価が上下に動くことを、ボラティリティ(変動率)という。
戦争はこの株価のボラティリティを激しく上下に大きく拡大させる。
この価格の変動率(ボラティリティ)は、資金運用者と投資家にとっては、たいへん有難い重要な仕掛けだ。
投資の基本は、買ったら売り、売ったら買い戻す、である。
安値で買って価格が上がったら売って利益を取る。
あるいは、下落相場なら、(先物(さきもの)での売りならば)借りてきた株を先値(さきね)で高値で売っておいて、暴落したあと安値で買い戻す。
そして利益を取る。
これしかない。
そのためには、業界全体にある程度のボラティリティがなければいけない。
無風状態で値動きなしが何カ月も続くのが、一番イヤなのだ。
だから、ここから先、しばらくの間、株価の急上昇と暴落が何回か繰り返されるだろう。
暴落したらその時、サッと買う。
そのあと暴騰が来る。
ここで迷わずサッと売る。
ここで売れないでじっと持っていると、大損する。
なぜなら、また暴落するからだ。
また安値、底値でサッと買う。
秋までに、こういう動きが3回ぐらいあって繰り返すだろう。
第一次世界大戦(1914─1918)の時にも、これとまったく同じ暴騰と暴落があった。
その時、日本は日露戦争(1904─1905)に勝利したあとで、世界の5大国入りして帝国(エムパイア)になっていた。
日本は第一次大戦の戦争前景気で、1回おおいに盛り上がって、その後、ばたーんと落ちた。
このあと戦争が終わったようだ、ということで、またドーッと株(景気)が上がった。
ところが、暫(しばら)くしたら、またドーッと落ちた。
1920年から〝戦争景気〟のあとの長い不況が来た。
これと同じことがまた世界で起きようとしているのである。
第一次大戦(WWI)(ザ・ファースト・ワールドウォー)は、1918年12月に終わり、1919年から、講和(平和交渉)(ピーストークス)のためのベルサイユ会議が始まる。
このあと1920年に入るとドーッと落ちた。
この時、日本の鈴木商店(三井物産の前身)、そして台湾銀行が倒産した。
鈴木商店は、今の総合商社の先駆けで、戦争景気で、スエズ運河に、鈴木商店の商船(輸送船)がズラリと並んでいたのである。
鈴木商店が日本を代表する大商社だった。
天才経済学者のケインズさえ、この時、投資で大失敗した。
大戦後の1920年から後の4、5年は苦戦した。
だから迫りくる〝第二次朝鮮戦争〟の前後にも大きな変動が来る。
ただし、今回は期間が半年ぐらいなので短い。
だからそのあとの数年(3年、さらに3年)の動きを読まなければいけない。
あとがき
こうやって私は、この本でこれからの世界の動きの「3年、さらに3年(合計6年間)」を予言した。
自分が行った近(きん)未来予測(予言)をなんとか当ててみせる。
ただしこの本は、金融、経済の本であるから、あまり政治の話は書かないようにした。
それでもどうしても政治の話が入ってくる。
政治(外交、軍事=安全保障を含む)と、金融・経済は、〝車の両輪〟であるから、片方だけを見るわけにはゆかない。
両方を見てそれを総合する力があるから、私は金融評論業で生き延びているのだろう。
第4章で、リチャード・ヴェルナー氏の『円の支配者』(2001年刊)を高く評価した。
なぜならヴェルナー氏(現在、51歳)が、1995年に発見して、以来ずっと唱えている「先進国の中央銀行が、政府を助けるために、やってはいけない、銀行が持つ信用創造(力)(クレジット・クリエイション)を悪用してきた」理論は大きな真実を抉(えぐ)り出している。
創造(クリエイテッド)マネーを大量に創(つく)って、それが、世界の金融・経済をおかしくしてきたのだ。
「彼らセントラル・バンカーたちがバブルを作り出し、破裂させ、そのために資金をショートさせた企業をたくさん倒産させて、世の中に多大な迷惑をかけてきた」理論は、2008年のリーマン・ショックをはっきりと予言していた。
この違法な、創造(クリエイテッド)マネーは、私もまた自分の金融本でこの10年使い続けてきたジャブジャブ・マネー(金融緩(かん)和(わ)政策で人工的に作られたマネー。Q(キュー)E(イー)=量的緩和)であった。
そして、ヴェルナーと私は、今も共に「次の大きな株の大暴落、金融崩れは、大恐慌へとつながる」と予測、予言する。
それは、1991年(今から27年前)に崩壊したソビエト共産主義(コミュニズム)に続いて起きるであろうアメリカ資本主義(キャピタリズム)の崩壊だ。
エ、まさか、そんな。
資本主義は、イデオロギーや宗教ではなくて、客観的実在(オブジェクティヴ・イグジステンス)だよ、壊れるわけはないよ、と、必ず起こる反論に対しても、私は明確な答えをそろそろ準備し、提出しなければいけない時代が到来したのである。
資本主義(の社会、国家)が倒れたあと、一体、人類に次に何の制度、体制がやってくるのか?
カール・マルクスとジョン・メイナード・ケインズ卿に続く、人類の大天才が現れなければ、その姿は明らかにならない。
だが、資本主義までもが滅ぶ、そして全く新しい時代が人類に到来することが強く予想されるのである。
ゼロ金利と、マイナス成長と、銀行消滅のコトバにその予兆が見られる。
(貼り付け終わり)