アニメーションビジネスの仕組み(6) 製作委員会のお金の流れ(1) | 知財弁護士の本棚

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ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 製作委員会が組成されると、各メンバーから出資を受ける。出資比率は、幹事会社は30%が相場らしい。窓口権の種類によって、この窓口なら何%くらいという相場が決まっているようである。


 製作委員会は民法上の組合(商法上の匿名組合との対比において任意組合とも呼ばれる)と解されている。よって法人格はなく、出資金はメンバーの共有となる(民法668条。ただし組合財産の分割請求権を有しない(民法676条3項)など一般の共有とは異なることから、講学上、合有と呼ばれる)。共有財産であるところの出資金は、幹事会社が管理する。


 製作委員会から支出される費用の主なものは、制作会社へ支払う制作費、テレビ局へ支払う提供料、そして共通宣伝費である。共通宣伝費というのは、作品自体の宣伝広告に使われるお金である。テレビ放送時のCMは、作品のパッケージやグッズの宣伝であり、作品自体の宣伝ではないので、共通宣伝費からは出ていない。あれは、広告を出稿しているパッケージメーカーやグッズメーカー、つまり個別メンバーが広告費用を出している。


 このほか、原作の版元への許諾料が製作委員会から支払われる。また二次利用に関しては分配金や印税の支払いが生じるが、これは次回に書く。



 作品には一次利用と二次利用があり、それぞれにお金の流れがある。一次利用というのは、テレビアニメであれば初回放送、劇場用アニメであれば劇場公開である。 ただし最近ではネット配信がテレビ放送と同時または放送に先行することがある。この場合、配信が一次利用に含まれることもある。どこまで一次利用に含まれるかは契約次第である。

 

 そして一次利用以外のすべての利用、例えばテレビ再放送、一次利用に含まれないネット配信、パッケージ販売、グッズ販売、音楽CD、イベント等々はすべて二次利用である。

 

 アニメビジネスでは一次利用より二次利用がはるかに重要、というより二次利用があるからビジネスとして成り立つ。2年、3年かけて二次利用によりゆっくり投資を回収するというビジネスモデルなのである。